今の時期、親子4人で12万8千円も余計にお金が飛んでしまう「燃油サーチャージ」。ほぼ2カ月ごとに変動しているこの燃油サーチャージですが、いったいその金額はどうやって決められるのか、そしてこれがある程度予測できるものなのか。
今回はそんなところを考えてみたいと思います。
結論から言ってしまえば、ハワイ旅行の決定は今秋以降にしたほうがいいかも、ということです。
前回の記事では、イキナリ「原油入着価格」と「WTI (West Texas Intermediate)」から話を起こしていきましたが、日本の航空会社が燃油サーチャージ(「燃油特別付加運賃」とも)を決定するときの指標としているのは、シンガポールケロシン市場での取引価格です。
これはそのまま航空燃料の相場と言い換えてよいもので、これについて概要を知っておき、航空券の購入タイミングや、ツアー商品の発表時期をずらせば、一家で数万円ぐらい節約できてしまう可能性もあります。高級レストランを利用できるかどうか、オプショナルツアーをひとつ選べるかどうかといったところでしょうか。
アジアの航空会社が発表している燃油サーチャージは、シンガポールケロシン市場の直近過去2~3ヶ月の平均値をもとに決定しています。これは、ここの市場価格がアジア地域の航空燃料売り渡し価格を決める際の指標となっているからです(ユナイテッド航空などはニューヨーク市場基準)。
JALやANAでは、このシンガポールケロシン市場の直近2ケ月平均が1バレル60米ドルを切った場合は、燃油サーチャージをゼロにすると公表しています。ただし、その平均値からどうやって、最終的な金額を導き出すかは、それぞれの会社の考え方によります(そもそも指標のとらえ方から異なる航空会社もあります)。
JALやANAが初めて燃油サーチャージを導入した2005年初旬の相場は、約53ドルでした。それが70ドルを超え、80ドルを超え、100ドルを越えてもまだまだ上昇しつづけ、2008年の夏にはなんと180ドルのラインをも突破してしまったのです。
そのときの国内航空会社の燃油サーチャージは2万8千円(欧米路線)。さきほどの親子4人の例なら、本来の旅行代金とは別に22万4千円も徴収されるのです!
ダチョウ倶楽部の上島竜兵でなくとも、帽子を床にたたきつけて「いったい、どうなってんだぁ!」とキレたくなります。
航空会社でも、ただ燃油サーチャージにコスト転嫁していたわけではなく、機内食の食器を安いものに替えてみたり、軽量化した航空コンテナを採用して燃費を向上させたり、人件費を削減するなど内部努力もしてきたようです。しかし、それでもやっていけないという場合、国土交通省の認可を受けたうえで、旅客から直接割増運賃を徴収するという流れになっています(日本を発着する外国の航空会社も)。そして悲しいことに、この割増運賃制度がここ数年、当然のように存在しているのです。
では、どうやったらこの燃油サーチャージを安く抑えられるのか。
ポイントは市況観測と、航空券や旅行商品の購入タイミングです。
市況観測といっても我々素人には難しいものですし、そもそも航空会社が知りえるレベルの新鮮で詳細な情報を入手することは困難です。しかし、過去の流れを知ることなら簡単です。そこから、世の中で何が起きた時にどう動いてきたのかや、最近の傾向を見てみることで、ある程度今後の燃油サーチャージにどう影響していくかを占うことができます。
ここ何年かのシンガポールケロシン市況を示す資料はいくつもありますが、たとえばこんな資料(PDF)を公開してくれているところがあります。
これをみると、これまでずっと上がり基調だった傾向が、最近では3月ごろにピークをみせたあと、やや下がり始めるかのようにもみえます。ざっと1か月半で14%の下落です。「下げ基調が続けば、燃油サーチャージの引き下げにつながる」と分析している会社もあります。
ということは、航空券を今買うのではなく8~9月期、もしかしたら10~11月期にグッと下がったサーチャージ額が提示された後を狙うということも考えられそうです。
ところで旅行会社が企画するツアーなどでは多くの場合、「燃油込み」とした全額表示をしているところが多くなっています。これは、消費者が混乱しないように表示方法を統一しようという流れによるものです。しかし、燃油サーチャージの分が全体価格に埋もれてどうなっているかわからない、ともいえそうです。
旅行会社が発表してしまった燃油込みの全体料金は、その後サーチャージの変動があったとしてもこれに影響されることはありません。つまり航空会社のウェブサイトでサーチャージ額が上がっていようが下がっていようが、決められた旅行商品の価格以外に追加も要求されないし、差額払い戻しもないということです。
旅行会社が、自社で扱っている旅行商品の見直しをするタイミングはそれぞれによって異なりますが、たいてい上期・下期で見直しをかけます。つまり春と秋の年 2 回というわけです。航空会社が 2 ヶ月ほどの間隔でサーチャージを見直すのとは、タイミングが違うということになります。
旅行会社もバクチをしているような感じになっていますが、私たちにとっては、秋に見直され発表される旅行商品を待ってみるということも有効かもしれないのです。
今年度下期、つまり10月~3月までの旅行商品の発表は、たいてい8月半ばあたりから始まります(早いところでは7月中旬頃から始まります)。
さて、あなたはどうしますか?
2010 年 3 月期アニュアルレポート(ANA)※財務分析の抜粋
ニューヨーク原油先物市場の価格が急落すれば、それがシンガポールケロシン市況にもおよぶといえます。たとえばANAの年次報告などを見ても原油取引相場との相関は明らかです。
ニューヨーク原油先物市場については、前回記事をご覧ください。
インターネットでシンガポールケロシン市況を調べる場合、統計データによってはその単位が、1ガロンあたり何セントであるか、つまり Cents/Galon で表記されるものもあります(特に米国サイト)。これを親しみやすい?1バレルあたりのドル表記にするためには、0.42 をかけます。
これは、石油用の1バレルが42米液量ガロンであること、そして1ドルが100セントであるためです。
さてきょうのお写真は、ストーブ列車で有名な津軽鉄道です。撮影は 2003 年の 1 月。出張先であった五所川原の町で、空き時間を狙って乗車した時のもので、いずれも津軽五所川原駅でのものです。 ほかにも車中や、駅の風景などを撮りました。
※ディーゼル機関車の運転台の写真は、許可を得て撮影しています。
有意義でした。
ありがとうございます。前回はマネーゲームの加速と燃油の異常な高騰の関係を考えてみたかったので、イキナリ「原油入着価格」なんてなじみのない入口へ一足飛びに行ってしまいました。