ハナウマ・ブログ

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日本は7年間、地球上から消えていた

2021年05月08日 | 沈思黙考

筆者が以前勤めていた会社に台湾出身の若い女性がいた。あるとき私が知ったかぶりをして「台湾って35年間だったか、オランダ領だったんだよね」というと、彼女はコピー機の前で作業の手を止め、スッと私に向き直って「いいえ、38年間です」とピシャリと断言した。
赤面のエピソードではあるが、じつは日本もわずか数十年前、約7年間にわたってこの地球上に主権国家としては存在していなかった。現代日本人は、彼女と同じような態度で外国人に説明できるだろうか。

INDEX

  • 過去を忘れたい日本人
  • ふしぎな在日米軍
  • 「六本木」から始めてみる
  • どう見極めるか
  • まとめ

過去を忘れたい日本人

今回は「日本は約7年間、主権国家として存在していなかった」ということを踏まえながら、それでは現在はどうなのか、ということを考える。
そもそも主権国家とは何か。ここでは「ほかの国から支配されたり干渉されたりすることなく、他の国々と対等である国」としたい。
日本人の中には、日本が戦争に負けてそこから直線的に経済復興して今に至っているという、単純な理解しか持たない人も少なくないようだ。

日本で戦争が終わったのは昭和20年(1945年)だけれども、日本が主権国家として独立したのは昭和27年(1952年)の4月28日である。この間7年、日本は連合国軍に占領されていた。いわば「主権なき東洋の列島地域」に過ぎなかったのである(事実上はアメリカによる占領)。

もちろん筆者は何も、屈辱の歴史を思い起こして仕返しの意識に目覚めよ、などと物騒なことを言いたいわけではない。
自分がいま生きている場所、置かれている状況、立ち位置を正しく認識し、そして今後もっともクレバーな(賢い)選択を導き出すために、自分たちがどういう道を歩んできたかを知る必要があると思っているのだ。

ついこのあいだまで自分の国が他の国に支配されていたにもかかわらず、その事実が日常の記憶からだいぶ失われてしまっている。その結果日本人は、自分たちが置かれている状況を考えることすらできなくなってしまっているのではないだろうか。

ふしぎな在日米軍

人間はだれしも自分のことが一番見えていない、などと言うけれども、日本人は自分たちの国がいかに「フツー」でないかをあまり知らない。しかしその異常さを何とも思わなくなっていることに気づいて、きちんとした問題意識を持たなければならない。
ここでは在日米軍という存在から考えてみたい。

まず、自分の国に外国の軍隊が存在していると言うことに素朴な疑問や違和感、問題意識を持って当然である。
確かに戦争が終わった直後の数年間であれば、占領軍や駐留軍といったかたちで存在するのは不思議ではないけれど、昭和20年(1945年)に戦争が終わって75年も経過するというのに、いまだにアメリカの軍隊が沖縄を中心に日本各地に存在し広大な面積・空間を独占使用しているというのは疑問を抱いて然るべきなのである。

在日米軍施設については、港湾や飛行場といったものにとどまらず住宅地や専用のゴルフ場まで存在している。そんな彼らに日本人の税金が投入されていることはニュース等でも知られている通りだ。そればかりか日本国内で罪を犯した米兵を、日本の警察が捜査したり、日本で裁判を受けさせたりすることが出来ないという状況も続いている。
世界史をみてもこんな特殊な例は過去にない(せいぜい挙げてもキューバにあるグァンタナモ米軍基地ぐらいか)。

かつて、「在日米軍は金を払って雇っているガードマンのようなものだ」と言った人物がいる。これをどうとらえるかは人それぞれだが、仮にそうなのだとしたら、イザという時には日本人を守ってもらわねばならない。しかし実際のところは「そうとも限らない」のである。
在日米軍は日本人を「守ってあげる」ために存在するのではなく、アメリカの国益のために存在しているのである。

あくまでも仮定の話だが、ロシアや中国が武力を以って日本に踏み込んできた場合、侵攻勢力に先行してあたるのは自衛隊である。キツイ言い方になるが、血を流す順番はあくまでも日本人が最初なのである。
その状況を眺めながらアメリカは、「ここで我が軍を動かすことはアメリカの国益にかなうのか」を冷徹に検討したうえで実際の行動に移す、かもしれない。つまり何もしないかもしれないし、「小出し」にしてくるかもしれないのだ(ある意味この「あいまいさ」が抑止力であるともいえるのだが)。

正義を振りかざすようにみえてもアメリカは、あくまでも自国にとって利益になると考える行動しかしない。アメリカの利益にもならない、日本とその周辺国のイザコザに巻き込まれて自国の若者を死なせるようなことはしたくないという、ごく当たり前の感覚でもある。アメリカ人の母親の気持ちになってみれば、「なぜ、日本人を守るためにウチの息子がケガをしたり、死んだりする必要があるのか」と素直に考えるはずである。
少なくとも、「在日米軍がいるから安心」などといった、幼くめでたい思考停止の日本人であっていいわけがない。

「六本木」から始めてみる

東京の中心にある歓楽街、六本木には、アメリカ政府関係者専用のヘリポートがある(「U.S. Army Area在日米陸軍地域」)。
ここは皇居宮中三殿まで約3km、天皇はじめ皇族の住まいが集中する赤坂御用地まで約1.5㎞、上皇・上皇后の住まいである高輪の仙洞仮御所(高輪皇族邸)まで約2.7㎞という場所である(天皇一家はその後2021年9月20日に皇居内の御所に転居)。
もちろん六本木交差点や六本木ヒルズ、テレビ朝日、ブッシュ大統領(43th/息子)が訪れた居酒屋などへは徒歩圏内といっていいだろう。そしてニューサンノー米軍センターへは車で5分というロケーションである。

アメリカ政府関係者はこのヘリポートを使って、いつでも自由に都心へ出入りできる。通関手続などない。いったいなぜそんなことが出来るのか。
理由の一つにはアメリカが独占的・排他的に利用できる「横田空域」が、1都8県(厳密には福島を入れて9県)にまたがる上空を覆っているからである。
この空域は6段階の高度区分で立体的に設定され、一番高いところで23,000ft(約7,000m)、低いところでも8,000ft(約2,450m)ある。この空域をさらに上空から眺めたとすれば、その上部が棚田のようになっている「見えないアルプス山脈」が関東甲信越から中部付近に覆いかぶさっているようなものである。
ちなみに横田空域は通称で、横田進入管制空域「横田ラプコン/RAPCON:Radar Approach Control)」がより正確である。

この空域は厳密には飛行禁止空域と言うことではない。飛行するには1機ごとに米軍へ事前の申請手続きが必要で、つまるところ「事実上の飛行禁止空域」という建て付けになっている。定期航空便などは避けて飛ぶしかないのが現実というわけだ。
日本の領空ではあるけれどもアメリカ軍が航空管制を行っているという状態、そして自由に都心を出入りできる状態。いま自分が住んでいる国が置かれている状況を考え始める出発点としては、わかりやすいのではないだろうか。

どう見極めるか

ところでこの横田空域に関しては、直面する問題としておもに2つの議論があると筆者はみている。
簡単にまとめると、ひとつは「羽田空港を発着する民間航空機の多くが横田空域を回避するために余計な燃料を使い、回り道をさせられ、場合によってはリスクを伴うような飛行になっている」という意見。
もうひとつは「横田空域の地表面に部品や機体が落下して大惨事になったとしても、これまでどおりゴマかされて終わりになる」というものだ(横田空域は東京都世田谷区、杉並区、練馬区、武蔵野市などもほぼ全域を覆っている)。
どちらも重要な論点だが、なんとなく鵜呑みにしてしまう前に、「周辺事情」も知っておいて損はないだろう。

たとえば仮に横田空域がなかったとしても、関東の西側には富士山をはじめ標高の高い山脈があるため山岳波や乱気流が発生しやすく、好んで通過するところでもないという事情がある。
実際に旅客機が空中分解する事故も起きている(1966年3月5日ボーイング707型機が富士山上空で空中分解、乗客乗員124名全員が犠牲に)。自然現象が原因の魔の空域なのだとすれば、許可されたとしても通りたくはない。
なお、山岳からじゅうぶんな高度を取れるのであれば問題はないが、現在でも富士山周辺に乱気流の恐れがある場合は大きく迂回飛行している。また民間旅客機と戦闘機のようなものでは、まるで力学的に違う航空機であるとも考えておくべきだ。

そもそも陸上は洋上よりも気流がよくない。地形の影響を受けるからだ。
また一般に旅客機は、燃費を考えてなるべく高いところを飛行したいという事情があるから、離陸時はさっさと上昇して燃費を稼ぐ。しかし着陸時はずいぶん手前からゆっくりと高度を下げていかないと、乗客がとんでもないこと(健康被害)になってしまう。
つまり、わざわざ富士・箱根周辺から高度を下げつつ羽田へアプローチするよりも、洋上を回り込んだ方が安全だという事情もある。

しかし、ここで「へぇそうなんだぁ、タイヘンだね」で止まってしまってはならないだろう。
筆者は、部品や機体の落下を懸念する意見に対して、考慮に入れる価値のあるしっかりした反論をまだ知らない。ちなみに米軍機はどんな飛行をしようとも事実上OKということになっている。なぜなら日本の航空法の適用外だからだ。

筆者は横浜市在住で、どっぷり横田空域の下に住んでいる。気のせいか上空を飛ぶ軍用の飛行機やヘリの回数が、このところ増えてきているように感じる。そして1977年、米軍機が燃料満載の状態で現在の横浜市青葉区の住宅地に墜落、家屋20戸が炎上して一般市民3名が死亡し6名が負傷した事故を思い返す。

なぜ世界史にもないこういった現実が我々の前に広がっているのか。そこに問題意識を持って然るべきではないだろうか。日本の土地(領土)も、日本の空(領空)も、すべてが日本のものというわけではない特殊な独立国家に、我々は生きている。

まとめ

先の台湾出身女性は360年も前の祖国の歴史をしっかりと意識に刻み、それを踏まえて21世紀を生きていた。
しかし多くの日本人は、わずか70年前の占領の記憶すらなくなりかけ、令和のいま自分たちが生きている国の状況や、そのことの意味を考えたりすることがなくなってきているのではないだろうか。

中国はいま、周辺各国と複数の場所において軍事的緊張を引き起こしている。万一、中国が台湾へ武力侵攻した場合、アメリカが判断すれば沖縄から米軍が出撃するであろうことは想像に難くない。そんな局面において日本は、中国の攻撃対象になりえるのだ(「敵の味方は敵」の論理)。

「属国だって何だっていいじゃねぇか。今そこそこ平和に暮らせてんだから」という意見もあるかもしれない。だが属国(状態)であるとすれば、その平和や豊かさのゆくえに関して、自分たちの意志では決められないということである。やがて自分も、自分の子や孫も、思いもよらなかったところへ連れていかれるかも知れないのである。

意見はどちらにせよ、せめていま自分が置かれている状況について、戦後数十年の過去だけでも学び、それを踏まえて賢い選択をしなければならないだろう。
トランプ前大統領やオバマ元大統領が来日した時、日本の領土・領空をどのように移動したのかよく思い返してみたい。そしていつかバイデン大統領が来日するとき、日本国をどのように動くのか、そのとき政府がどういう態度でいるのかを注視しておきたい。


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