ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

「物語」に逃げ込み埋没するな

2020年07月11日 | 沈思黙考

もともと不安要素に覆われていた日本に、新型コロナウイルスの災禍が降りかかり、大雨による水害が発生、地震もたびたび起きている。戸惑いの中、せめて心の癒しを求めて「物語」に気持ちを寄せてやり過ごそうとする人々も少なくない。しかし、いつまでもそこ埋没してしまっては、自分で自分の首を絞めることになりかねない。

「物語」に逃げ込む人々

2020年、令和2年。
あらゆる問題を抱えながら時代を進んできた日本は、年明け早々から新型コロナウイルスによって一気に混乱状態に陥り、全国を対象に非常事態宣言を出すに至った。希望の象徴でもあったオリンピックも、半ば無理やり推し進めてきたにもかかわらず、延期せざるを得ない状況となった。
そこへ追い打ちをかけるように、各地で豪雨被害が発生。地震もあいかわらず頻発している。さらにこの状況を悪用した詐欺、詐欺的行為も指摘されている。

いま日本人の誰もが、多少なりとも哲学的、あるいは宗教的な思考にならざるを得ない状況といえるのではないだろうか。
事実、書店に行けば、古典の新訳から今春以降に発刊された新書まで、あるいは難解なものから軽妙なものまで、人間の生死や生き方にまつわる書籍、歴史に学ぶような書籍が、以前にもましてたくさん並ぶようになってきている。

哲学的になることや、人生について考えることは決して悪いことではない。しかしそこに、一種の「物語」へ埋没していこうとする、諦めや逃避の心理があるのだとすれば、問題を捨て置いてよいわけはないと思う。
ここでいう物語とは、芸術的な作品としてのさまざまな物語だけに限らない。宗教という壮大で強力な物語もあれば、逆に日常生活の中に見出そうとする人もいる「小さな幸せ」も、やはり「物語」として考え含めている。

もちろん物語に駆り立てられて、何らかの問題意識を持ち、考え、議論し、行動するのであれば、物語の意味も出てくる。しかし、物語そのものに没入して現実から目を背けているとすれば、作者は失望するし、宗教を騙る業者の餌食になるだけだ。

子どものような眼差しを持て

古今東西、世の中や社会が混乱しているとき、人々はおおきく3種類の反応を示す。
不安に駆られ右往左往する人、あきらめから極端な悲観に陥って自ら思考停止状態を選んだり、様々な物語に逃げ込んだりしようとする人、そして状況を逆手にとって自分たちの影響力を拡大しようとする人。
これらは必ずしも明確に分かれるわけではなく、重なる部分もあるし、個人の中でも時間的に変化する。

聞くところによると、目の前の危機的状況に対して敢えて鈍感になることによって、自分自身を守ろうとする本能が、人間にはあるのだという。そういう意味では、問題意識を捨てて自らを思考停止させ、物語に逃げ込むことも正常な反応といえるのかもしれない。

そうすると、不安に駆られて右往左往する人と、何かに逃げ込む人が、危機的状況の社会では大勢を占めることになる。しかし、一時的あるいは短期的ならともかく、いつまでもそうであってはならない。
大切なのは現実をしっかりと見つめ、思考し、対応・反応することだ。
もしそうでなければ、残る少数派の「不安と困惑の中で自らの影響力を拡大しようとする人々」の格好の餌食になる。
「まぁ騒がずとも、そこそこうまく行っているじゃないか」などと思っているうちに、思いもよらぬ社会に連れていかれてしまう。
我々はいま、戸惑いながらも、しっかりと現実社会を見据える心構えを持たなければならない

象徴的に言うならば、あの澄んだ子どもの眼差しのように、目をそらさずまっすぐに、そしてじっと、この世の現実を見つめることから物事は始まる。そこからしか、正しい判断はできないからだ。

予兆にどう対応しているのか

7月9日、東京都の新型コロナウイルス新規感染者が過去最高の224人となった。
確かにこの統計については、対象とする期間中に母集団の性格が変化していることなどもあり、一概に「〇〇のN倍だ」とか、「急激に〇〇している」といった一面的な読み取り方で結論を提示するのは適当でないだろう。

しかし、その他の数々のデータ、医療現場に近い人々の意見を総合的に考えてみると、少なくとも良い方向に進んでいるとは言えない。それどころか、このままの状況でいけば、これまで以上に困難な状況が発生する可能性もある。
加えて緊急事態宣言の解除や、東京アラートの解除といった出来事そのものが、まるで禁漁期間の解禁であるかのように、人々の心を一気に緩ませてしまった効果も否定できない。

首相をはじめ官房長官と呼ばれる人や、経済再生を担当する大臣は、「今のところそれほど心配ない」といった姿勢だ。しかし、いま語るべきは今後を見据えた具体的な準備・計画・展望である。
「今後が悪いシナリオにならないように、我々はこうしている。また万一そうなった場合でも影響を最小化できるようにこうしている。ついては政府だけで為し得るものではないので、国民の皆さんにも協力してほしい」といったメッセージが欲しい。

マスメディアも、戦時の大本営発表を国民に広報するような安易な姿勢は厳に謹まなければならない。記者クラブ情報を解説してもらっても意味を感じられない。

(東京の)新規感染者数の推移グラフだけに注目させ、そこを出発点として議論しようとする点にも疑問が残る。

もっと医療現場の人々(現場を支えるすべての人々)や、感染し、発症した人々、その家族の声をていねいに取材して解説したほうがよいのではないか。
まさか、現実を知らせないように政治的圧力がかかっているわけでもなかろう。

事実は小説よりも奇なり、か

ある集団が危機的状況になると、放っておいても結束しようとする力がはたらく。頂いているリーダーがどういう人物であれ、とにかく(今は)結束して困難な状況を乗り切ろうとする。

そのこと自体は悪いことではないが、「誰かがうまくやってくれる」「なんとかなる」といった、他人任せの姿勢でいることはよくないだろう。そういった無責任な姿勢の人が多ければ多いほど、自分の影響力拡大に熱心な人たちの思うつぼになっていく。

まさか日本の為政者たちの心の奥底に、かつてのような玉砕思考(玉砕するのは常に一般国民だ)や、高齢者を巧みに「整理」してしまうことで、短期間にこの国を立て直そうなどという発想があるとは考えたくない。
しかし形はどうあれ、不安に陥っている国民はコントロールしやすいということは当然わかっているはずである。

本稿執筆中、東京都では3日連続200人を超える新規感染者が確認されたという速報が入ってきた。たとえばこれは一体どう理解すべきなのか、そして政府や自治体はどう対応しているのか。マスメディアの情報を得ながらも、自分の頭で考えてみることを面倒くさがってはならない。

いま我々は、何が起きているのかをしっかりと見つめ、それぞれの立場で考え、一人の日本人として反応・行動しなければならない。
いっとき「物語」に酔いしれるのも悪くはない。しかしそこに埋没してしまう国民ばかりなら、やがて元に戻れないところまで転がり落ちていくことは、歴史が証明している。


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