半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『雨の降る日はB定食』

2013年05月31日 12時37分18秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

こんにちは、やや半次郎です。

早速、やや半次郎の可笑しな世界をお楽しみ下さい。

………………

『雨の降る日はB定食』

梅雨入り…かぁ。
あ~、いやだ、嫌だ、イヤだ!
俺ッチは、雨が一番、嫌いなんだ。
次に嫌いなのが、赤頭巾ちゃんに出て来る狼で、その次に嫌いなのが貧乏神だな。

俺ッチ、学生の身分ながら、雨だと学習意欲が半減するんだ。
…いや、3分の1に減るかな?
ゼロになったりしてな、…ウケる。(笑)

みんなは、どうよ?
雨は好きかい?
俺ッチは、雨がどうしても好きになれないんだ。
子どもの頃からそうだったよ。
おそらく、子どもの時に体験したことが、ライオン馬…、いや違った、豹馬…でもない、…あっと、出て来た、トラウマだ、…そのトラウマになってるみたいなんだ。

俺ッチは、母親に育てられたんだ。

えっ、大抵そうだって?

いやいや、これは失礼、みんなもそうか?
俺ッチだけ特別なのかと思ってた。

俺ッチの父親は、もの凄い怖い人で、いつも何かしら他人の穴を見つけては怒りを爆発させるという自分だけのレクレーションをやっている人だ。
だから他人には好かれない。
勿論、家族に対しても同じことをやるもんだから、嫌われているんだ。

俺さまは母親と、オヤジの怒りが収まるのをひたすら待つばかりさ。
ただ、母親はいつも、そんなに気にしていないようだ。

俺ッチの母親は、父親よりも稼ぐ人だからね。
それも、短い時間でだ。
アイデアマンなんだ、母は。
父親は、残業、残業で遅くなる割に、稼ぎは悪いよね。

母は、特許を取った発明が30もあるんだ。
その半分以上が大手の会社で使われているから、特許使用料だけでオヤジの稼ぎを超えるからね。

しかも母親は、家事も立派にこなす、スーパーマンのような人なんだ。
尤も、スーパーマンは男だから、母親に喩えるのは無理があるけどね。

まぁ、その話しは後でゆっくりするとして…、その嫌なオヤジが滅法、雨が好きときている。
雨だと仕事が休みになるからね。
そうして、家族の粗探しを始めて悪態を吐くんだ。

ひとしきり悪態を吐いて収まったかと思うとパチンコに行って惨敗して帰って来る。
そうなるとまた、八つ当たりの始まりだ。
ホント、耐えられないだろ?

だから雨は嫌いなんだ。

雨が降ったらとにかく、家に居たくない訳よ。
分かるよね、そこんところ。

だから、雨が降ってると分かった途端、直ぐに起きて学校へ行くんだ。
顔を合わせたくないからね、オヤジと。

小一時間掛けて学校に着くと、大抵、お腹が空いていることに気付くんだ。
だから一目散に、学食に飛び込むんだよ。
…学食は朝からやってるから。
雨でも休まず営業してるんだ。
エラいだろ?
エラいよなぁ、学食のおばちゃんたちは。
オヤジに爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。

その学食で俺ッチは、いつもB定食を食べるんだ。
朝からやってるメニューは、麺類とB定食だけなんだ。
麺類は腹に溜まらないからどうしてもB定食になる。
だから、雨が降ったらB定食と決まっているんだ。

B定食は、コロッケとメンチカツが一枚ずつキャベツの千切りの上に乗っていて、それだけだと気が引けるとみえて、焼売1ヶと使い回しのパセリを乗せて、締めて280円だ。
恐ろしく安い。
勿論、ご飯とみそ汁も付いている。

そのB定食が、雨の日には気のせいか、キャベツがシンなりしてソースと絡み易くなり、凄く美味いんだ。

だから、雨は嫌いだけど、B定食は気に入っている。
嫌いな雨のお陰で、B定食が食べられるのだ。

だから人間なんて、悪いことばかりじゃないんだ。
こんな取るに足らないような些細なことでも、嫌なことを忘れる原動力になるんだ。

俺ッチは、B定食があるから嫌いな雨でもガマン出来るんだ。
それが生き甲斐になるんだ。

だから、生きて行かなきゃいけないよ。
人間は、そういう使命を持っているんだから。
生きて行こうよ。

そして、雨が降ったら、みんなでB定食を食べようよ。
あのシンなりしたキャベツや、油ギトギトのコロッケにメンチカツ、使い回しのパセリ…、全てが自分を励ましてくれるんだ。

俺の言っていること、分かるよね?
間違っていないだろ?

………………

「あのおじいちゃん最近、いつも独りでブツブツ言ってるよね。」
「近所の人?」
「さあ、どこの人なんだか…。今まで、見かけたことないから…。」
「そっとしといてあげようよ。夢を見てるのかも知れないから。」
「そうだね。きっと、自分が学生だった頃のことを思い出しながら、夢を見ているんだわ。」
「年老いても将来の夢を見るなんて、素敵ね。」
「だから、そっとして、夢の続きを見てもらおうよ。」

公園の桜の鮮やかな緑の葉っぱから、雨が滴り落ちている。
その老人が、いつからそこに現れるようになったのか、誰も知らない。

By やや半次郎



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