半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『めざめ』

2013年04月05日 11時56分05秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

歯ブラシに乗せた歯磨き粉が、口に入れたと同時に洗面所の流しに落ちてしまった時って、得も言われぬものがありますよね。
今日がそんな日なんです。

こんにちは、やや半次郎です。

“やや半”がお贈りする可笑しな世界。
早速、お楽しみ下さい。

………………

『めざめ』

やっと目が覚めた。
いったいいつから眠っていたのだろう。
ずいぶん長いこと眠っていたような気がする。

ただ爽快感はない。
熟睡したはずなのだが…。

外は薄暗い。

今はいったい何時だろう?
いや、それよりも、今日は何日だろう?
…何月なのかも分かっていない。

壁に掛かっているカレンダーは11月のものだ。
そう、2012年の11月。

それで、確か、寝たのは…。

…いや、思い出せない。
クリスマスや大晦日といった分かり易いイベントがある訳でなし…。
何も無い、目立たない“月”として、11月と6月は双璧だからな。

それはそうと、喉が渇いたな。
優先順位で言えば、今日が何日かを知ることよりも、肉体的に欲しているモノを与える方が先だ。

…冷蔵庫に水が入っている筈だ。

冷蔵庫の中からペットボトルに入った飲み水を取り出し、コップに注ぐと、少しずつチロチロと、しかし最後の一滴まで息も継がずに飲み干した。
いや、実際には息継ぎはしている。
あくまでも比喩だ。

それにしても、今飲んだばかりの水が、体中に浸透していくような感覚を覚えたのは、ずいぶん久しぶりだ。

おや、待てよ…、冷蔵庫が作動している。
…つまり、電気が停められていないということだ。

銀行の口座には、この先、何十年引き落としをされても大丈夫な額のお金が入っている。
電気代が自動的に引落されていたから停められていないのに他ならない。

いや、それでも、寝過ごすこともあるから、気に留めておかなければなるまい。

そんなに何ヶ月も経っていないだろうと思ったら、もう既に6月になっていたことがあった。
6月はちと寝過ぎだった。
そんなに眠れるはずはないと思ったが、“事実は小説よりも奇なり”だ。

テレビを点けてみよう。
イブニング・ニュースの時間だ…、いや、新番組か?
あぁ、やっと今日が何日だか分かったよ。
2013年の4月5日、午前5時23分だ。
テレビの画面表示機能で表示した、テレビに内蔵されているカレンダーと時計だ。

イブニング・ニュースではなく、『早ズバッ!なまたまご』だった。
…と言うこことはもう直ぐ『朝ズバッ!』だ。
う~ん、もっと眠ったような気がするんだが…。
たった4ヶ月だけではない感覚だ。

ただ、4ヶ月ということに意味がある。
何故なら、ここ数年、ほとんど決まって4ヶ月なんだ。
俺には理由が分からない。
なんか身体の奥底から目覚まし時計のアラームが鳴るような気がするのだ。
このアラームが、何故か4ヶ月を過ぎないと鳴らないようになったのだ。

…もう一杯、水が飲みたいな。
身体の乾きはハンパじゃない。

身体が乾き過ぎて
鱗みたいなものが出来ている。
もう何年も前からだ。

その頃から、決まって冬になると4ヶ月も眠るようになった。

………………

そうつぶやいて、男はコップになみなみと水を注いだ。
そうして、またチロチロと、細く長い舌を伸ばして、水を飲んだ。
先の割れた細長い舌が、上手に水を掬っていた。

by やや半次郎



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