映像詩

デジタル映像による心の表現
(映像作品制作を通して感じたこと)

2593-一対の燈籠

2020年03月17日 | 30秒の心象風景
 神社には多くの石造物があるが、その中で最も数が多く、形や大きさも多様なのが燈籠である。奉納された時代は様々で、使われている石材の種類も一様ではない。それらの存在は神社が維持されてきた歴史を伝えるものであり、そこに多くの人々の営みが見えてくる。石造物といえども風化による劣化は避けられない。更新されて古いものは撤去されるだろう。しかし、神社を訪れると300年を超えてそこにあり続けているものも珍しくない。忘れ去られて残っているように見えるものから、大切にされ、場所を移動しながらも維持され続けているものも多い。江戸時代の年号に馴染んでくるとおおよその古さがわかるようになってきた。江戸時代といえば「慶長」から「慶応」まで、およそ270年、年号の種類では36種類になる。第八代将軍徳川吉宗の時代、「享保」は江戸幕府が開かれてから約百年経っている。そして、それから約百年後が「文化」である。江戸時代を大きく前期、中期、後期と分けるならばそのあたりになるだろうか。その分類で行けば江戸時代前期の年号が記された石造物に出会うことはめったになく、見るのはほとんどが後期のものである。「享保」から中期とすれば、その間の年号は11種ということになるが、これらに出会うのは後期よりは少ないが、それでも多くの神社で見ることができる。さて、対になって設置されることが多い燈籠だが、一対が同時に設置されたものでない場合も多い。若王子神社で見た燈籠は一方が享和三年、もう一方が文化元年である。大きく時代があいているのかと思えば、享和四年二月に改元されて文化になっている。文化元年は翌年ということであり、それは時間感覚でいえば、1年も空いていないことになる。年号に見える変化はこんなにわずかなこともある。

30秒の心象風景15869・文化と享和~若王子神社~
https://youtu.be/3RGUK5Oi23s
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