宮崎口蹄疫:感染ルート・初動の遅れ解明の論点

口60 口蹄疫対策では何よりも迅速な殺処分(家伝法16条「直ちに」)・埋却(同21条「遅滞なく」)が必要。宮崎日日新聞によると24時間以内の処分終了は18農場のみ。6日以上が200農場。最長35日。豚2頭に4日の例もある。何故こうなったのか。埋却地の確保・補償問題も解明すべき。

口58 口蹄疫疫学調査チーム。最初の感染は6例目で3月中旬頃。1例目・7例目(企業経営型牧場~抗体検査した牛は5例)は3月下旬頃。4/20以前に10農場以上に感染、10例目の県畜産試験場(最初の豚)も含む3/31水牛農場で家畜防疫員が口蹄疫を何故疑わなかったのか、最大の謎。

口57 東国原知事は6/21付ブログに「サーベイランスは重要である」「特に1例目・6例目・7例目については、僕も関係者・担当者に何度も聞き取り調査等をしている」と記述。9例目(えびの)、10例目(県畜産試験場)、280例目(都城)も合わせ、まずこの6例の調査結果を発表すべきでは。

口56 7/20山田農水大臣。川南の大規模農場で公表前から口蹄疫が発症していた農場があるのでは?との質問に、「調査報告がある。疫学調査チーム・第三者委員会の検証で、国・県・担当地区の責任、体制の不備も含め検証する」と発言。国民にも調書・復命書を公開し、国と県で検証議論すべき。

口55 7/19共同。宮崎口蹄疫で川南町の大規模農場(第7例目)で、通報6日前から牛数頭でよだれ症状、国の抗体検査ではこの農場の感染時期は遅くとも4月上旬とみられる、との報道。家伝法第13条「届出義務」・14条「隔離義務」違反となれば、補助金・交付金等は当然支給されない。 

口53 宮崎県新富町で6/25口蹄疫の疑いのある牛を国に報告せず殺処分。そこに派遣されていた獣医師は写真撮影や採血を求めたが、県の公務員獣医師である家畜防疫員は拒否防疫より制限解除優先で家伝法違反の疑い濃厚。6/25の家畜防疫員の『復命書』を公開すべき。

口蹄疫関連ツイート(過去すべて)

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〈検証Ⅴ〉口蹄疫清浄国資格回復のための「清浄化検査と感染源・感染ルート解明」

7月4日以降、宮崎県で新たな口蹄疫の発生は報告されていませんが、日本が「口蹄疫清浄国」と再び国際社会から認められるまでには、今後相当な時間がかかりそうです。しかし、日本の畜産業界にとって一日も早い清浄国復帰は至上命題です。

≪ワクチン接種地帯外周等での清浄化検査が必要≫                                            初期の封じ込めに失敗した今回は、想像をはるかに超える感染拡大を招き、やむを得ずワクチン接種に踏み切ることになりました。「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(以下、防疫指針)3(1)には「ワクチンは発症の抑制に効果があるものの、感染を完全に防御することはできないため、無計画・無秩序なワクチン使用は、本病の発生又は流行を見逃すおそれを生ずることに加え、清浄性確認のための抗体検査の際に支障を来し、清浄化を達成するまでに長期間かつ多大な経済的負担や混乱を招くおそれがある。」と書かれています。

ワクチン接種地帯については感染が起きていた可能性があり、しかも、ワクチンの効果によって症状が抑えられ発症を確認できなかった可能性もあるということから、ワクチン接種地帯外周への感染拡大のおそれを否定できません。ワクチン接種家畜を全て殺処分したからといって、ウイルスを撲滅したことにはならない可能性があるのです。鹿児島大・岡本教授は、ワクチン接種地帯の外周についての清浄化検査=抗体検査は、日本が清浄国の再認定を受ける為には不可欠であると述べています。(ワクチン接種地帯外周における清浄化検査:鹿児島大・岡本嘉六教授

また、ワクチン接種地帯である川南周辺には、大量の糞尿・堆肥・敷わら等が現在も残っており、ここにも生きたウイルスの存在を否定できません。ワクチン接種地帯外周や日向市・木城町・西都市・宮崎市の発生農家周辺3km→10km圏内での抗体検査は行われておらず、このままでは当然OIE(国際獣疫事務局)から清浄国資格を再び与えられることも相手国から輸出を許されることもないと、岡本教授は述べています。(口蹄疫清浄化への道程:鹿児島大:岡本嘉六教授

家畜伝染病予防法や防疫指針は、清浄化に向けたこれらの抗体検査を義務付けてはいませんが、防疫指針「第1 基本指針」には「(関係者は)国際的な本病清浄国の防疫原則に則り、殺処分により本病の撲滅を図り、常在化を防止する対策を実施することが重要である」と明記されています。

しかし現実には、上記の清浄化検査を行う前に、宮崎県は7月16日、川南・高鍋地区の移動制限を解除しようとしています。抗体検査を行わなければ陰性も陽性もないわけですし、感染報告がなく臨床検査(目視検査)で異常が確認されないからといって移動制限を解除するということは、清浄国資格回復のために大きな障害となる可能性があるのです。

家畜伝染病予防法防疫指針の最大の問題点は、「都道府県知事がこれに従わないということを想定していないことだ」と岡本教授は指摘しています。民間種牛6頭の扱いのみならず、この間、宮崎県知事は「特例」を主張し続けてきました。法律や規則を遵守しないと言ってはばからない宮崎県知事の姿勢は、今後の防疫対策に悪影響を及ぼすでしょう。一日も早く清浄化へのスタート地点に立ち、ジャパンブランドの輸出再開を実現する為には、宮崎県に代わって国が責任を持って清浄化検査等の防疫対策を行っていくしかありません。

OIEは、口蹄疫ウイルスが国内に存在しないことの証明のために、陸生動物衛生規約8・5・8条で「ワクチン接種家畜を全て殺処分し3ケ月間発生のないこと」としていますが、これには当然のこととして、イノシシや鹿等の野生動物への感染のないことの証明も必要です。特措法にも「都道府県知事は、偶蹄類に属する野生動物に係る口蹄疫の発生の状況の監視その他の当該野生動物に係る口蹄疫の発生の予防及びまん延の防止のために必要な措置を講ずるものとする」とあり、ワクチン接種地帯外周、日向市・木城町・西都市・宮崎市の発生農家周辺3km→10km圏内での抗体検査の他に、イノシシ・鹿等の野生動物に対する抗体検査も行わなければならないのです。

拙速な移動制限解除は、清浄国資格回復に向けて、事態を大きく後退させることになりかねず、山田農水大臣が川南・高鍋地区の移動制限解除に非常に慎重な構えを示す理由はそこにあります。

≪清浄国資格回復には感染源・感染ルート解明も不可欠≫                                     また、OIEが清浄国資格を認め相手国が輸出を認めるようになる為には、その上に、少なくとも最新の発生事例の感染ルートの解明は不可欠だと言われています。勿論、今なお真相究明が行われていない初期感染ルートや、当初感染を隠ぺいした可能性のある企業経営型牧場で何が起こっていたのか、また4月28日の県の畜産試験場のブタへの感染ルート等の解明も必要です。

防疫指針には、「都道府県畜産主務課は、家畜、人及び車両の移動、飼料の利用、物品の移動、渡り鳥等の野生動物との接触の可能性、気象条件等を網羅的に調査する。農水省はこれらの調査に基づき感染源及び感染経路の究明に努める」と記されており、特措法においても、「感染経路及びまん延の原因究明に努めなければならない」と定めています。

更に、感染源・感染ルートの解明は、OIEや相手国に対する報告のみならず、国民の税金が投入される補償金問題にも直結する大変重要な問題です。政府は、600億から700億円にものぼる補償費用の大半を、一般会計の予備費から支出し、残りを特別交付税から支払う予定にしています。国民の税金が使われる以上、『補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)』に照らし合わせて、補償金が適正に支払われたかどうかの判断が求められます。この法律には厳しい罰則規定があります。宮崎県で何が起こっていたのか、真実を国民に知らせる義務が宮崎県と国にはあるのです。うやむやにされることは許されません。

防疫指針4(1)では、「家畜防疫員は過去21日間の家畜の移動(出入りを含む)及び過去7日間の人の出入りその他の接触を調べ、調書を都道府県畜産主務課に通報する」と規定しています。第1例目から第292例目までの全ての『調書』と、今年1月7日以降の家畜防疫員をはじめとする関係者の『復命書』を、宮崎県は公開すべきです。宮崎県知事は、家畜防疫員が口蹄疫を見過ごした3月31日(4月23日に6例目として公式発表)と4月9日(4月20日に1例目として公式発表)の症例について、家畜防疫員が口蹄疫を疑うことは困難であったと主張しています。しかし、宮崎県知事は、1月7日農水省動物衛生課長通知については県下の関係者にFAXや電話等で通知し、1月22日には防疫会議を開いたと述べており、「口蹄疫を疑うことができなかった」という家畜防疫員や知事の主張は納得できるものではありません。通常のリスクコントロールやガバナンスの観点からいっても、この時、家畜防疫員が口蹄疫を疑わないということはあり得ない話だと思います。

移動制限は、地元のみなさんに非常に不便な暮らしを強いることになっています。一日も早い制限解除を願う皆さんの気持ちは理解できますが、国際社会から口蹄疫清浄国として再認定されるには、最後まで手綱を緩めることができないのもまた事実であり、一日も早い清浄国資格回復は、日本そして宮崎県の畜産の復活・発展のために必要不可欠なことだと思います。口蹄疫清浄国資格の回復と国民の税金の適正使用の為に、十分な範囲での清浄化検査と感染源・感染ルートの解明が一刻も早くなされることを望みます。

 

家畜伝染病予防法

口蹄疫対策特別措置法

口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(防疫指針)

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)

口蹄疫発生状況図(鹿児島大・岡本嘉六教授)

口蹄疫〈検証Ⅰ~Ⅴ〉:はたともこブログ

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