いよいよ我が郷でも冬らしくなって参りました!
地球温暖化が顕著に表れ夏は暑く冬も地域限定で周囲より気温が微妙に高いという、日本の真ん中あたりにある不健康極まりない過密都市の側ら在住ではありますが、それでもいい加減フリースやジャケットじゃ寒くなってきました。
そろそろコートの出番です。ちなみに迷彩偽毛皮付き。
先日の長期予報で「今年は寒い」と聞きました。
ちゃんと寒いなら、今年こそ雪!と子供達とともに祈っております。
去年はとうとう降らずじまいだったもので・・・
そして寒いと煮込み料理がとにかく美味しいですよね!
私は煮込んでさえあれば、おでんだろうとシチューだろうと、粥でも雑炊でも麺でも、何でもかんでも好きなんですが、そんな嗜好に偏った料理話第2話がやっとできました。
と言っても難産だったというわけではなく、変に説明じみてるのにどうしても自分的には外せない個所があり、そこをどうしようこうしようと練っていただけなんですが。
なので説明臭かったり読みにくかったら御免なさい!
自分的にはこの話、書いてて面白くてしょーがないのです。
これも、自己満足の極みだったらまた御免なさい!!
というわけで、また「続き・・・」にしまってあります。
最初はショートと思ってたのにまだまだ続きます!
すっかり長編じみてきましたが、宜しければ読んでやってくださいませ。
ロコマリストに捧ぐ20のお題 「No.16 手料理」そのに。
目を覚ました時にはとっぷりと日が暮れていた。
スタンドの明かりだけの薄暗い寝室の中、寝台のすぐ脇に置いた椅子に座って本を読んでいたマリアが目を上げた。
「起きたか。具合はどうだ?」
「今・・・何時ですか?」
「もうすぐ日付が変わる」
起き上がろうとする私の背に手を添えて助け起こすと、肩に上着を羽織らせてくれた。そしてまた額に手を当てる。今度は悪寒が走ることもなく、瞼を閉じマリアの冷たい手の心地よさを味わうことができた。
「うん、さっきよりは熱が引いたようだな。食欲は?」
「あります!」
すかさず答える私に、マリアはふふんと満足げな笑みを浮かべると立ち上がった。
「今度は少し時間がかかる。大人しくそこで待っていろ」
「はい」
衣擦れの音だけさせてマリアは姿を消した。
ふとサイドテーブルに目を移すと、彼女が先程見ていた本が目に入った。古びた装丁のその本はシャーマンカーン様よりお借りした古記録で、私はそれを紐解き自分なりに解釈しようと格闘し続けていたのだった。
(マリアが・・・これを?)
読んでいたのかと思うと不思議な気分だった。
そもそも古代文字で書かれたこの書を彼女は読むことができるのだろうか?
ぱらぱらと頁を繰って栞の挟んである個所を開いたが、どんなに読もうと試みても熱のせいで頭がうまく働かないのか、まるで内容がわからない。眉根を寄せて睨み付けていると、突然目の前から書が消えた。
「随分と難しい本を読んでいるんだな。歴史家にでもなるつもりか?」
気付かぬうちにマリアが側に立っていた。彼女はサイドテーブルの上に盆を置くと、取り上げたずしりと重い本を両手に取り、開かれた頁の数行を詰まることなく読みあげた。
「大古の神々の戦いの記録か。私達が生きる現代とよく似ているような気がするな」
「これが読めるんですか!?」
私は驚いた。彼女がこうもスラスラとこの書を読めるとは思ってもみなかったのだ。
「ああ、母の魔術書が丁度この時代のものでな。読めないと話にならんのだ」
「そう・・・なんですか」
馴染みが薄い文字と言語で書かれているとはいえ、自分が勉強不足であることを恥じると同時に微かな嫉妬を感じずにはいられなかった。
複雑な面持ちをする私に気付くと、マリアはパタンと音を立てて本を閉じて寝台の隅に放り投げた。
「こんな本ばかり読んでいるから熱なんか出すんだ。しばらくお預けだな」
「えぇっ?それは・・・」
「それよりまずは栄養・休息・睡眠だ。食う気がないなら片付けるぞ!」
「たっ、食べます!」
マリアはふふんと鼻で笑うとまたもや椀を手に取り匙でひと口掬い、先程と同じように私の前に差し出した。
「ハイ、あーん」
「あぁぁ~・・・」
照れも恥じも忘れ大口を開けた。
今度は雑炊だった。
野菜はよく煮込んであって軟らかく、丁寧に取ったであろう出汁と抑え加減の塩味のおかげで素材の味が引き立っていて、とても優しい味がする。
「どうだ?」
「はい、とても美味しいです・・・けど・・・」
「けど何だ?」
「こんなに料理が上手だとは知りませんでした。隠してたんですね、料理できること」
できるだけ何気なく言ったつもりだったが、それでも自分の声が少し拗ねているのがわかった。
「隠してなんかいない」
「でも、話してくれませんでしたよね?」
病で弱っているせいか、気持ちを抑えきれなくなって今度は明らかに拗ねた様子で言ってみた。
するとマリアは心外だとでも言わんばかりの調子で言い返してきた。
「それはお前が聞かなかったからだろう?
それに最初のうちは私は動けなかったから、お前に身の回りの世話をしてもらうしかなかったし・・・」
「それはそうかも知れないけど・・・ちょっとショックだな」
少々大袈裟に項垂れてみせると、マリアは観念したように言った。
「黙っていて・・・悪かったな」
憮然とした言い方だが、それでも謝ってくれたことが嬉しくてつい笑みがこぼれた。
「―――いいえ。私も印象だけで貴女は家事ができないものだと決め付けていたし・・・」
「ふぅん。家事ができないように見えるのか・・・」
腕を組み怪訝そうな顔をするマリに申し訳ないような気になり、私は弁明を始めた。
「まぁ、そういう所もありますが・・・何と言うか、てっきり姫育ちかと思っていたもので・・・」
「姫育ち?」
「そう。傅かれて育ったようなイメージがあるもので。だから身の回りのことはすべて従者がやっていたんだろうと・・・」
「成る程。―――まぁ、とりあえず温かいうちに食べろ」
思い出したように椀を取ると、少し冷めた雑炊を掬い取ってまた口に運んでくれた。
全て食べ終えたところで再び彼女が口を開いた。
「確かにお前の言う通り、私は傅かれて育ちはしたが・・・だからといって甘やかされたりはしていない。
むしろ厳し過ぎて母の愛を疑ったほどだ」
「というと?」
マリアは遠い目をしながら淡々と語りはじめた。
「お前も知っての通り、悪魔は雌自体が稀少だ。しかも年端も行かぬ小娘の分際でスーパーデビル直下に就いたんだ、身の危険に曝されぬ筈がない。だから母は私の身を守るために『決して人の手を借りてはならない』と教え、悪魔として必要な知識や技術だけに留まらず、礼儀作法や立ち居振舞い、そして身の回りの全てのことを私に徹底的に叩き込んだ。だから料理は勿論、掃除も洗濯も繕い物もできるし、こう見えてもその気になれば女としての所作だって完璧だ。どうだ、驚いただろう?」
マリアは得意げに胸を張り微笑んだ。
「―――本当に驚きました」
「すべては母のおかげだ」
その瞳に母への確かな愛を見出すと、胸がずきりと痛んだ。
(その母親を殺したのは私だ・・・)
急に居た堪れない気持ちになり、謝罪の言葉が口をついて出た。
「申し訳ありませんでした」
「何がだ?」
「貴女の母親を、私はこの手で・・・」
「やめろ!」
マリアはぴしゃりと言うと私の手を強く握った。
「もう過去の話だ。それにあれは私が蒔いた種。お前が気に病むことはない、忘れろ」
「しかし・・・」
不安げな視線を受け止めると、マリアは優しく微笑んだ。
「病で気まで臥せっているんだ。もう休め」
なかば無理矢理布団へ押し込むと、私の頭を犬にでもするようにくしゃくしゃと撫でまわしながら言った。
「心配するな。ただの風邪だ、じき直る。何といってもこの私が看病してやってるんだからな」
「そうですね。私も早く治りそうな気がします」
マリアは空の食器を乗せた盆を持って立ち上がると、思い出したように言った。
「そうだ。ずっと考えていたんだが、これからは私が家事をやる。また文句を言われてはつまらんからな」
「文句?」
「そうだ。ヤマトがお前を担いで連れてきた時に、エンジェルから散々に文句を言われた」
「それは・・・申し訳ないことをしました。しかし・・・」
「だからと言う訳ではないがな、ここに居るだけでは退屈なのだ。暇つぶしにもなるから気にするな」
同居して以来、家事は一手に私が引き受けてやっていただけに少々複雑な気持ちだったが、この際思い切って彼女に任せてみることにした。
「―――はい。ではお言葉に甘えて、お願いします」
地球温暖化が顕著に表れ夏は暑く冬も地域限定で周囲より気温が微妙に高いという、日本の真ん中あたりにある不健康極まりない過密都市の側ら在住ではありますが、それでもいい加減フリースやジャケットじゃ寒くなってきました。
そろそろコートの出番です。ちなみに迷彩偽毛皮付き。
先日の長期予報で「今年は寒い」と聞きました。
ちゃんと寒いなら、今年こそ雪!と子供達とともに祈っております。
去年はとうとう降らずじまいだったもので・・・
そして寒いと煮込み料理がとにかく美味しいですよね!
私は煮込んでさえあれば、おでんだろうとシチューだろうと、粥でも雑炊でも麺でも、何でもかんでも好きなんですが、そんな嗜好に偏った料理話第2話がやっとできました。
と言っても難産だったというわけではなく、変に説明じみてるのにどうしても自分的には外せない個所があり、そこをどうしようこうしようと練っていただけなんですが。
なので説明臭かったり読みにくかったら御免なさい!
自分的にはこの話、書いてて面白くてしょーがないのです。
これも、自己満足の極みだったらまた御免なさい!!
というわけで、また「続き・・・」にしまってあります。
最初はショートと思ってたのにまだまだ続きます!
すっかり長編じみてきましたが、宜しければ読んでやってくださいませ。
ロコマリストに捧ぐ20のお題 「No.16 手料理」そのに。
目を覚ました時にはとっぷりと日が暮れていた。
スタンドの明かりだけの薄暗い寝室の中、寝台のすぐ脇に置いた椅子に座って本を読んでいたマリアが目を上げた。
「起きたか。具合はどうだ?」
「今・・・何時ですか?」
「もうすぐ日付が変わる」
起き上がろうとする私の背に手を添えて助け起こすと、肩に上着を羽織らせてくれた。そしてまた額に手を当てる。今度は悪寒が走ることもなく、瞼を閉じマリアの冷たい手の心地よさを味わうことができた。
「うん、さっきよりは熱が引いたようだな。食欲は?」
「あります!」
すかさず答える私に、マリアはふふんと満足げな笑みを浮かべると立ち上がった。
「今度は少し時間がかかる。大人しくそこで待っていろ」
「はい」
衣擦れの音だけさせてマリアは姿を消した。
ふとサイドテーブルに目を移すと、彼女が先程見ていた本が目に入った。古びた装丁のその本はシャーマンカーン様よりお借りした古記録で、私はそれを紐解き自分なりに解釈しようと格闘し続けていたのだった。
(マリアが・・・これを?)
読んでいたのかと思うと不思議な気分だった。
そもそも古代文字で書かれたこの書を彼女は読むことができるのだろうか?
ぱらぱらと頁を繰って栞の挟んである個所を開いたが、どんなに読もうと試みても熱のせいで頭がうまく働かないのか、まるで内容がわからない。眉根を寄せて睨み付けていると、突然目の前から書が消えた。
「随分と難しい本を読んでいるんだな。歴史家にでもなるつもりか?」
気付かぬうちにマリアが側に立っていた。彼女はサイドテーブルの上に盆を置くと、取り上げたずしりと重い本を両手に取り、開かれた頁の数行を詰まることなく読みあげた。
「大古の神々の戦いの記録か。私達が生きる現代とよく似ているような気がするな」
「これが読めるんですか!?」
私は驚いた。彼女がこうもスラスラとこの書を読めるとは思ってもみなかったのだ。
「ああ、母の魔術書が丁度この時代のものでな。読めないと話にならんのだ」
「そう・・・なんですか」
馴染みが薄い文字と言語で書かれているとはいえ、自分が勉強不足であることを恥じると同時に微かな嫉妬を感じずにはいられなかった。
複雑な面持ちをする私に気付くと、マリアはパタンと音を立てて本を閉じて寝台の隅に放り投げた。
「こんな本ばかり読んでいるから熱なんか出すんだ。しばらくお預けだな」
「えぇっ?それは・・・」
「それよりまずは栄養・休息・睡眠だ。食う気がないなら片付けるぞ!」
「たっ、食べます!」
マリアはふふんと鼻で笑うとまたもや椀を手に取り匙でひと口掬い、先程と同じように私の前に差し出した。
「ハイ、あーん」
「あぁぁ~・・・」
照れも恥じも忘れ大口を開けた。
今度は雑炊だった。
野菜はよく煮込んであって軟らかく、丁寧に取ったであろう出汁と抑え加減の塩味のおかげで素材の味が引き立っていて、とても優しい味がする。
「どうだ?」
「はい、とても美味しいです・・・けど・・・」
「けど何だ?」
「こんなに料理が上手だとは知りませんでした。隠してたんですね、料理できること」
できるだけ何気なく言ったつもりだったが、それでも自分の声が少し拗ねているのがわかった。
「隠してなんかいない」
「でも、話してくれませんでしたよね?」
病で弱っているせいか、気持ちを抑えきれなくなって今度は明らかに拗ねた様子で言ってみた。
するとマリアは心外だとでも言わんばかりの調子で言い返してきた。
「それはお前が聞かなかったからだろう?
それに最初のうちは私は動けなかったから、お前に身の回りの世話をしてもらうしかなかったし・・・」
「それはそうかも知れないけど・・・ちょっとショックだな」
少々大袈裟に項垂れてみせると、マリアは観念したように言った。
「黙っていて・・・悪かったな」
憮然とした言い方だが、それでも謝ってくれたことが嬉しくてつい笑みがこぼれた。
「―――いいえ。私も印象だけで貴女は家事ができないものだと決め付けていたし・・・」
「ふぅん。家事ができないように見えるのか・・・」
腕を組み怪訝そうな顔をするマリに申し訳ないような気になり、私は弁明を始めた。
「まぁ、そういう所もありますが・・・何と言うか、てっきり姫育ちかと思っていたもので・・・」
「姫育ち?」
「そう。傅かれて育ったようなイメージがあるもので。だから身の回りのことはすべて従者がやっていたんだろうと・・・」
「成る程。―――まぁ、とりあえず温かいうちに食べろ」
思い出したように椀を取ると、少し冷めた雑炊を掬い取ってまた口に運んでくれた。
全て食べ終えたところで再び彼女が口を開いた。
「確かにお前の言う通り、私は傅かれて育ちはしたが・・・だからといって甘やかされたりはしていない。
むしろ厳し過ぎて母の愛を疑ったほどだ」
「というと?」
マリアは遠い目をしながら淡々と語りはじめた。
「お前も知っての通り、悪魔は雌自体が稀少だ。しかも年端も行かぬ小娘の分際でスーパーデビル直下に就いたんだ、身の危険に曝されぬ筈がない。だから母は私の身を守るために『決して人の手を借りてはならない』と教え、悪魔として必要な知識や技術だけに留まらず、礼儀作法や立ち居振舞い、そして身の回りの全てのことを私に徹底的に叩き込んだ。だから料理は勿論、掃除も洗濯も繕い物もできるし、こう見えてもその気になれば女としての所作だって完璧だ。どうだ、驚いただろう?」
マリアは得意げに胸を張り微笑んだ。
「―――本当に驚きました」
「すべては母のおかげだ」
その瞳に母への確かな愛を見出すと、胸がずきりと痛んだ。
(その母親を殺したのは私だ・・・)
急に居た堪れない気持ちになり、謝罪の言葉が口をついて出た。
「申し訳ありませんでした」
「何がだ?」
「貴女の母親を、私はこの手で・・・」
「やめろ!」
マリアはぴしゃりと言うと私の手を強く握った。
「もう過去の話だ。それにあれは私が蒔いた種。お前が気に病むことはない、忘れろ」
「しかし・・・」
不安げな視線を受け止めると、マリアは優しく微笑んだ。
「病で気まで臥せっているんだ。もう休め」
なかば無理矢理布団へ押し込むと、私の頭を犬にでもするようにくしゃくしゃと撫でまわしながら言った。
「心配するな。ただの風邪だ、じき直る。何といってもこの私が看病してやってるんだからな」
「そうですね。私も早く治りそうな気がします」
マリアは空の食器を乗せた盆を持って立ち上がると、思い出したように言った。
「そうだ。ずっと考えていたんだが、これからは私が家事をやる。また文句を言われてはつまらんからな」
「文句?」
「そうだ。ヤマトがお前を担いで連れてきた時に、エンジェルから散々に文句を言われた」
「それは・・・申し訳ないことをしました。しかし・・・」
「だからと言う訳ではないがな、ここに居るだけでは退屈なのだ。暇つぶしにもなるから気にするな」
同居して以来、家事は一手に私が引き受けてやっていただけに少々複雑な気持ちだったが、この際思い切って彼女に任せてみることにした。
「―――はい。ではお言葉に甘えて、お願いします」