水曜日。勤務終了30分前に受け持ち病室の前を通りかかったら、患者さんBが苦しそう。なんか変だな、と思って様子を見に行くと「息が出来ない」と。Sat(酸素飽和度)を計ってみると99%と正常だけど、なんと脈拍200。指先および口唇チアノーゼ、胸部痛。すごくやばそうな状況です。
すぐに心電図をとって、たまたまナースステーションにいた若いドクターに「やばそうなので、すぐに診て」と報告すると、一目心電図をみて「…これは、私の手に負えないから、すぐに循環器の上のドクターにコンサルトとらないと…」と。
若いドクターが循環器ドクターと相談している合間に、患者さんの症状がすこーし落ち着いて話ができるほどになったのですが、具合を聞きつつベッドに横にさせている間にまた悪化。しかも今度は先ほどよりひどい感じ。
やばいよやばいよ、これ絶対やばい!と、周りのスタッフに助けを求め、さらに走ってドクターを呼びにいき、ドクターも「え?!そんなこと言われても、私この患者さんのことよくわからない…」とパニックなので、「じゃあもういい!Akutチーム呼びますよ!」と電話で要請。
うちの病院にはなにか患者さんの急変や緊急事態には、AkutチームというICUから麻酔科ドクターとICUナース(専門教育を受けている)が来て、その場の指示を与えてくれます。
しかし電話でAkutチームを呼び出している最中、患者さんの元にいたアシスタントが、「心停止寸前!蘇生開始して!」と叫んでいます。ああ、恐れていた状況が!慌てて今度は「2222」という、心停止時の蘇生チームを要請。
この蘇生チームは、ICUドクター、ICUナース、麻酔科ドクター、ポーターで編成されており、ICUドクターの指示、処置のもと、ICUナースがそのアシスト、麻酔科ドクターがバイタルサインや点滴針の留置、管理、ポーターがその間心臓マッサージをします。なので深夜勤やスタッフが少ないとき、経験の浅いスタッフのときにも、彼らがすべてをやってくれるので(しかも薬品から蘇生に使う器具すべてが入ったカバンを持って駆けつけてくる)、とても助かります。
蘇生チームを要請後、5分ほどで到着。患者さんはすでに心停止していたので心臓マッサージをしていたのですが、蘇生チームがすぐに引き継ぎ、蘇生フルコースがスタート。
ちなみにデンマークでは「心停止の場合蘇生を希望するか」を自己決定することができ、蘇生を希望しない人に蘇生を施すことは違法です。なので、蘇生の前にその患者さんが希望している人かどうか、よく知っておく必要があります。
実は私、お恥ずかしい話ではありますが、ナースになって8年目(2年のブランクあり)にもかかわらず、この蘇生フルコースを目の前で見るのが実は初めてで、もちろん何度も研修や勉強会で学んではいたものの、さすがにちょっとテンパリました(実際は蘇生チームが処置にあたっているので、私は外回りのみなのですが…)。
蘇生開始から40分、3度の電気ショックでも患者さんは戻らず、結局亡くなってしまったのですが、その事の早さに呆然。
その後、患者さんをある程度きれいにし、緊急で呼び出された家族のもとへ、ドクターと一緒に説明へ。こんなとき、どう切り出していくのか…。
ミーティングルームに集められた家族に、心痛な面持ちでドクターが「手を尽くしたのですが…」と切り出すと、その途端、患者さんの3人息子のうち2人が大声で怒り狂い、泣き叫び、壁や机を殴りつけ、それをみて患者さんの奥さんや女性の身内が「やめなさい!そんなことして何になるの!?」と泣き叫び、究極の修羅場。
一時私達にも襲いかかりそうな剣幕だったので、ドクター(妊娠7ヶ月)と私でドア付近まですーーっと避難。しばらく彼らが泣いたりわめいたりをじっと見守り、落ち着くのを待ってから、患者さんにお別れのため、病室へ案内。
みんなが修羅場の時にもひとり、気丈に、他の家族をなぐさめ、「しっかりしなさい!先生の話をちゃんと聞きなさい!」と励ましていた、患者さんの奥さんは、病室には入ることがなかなかできず、「できない、私はまだできない、心の準備が…だってこんなの本当のことじゃない、私に起きたことじゃない」と、泣き崩れてしまい、その奥さんを支えて「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と抱きしめているうちに、私もついボロボロと。
患者さんが心臓発作を起こした時にも、ずっとそばで声をかけ続けていた奥さん。本当はその日が退院予定で、でも血液検査の結果退院が延期になって、がっかりしていた患者さんと奥さん。ようやく自分を取り戻して病室に入ると、まっすぐに患者さんのところへいって「min skat」と言ってキスをした奥さん。
なんというか、こんなにストレートな悲しみと愛情の表現をみたことがなかったので、すごく心を打たれました。
こういった急変、蘇生、死という一連の過程を、フルコースで体験したことはあなかったけど、でも人の死に関してはそれなりに見てきたので、それほどショックというものはなかったのですが、色んなスタッフから「大丈夫?あなたはやるべきことをちゃんとやったし、彼も元々心臓がとても悪い人だったから…自分を責めないでね」と励ましてもらい、さらには婦長からも今朝、「その後心の方はどう?あれはすごく衝撃的な家族のリアクションだったし、大丈夫かなと思って」と気遣って電話をくれたのでした。なんでも、「私も今まであんなの見たことが無い」ほど激しいリアクションだったそうで…。
私も自分の気持ちをどうまとめて説明していいのかわからないので、「ええ、まあ」とか「はあ」とか言ってるだけなので、たぶんみんな私が自信喪失?ショック状態?と心配したのかも…。大丈夫なのに…。
実は最近、自分のこの急変に弱いというウィークポイントを叩き直すため、今のまったり病棟(煩雑な忙しさはあるけど)ではなく、もっと他の、たとえばERとかICUに転職しようかなーと思ったりしています。そんなところへ行ってしまって「しまった!つらい!難しい!」となるのは目に見えてますが、でもまあ、キャリアアップ、弱点克服のための修行!も必要だなーと思う、今日この頃です。
すぐに心電図をとって、たまたまナースステーションにいた若いドクターに「やばそうなので、すぐに診て」と報告すると、一目心電図をみて「…これは、私の手に負えないから、すぐに循環器の上のドクターにコンサルトとらないと…」と。
若いドクターが循環器ドクターと相談している合間に、患者さんの症状がすこーし落ち着いて話ができるほどになったのですが、具合を聞きつつベッドに横にさせている間にまた悪化。しかも今度は先ほどよりひどい感じ。
やばいよやばいよ、これ絶対やばい!と、周りのスタッフに助けを求め、さらに走ってドクターを呼びにいき、ドクターも「え?!そんなこと言われても、私この患者さんのことよくわからない…」とパニックなので、「じゃあもういい!Akutチーム呼びますよ!」と電話で要請。
うちの病院にはなにか患者さんの急変や緊急事態には、AkutチームというICUから麻酔科ドクターとICUナース(専門教育を受けている)が来て、その場の指示を与えてくれます。
しかし電話でAkutチームを呼び出している最中、患者さんの元にいたアシスタントが、「心停止寸前!蘇生開始して!」と叫んでいます。ああ、恐れていた状況が!慌てて今度は「2222」という、心停止時の蘇生チームを要請。
この蘇生チームは、ICUドクター、ICUナース、麻酔科ドクター、ポーターで編成されており、ICUドクターの指示、処置のもと、ICUナースがそのアシスト、麻酔科ドクターがバイタルサインや点滴針の留置、管理、ポーターがその間心臓マッサージをします。なので深夜勤やスタッフが少ないとき、経験の浅いスタッフのときにも、彼らがすべてをやってくれるので(しかも薬品から蘇生に使う器具すべてが入ったカバンを持って駆けつけてくる)、とても助かります。
蘇生チームを要請後、5分ほどで到着。患者さんはすでに心停止していたので心臓マッサージをしていたのですが、蘇生チームがすぐに引き継ぎ、蘇生フルコースがスタート。
ちなみにデンマークでは「心停止の場合蘇生を希望するか」を自己決定することができ、蘇生を希望しない人に蘇生を施すことは違法です。なので、蘇生の前にその患者さんが希望している人かどうか、よく知っておく必要があります。
実は私、お恥ずかしい話ではありますが、ナースになって8年目(2年のブランクあり)にもかかわらず、この蘇生フルコースを目の前で見るのが実は初めてで、もちろん何度も研修や勉強会で学んではいたものの、さすがにちょっとテンパリました(実際は蘇生チームが処置にあたっているので、私は外回りのみなのですが…)。
蘇生開始から40分、3度の電気ショックでも患者さんは戻らず、結局亡くなってしまったのですが、その事の早さに呆然。
その後、患者さんをある程度きれいにし、緊急で呼び出された家族のもとへ、ドクターと一緒に説明へ。こんなとき、どう切り出していくのか…。
ミーティングルームに集められた家族に、心痛な面持ちでドクターが「手を尽くしたのですが…」と切り出すと、その途端、患者さんの3人息子のうち2人が大声で怒り狂い、泣き叫び、壁や机を殴りつけ、それをみて患者さんの奥さんや女性の身内が「やめなさい!そんなことして何になるの!?」と泣き叫び、究極の修羅場。
一時私達にも襲いかかりそうな剣幕だったので、ドクター(妊娠7ヶ月)と私でドア付近まですーーっと避難。しばらく彼らが泣いたりわめいたりをじっと見守り、落ち着くのを待ってから、患者さんにお別れのため、病室へ案内。
みんなが修羅場の時にもひとり、気丈に、他の家族をなぐさめ、「しっかりしなさい!先生の話をちゃんと聞きなさい!」と励ましていた、患者さんの奥さんは、病室には入ることがなかなかできず、「できない、私はまだできない、心の準備が…だってこんなの本当のことじゃない、私に起きたことじゃない」と、泣き崩れてしまい、その奥さんを支えて「大丈夫だよ、大丈夫だよ」と抱きしめているうちに、私もついボロボロと。
患者さんが心臓発作を起こした時にも、ずっとそばで声をかけ続けていた奥さん。本当はその日が退院予定で、でも血液検査の結果退院が延期になって、がっかりしていた患者さんと奥さん。ようやく自分を取り戻して病室に入ると、まっすぐに患者さんのところへいって「min skat」と言ってキスをした奥さん。
なんというか、こんなにストレートな悲しみと愛情の表現をみたことがなかったので、すごく心を打たれました。
こういった急変、蘇生、死という一連の過程を、フルコースで体験したことはあなかったけど、でも人の死に関してはそれなりに見てきたので、それほどショックというものはなかったのですが、色んなスタッフから「大丈夫?あなたはやるべきことをちゃんとやったし、彼も元々心臓がとても悪い人だったから…自分を責めないでね」と励ましてもらい、さらには婦長からも今朝、「その後心の方はどう?あれはすごく衝撃的な家族のリアクションだったし、大丈夫かなと思って」と気遣って電話をくれたのでした。なんでも、「私も今まであんなの見たことが無い」ほど激しいリアクションだったそうで…。
私も自分の気持ちをどうまとめて説明していいのかわからないので、「ええ、まあ」とか「はあ」とか言ってるだけなので、たぶんみんな私が自信喪失?ショック状態?と心配したのかも…。大丈夫なのに…。
実は最近、自分のこの急変に弱いというウィークポイントを叩き直すため、今のまったり病棟(煩雑な忙しさはあるけど)ではなく、もっと他の、たとえばERとかICUに転職しようかなーと思ったりしています。そんなところへ行ってしまって「しまった!つらい!難しい!」となるのは目に見えてますが、でもまあ、キャリアアップ、弱点克服のための修行!も必要だなーと思う、今日この頃です。