平方録

待つこと実に40日!

円覚寺での坐禅の帰り道、海岸べりを回って帰る途中に試しに立ち寄った坂ノ下のシラス直売所で今年初めての生シラスを手に入れた。

どうやら偶然と幸運がたまたま重なったようだ。
最初、店内をのぞいたらシラスの姿も形も見えない。
ご丁寧に「生シラス売り切れました」という看板がガラス戸越しに見えるように掲げられている。
駄目だこりゃあ、と諦めて帰りかけたところ、次々に人が訪れる。
気になって戻り、狭い店のことゆえ、接客している人は女性1人だけ、待つとはなしに店の前にいて様子をうかがっていたら、釜揚げシラスを買いに来て「釜揚げはないんですよぉ~」と断られた人の後に続いてやってきた野球帽をかぶった馴染み客が「生あるの? じゃあ3つとアカモク」と言っているのが聞こえた。

で、その野球帽が帰った後、おそるおそる「生、ほしいんですけど」と聞いたら「釜揚げはありません」という答え。
何たる頓珍漢!
「いや、生ありませんか?」と敢えて聞いたら、「いくつですか?」という。
「ひとつ」と聞いた女性が店の奥へ行ったら、何やら怒られている。
聞き耳を立てると「○○さんが買っていったのを見てるんだからしょうがないじゃないの」とかなんとか言っている。
ははぁ~、獲れる量が少ないからお馴染みさんにしか売らないんだ。一般には「ない」で通しているらしい。
やり取りの一部始終を見られたと思った女性は、しらを切りとおせなかったのだ。良い人に巡り合えたものだ。

こうして、初モノの生シラスを手に入れたのである。正直な浜の女に感謝!

思いがけない展開にルンルン気分でペダルをこいで、山坂を突っ切って帰るのは嫌だから平坦な腰越を回って帰ったら、最近よく顔を出す海鮮丼しか食べさせてくれない店の前に行列が出来ている。
電車通りに面したガラス戸には「生シラスあります」と書かれた大きな紙が貼ってある。
どうやら、海鮮丼の具の仲間に加わり始めたらしい。
大々的に「大漁だ、大漁だ」とは言えないけれど、少しずつとはいえ網に入り始めたようである。

もちろん夕食にシラス様、生シラス様、生シラス大明神様にご登場願いました。
3月11日に解禁になって以来、待つこと実に40日!
いやはや、もう待ち焦がれてしまい、身も心もチリジリでございます、なんてね。

1センチから1・5センチの小さな魚体がまるで金属のように光り輝いていて、おまけにあんな小さい体なのに、くっきりとした目がこれまた輝いている。
何という、愛おしさ!
神妙に口に運ぶと、ややねっとりと、それでも口中ではバラけてさらさらと泳ぐように喉を通過して行き…
表現が支離滅裂になってしまうところが生シラスの魅力、いや魔力である。
思えば大みそかから禁漁に入って4カ月近く。蘇った生シラスの味は甘く、しかも上品。
このために手に入れてきた地元湘南の蔵の酒を冷やしておいて、一緒に喉を通過させる幸せ。海辺の町の至福のひと時である。

温めたご飯の上にもシラスを乗せて、すりおろしたショウガと大葉の代わりのカイワレをちぎって乗せ、さらに玉子の黄身だけと醤油を1、2滴垂らして食べると、これまた別の逸品となって炊き立てのご飯ならどんぶり一杯は行けてしまうほどかという美味しさである。

う~む、待てば海路の日和あり、待てばシラスの群れ来たる。


 待ち焦がれ正直者よ生シラス  

 日和あり待てばシラスの群れ来たる

 重なりてくっつき合いしシラスかな  





お目々ぱっちり、初モノの生シラス


濃さを増してゆく円覚寺境内の新緑
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