一体何を考えてるんだ、日本のテレビ局は!
開催中のラグビーW杯のウルグアイ—フィジー戦を見ようと新聞のテレビ欄を探したけれど、どこにも見当たらなかった。
今大会は国営放送と日本テレビが放映権を持っているらしく、これまでのところこの2局しか試合の中継をしていない。それはそれでいいのだが、どちらかが放映してくれると信じ切っていただけにがっかりした。
ウルグアイとフィジーの一戦が飛びぬけた好カードというわけではない。1次リーグのごくありふれた試合の一つと言ってよい。
その生中継を見たいと思ったのは試合会場が特別だからである。
あの東日本大震災で津波被害に遭って大きな被害を出した太平洋沿岸の各市町村の中から、被災地にW杯を呼んで復興の証・一里塚にしたい願った釜石市が誘致に名乗りを上げ、それが実現したからだった。
釜石と言えば日本選手権で前人未到の7連覇を成し遂げた新日鉄釜石が拠点とした街である。
そこにW 杯誘致が実現したことは釜石市のみならず、復興の途上にある東北の被災地全体にとって希望の星なのだ。
日本は緒戦でロシアに快勝した。優勝候補同士のニュージーランドー南アフリカ戦はすごい試合だったし、フランス―アルゼンチン戦も手に汗握った好勝負だった。
まだ1次リーグなのだが、えりすぐりのチーム同士の戦いは実に見応えがある。
そんな中でのウルグアイ—フィジー戦は試合の中身もさることながら、復興スタジアムに試合を見に来る観客の様子や試合会場の雰囲気をライブで知りたいと思ったからに他ならない。
ちょうど1年前の秋、友人と一緒に八戸から松島まで、被災地をを含めた太平洋沿岸を車で旅行した際、ここ釜石市の鵜住居(うのすまい)に完成したばかりのスタジアムも見学していたのだ。
横浜国際競技場や調布のスタジアムから比べれば、エッ! と感じるほど、とてつもなくちっぽけなスタジアムだった。
しかし、寄せられた期待はそれらをはるかに上回るスケールといってよい。
奇しき縁とでもいうのか、わが家と道路を挟んで真向かいの家に3、4年前に越して来た若い夫婦の亭主は、スタジアムが建てられたところにあって津波で流された小・中学校の卒業生だったのだ。
そう言う意味でも鵜住居は身近な存在でもあった。
バックスタンドに上がって背後を振り向いても、見える範囲に町らしき賑わいどころか建物はほとんど見当たらず、家が建てられていたであろう跡地が更地のまま広がっているだけだった。
1年経った今、少しは建物も並び始めたのだろうか。
国営放送が7時のニュースでちょこっとニュースとして試合会場の様子をごく簡単に放送したが、観客も選手も特別な思いだったことが、かすかだが伝わってきただけに、ダイレクトな中継でそれを感じたかった。
この試合を中継することが日本国民にとって、被災地にとって単なるW杯の試合を見るのとは一味違った意味あいがあるってことは容易にわかりそうなものだが…
東京の連中は政治家も含めてみんな被災地のことを忘れてしまっているんじゃないのか。
原発汚染水の処理も出来ずに、なにが「アンダーコントロール!」だ。
テレビ局までもがそういう無責任極まる風潮に右へ倣えしてしまっている。
挙句に次はオリンピックだと。
しかもいうに事欠いて「復興五輪」だなんてうそぶいているんだろ。でたらめもいい加減にしないとまた世界中の笑いものになりかねない。
もう一つ、テレビ局に腹を立てている。
なんだよ! 新米の環境大臣がニューヨークで環境問題はセクシーだって発言したらしいけど、ワイドショーは朝から夕方まで、それ一色じゃないか。
バッカじゃないの。
あのスウェーデンの少女トゥンベリさんが怒りの表情で行った演説はそっちのけで、「セクシー発言」に飛びついて他に目がいかなくなってしまっている体たらく。
トゥンベリさんの怒りの矛先が向けられた国々の中で日本はと言えば、彼女の怒りを鎮めるどころかさらに怒りを買いそうな温暖化防止対策しか打ち出せていない。
だから呆れた国連事務総長によって登壇して演説する機会も与えられなかったくらい、世界の笑いものになっている。
男妾のソーリダイジンが財界の言いなりになって規制強化に及び腰なのが最大の理由だが、その日本の後ろ向きの姿勢は問題にしないでセクシーセクシーの一一本槍なのが情けない。
もっと目を見開いて問題の本質に迫ってもらいたいと願うのは、まだ字の読めない幼児に向かってマルクス全集を読破してレポートにまとめろというようなものか?
そんなハチャメチャな要求じゃないだろうに。
そんな簡単なことすらできないというんであれば、枕を並べて免許を返上しちまえ!
恥ずかしくないのかい。
見出し写真はとてもコンパクトなメーンスタンド(去年10月撮影)
スタジアムがあった場所には小学校と中学校のほか多くの住宅があったそうだが、津波で流されてしまったそうだ
この土地の犠牲者もまた少なくない その跡地でラグビーW 杯の試合が行われた
バックスタンド最上部から海の方を眺める
スタジアムにはトイレが少ないため、仮設トイレが設置されていた
奥に見える水門が以前からのものか、新しく作られたものかは確認しなかった