平方録

懐かしの4人組との再会

ほぼ15年にわたって、たった2人が労働組合の委員長と書記長をたらいまわしにして独占し続け、やりたいようにストをやり、ストを怖がる経営陣の弱腰につけこんで無理難題の要求を繰り返すという、信じられない状況が続いていた。

その信じられない組合との交渉の責任者に就いたのが7年前。
「北風と太陽」のヒソミに倣い、何とか事態を打開しようと、主に太陽作戦に徹してあれこれやっては見たが、ストこそ打たれないところまでは行ったものの、抜本的な解決にはこの組合幹部2人を何とか無役に落とし込んで力をそがなくてはどうにもならない、という思いに達する。
そこでいつも無風選挙だった執行部選びに対抗馬を立てるべく画策を始めたのである。

中堅どころで、こいつならと見込んだ4人に白羽の矢を立て、個別に口説き落としにかかった。
尻込みされて説得は難航するかなと思いきや、4人とも二つ返事で引き受けてくれたのである。
曰く「随分とおかしなやり方をしているなぁ、と思ってました」「自分たちの考え方と、ちょっとずれているんですよね」「無駄なストをやって、社内はともかく、外部に迷惑をかけてしまっているんですよね」などと、口々に疑問や不満を口にし、4人とも「いいですよ。やります」とこちらが拍子抜けするくらいだった。

こちらの目算としては、委員長と書記長に対抗馬を立てて選挙に持ち込んで当選させ、別の2人もサポート役として4役を独占してしまおうという魂胆である。
ところが、立候補をさせてみると委員長候補のもとに件の委員長がやってきて「引き続いて俺が委員長をやるから、君は副委員長でいいだろう」と持ちかけられ、立候補させた委員長候補が何と、申し入れを受け入れてしまったのにはびっくり仰天させられたが、後の祭である。
書記長だった男は書記長には立候補せず、対抗馬のいない執行委員に立候補するという“いなし”に遭ってしまう。

何のことはない、選挙管理委員が、本来、立候補締め切りまでは非公開のはずの立候補者の顔ぶれを2人に漏らしていたのである。
それで対抗馬の存在を知って、「降りろ」と談合を持ちかけてきたというのが真相。そこまで“毒”が回っていたのである。
呆れたものだが、それでも4人はめげない。「大丈夫ですよ。変にクーデター的なことをしてしこりを残すよりも、4人で執行部をリードするように徐々にやって行きますから」と涼しい顔をしている。
そんなにうまくいくかい、と半ばがっかりしたのも事実である。

それから2年が過ぎて、なるほど、独占2人組の力はすっかり失せて、委員長とは名ばかりの存在となり、3年目にして執行部から姿を消したのである。
時間はかかったが4人組の完全勝利である。
しかも「これまでのことで、絶対に2人に報復人事はしないと約束してください」と迫られるありさまである。
何という心根の4人かと思ったが、“無血開城”を成功させたわけだから、これは受け入れざるを得ない。
ごく普通の当たり障りのない人事を行ったのである。

こうして月日は流れ、現在は労働組合にも新しい風が吹き込んできて、執行部に入って仲間のために汗をかきたいという若手社員も出てきたんだそうな。
執行部から追い落とした2人組もきちんと仕事に精を出しているそうで、めでたしめでたし、なのである。
「ところで、会社を辞めてどうしているんですか」と4人組から声がかかり、昨晩は思い出話と今後の業界の行く末に花が咲き、終電間際まで痛飲してしまった。

話の端々で聞く現状分析もしっかりしていて、この4人組が幹部に昇進して真剣になってリードして行ってくれれば、この先は捨てたもんでもなさそうである。



何という色合いであることか…
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