平方録

花盛りの北鎌倉

午前9時半チョイ前、わが家にしては格段に速い時間に家を出て明月院へ行ってみた。
早く家を出たのは、観光客が殺到する前に境内に入り、混雑に巻き込まれることなくアジサイを鑑賞しようという魂胆からである。
土日は避けたいと思っていて、月曜日ならと思ったのである。しかし、間の悪いことに朝のNHKのニュースが「2500株が見頃だ」と伝えたものだから、少々焦った。
それゆえ、妻を急かせたのである。


アジサイ寺に到着したのは10時チョイ過ぎだったが、北鎌倉駅から明月院に向かう道筋には案の定、既にぞろぞろと人の列が続いていて、わけてもすれ違う人も結構あったから、既に見終わって帰って行く人たちであろう。
相当早起きして来たに違いない。念の行ったことである。

秋の紅葉の時期には何度か訪れているが、アジサイのハイシーズンに明月院を訪れるのは何十年かぶりである。
一度雨のしとしと降る日に、ちょっとは空いているだろうと思って出掛けて行ってみたところ、傘をさした大勢の人波にアジサイを鑑賞するどころではなく、ただただ自由も効かず、トコロテン状態で流れに身を任せるしかなく、すっかり嫌気して以来、近づくことさえしなかったのである。

かすかな記憶では青や紫、赤紫のアジサイが混じりあって咲いていたように思うが、今回目に入ってきたのはほとんど青一色と言ってよい世界である。
寺の方でもいろいろ研究したりしてきたのだろう。緑の葉と薄い青の比較的小ぶりの、風にゆらゆら揺れる花は涼しげでもあり、なかなか繊細な感じもして、さすがに禅寺だけのことはある。
95%がヒメアジサイと言う種類だそうで、どの株も良く育っていて、背丈よりやや高いところまで大きく茂り、アジサイのトンネルを行くような気分でもあった。
さすがにまだ人の流れもスムースで、早めに出掛けてきた甲斐はあったというものである。

境内の奥まったところには別料金ながら、谷戸の奥を菖蒲田にしていて、花菖蒲がやはり真っ盛りにあでやかさを競っている。
ここはここで空間を感じさせ、菖蒲田を囲むモミジを中心にした若葉が瑞々しく、涼しい風が吹きわたっているのである。
木立の奥まった、水の湧きだすところに佇んで眺めていたら、4人連れの中年女性から「写真撮ってください」と頼まれたので応じると、日本語が不自由である。
差し出されたスマートフォンのボタンにはハングルが書かれていたので合点が行ったが、韓国からの観光客であった。
センスの良い服装をしていて、物腰も思いのほか洗練されていたので気付かなかった。「あなたも撮りましょうか」と英語で言われ、断ったが、イメージとはちょっとかけ離れた上品な雰囲気の漂うグループだった。

込み合いの度を深める境内を後にして、横須賀線の踏切を渡って反対側の東慶寺にも久しぶりに行ってみた。
月曜日の午前中とは言いながら、山門に続く階段には拝観料を払う長蛇の列が出来ている。しばらく行列に身を任せ、ようやく門に近づいたとき、日傘をたたむ老境に差し掛かろうという女性がすっと近づいてきて脇に立った。
じろりと一瞥してやったためか、さすがに目の前には入らなかったが、すぐ後ろ、おとなしい妻の前にすっと身体を入れて横入りして何食わぬ顔である。
こういう輩は大嫌いで、唾棄すべき存在である。
しかも、そう若くもない娘を連れていて、何も咎めないのである。この親にしてこの子あり。目の前に入りこんだのなら注意もするが、汚らわしいので見過ごしたが、極めて不愉快な思いをした。
上品な韓国夫人と品性下劣な日本人母娘!

門前で列を作っている時に気付いたのだが、「『岩がらみ』特別公開中。6月1日から15日」という小さな看板が掲げられている。
はてな、と思ったが、仏像にしては変な名前である。
“特別”に魅かれて20分ほども待ってみた。
本堂の裏が目的の特別公開の場所であり、本堂背後の岩壁に一面、びっしりと白い花が満開である。
今を盛りのガクアジサイのようでもあり、違うと言われればそれまでの、見慣れない花である。

植物図鑑によると「イワガラミ」というユキノシタ科イワガラミ属の植物で、北海道から本州、四国、九州、朝鮮の山地に分布し、岩や木に絡みついて高所に登る植物だそうである。
初めて見た。それも見事な群落である。
たった15日間しか公開されないのだから、しかも平日の公開時間は午前午後ともに1時間ずつのみ。土日に至っては午前9時から1時間のみである。
稀有とも言えるチャンスに巡り会えたものである。








明月院境内の花と苔



東慶寺本堂裏の岸壁に張り付くイワガラミの群落
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