大体は黒色なのだが、中には濁ったオレンジ色をしているものも混じっていて目立つのである。
こういう普段見かけない粒粒が落ちている時は決まって頭上に何かいるんである。
頭隠して尻隠さず。その落とし物であることが多いのだ。
頭上にはザイフリボクとかジューンベリーと呼ばれ、春のソメイヨシノが散ると後を継いだように白い小花を枝一杯に咲かせ、花が散ると赤くて甘い実をつける木が葉を茂らせている。
恐る恐る見上げてみると低く垂れた枝の、ボクの頭とすれすれのところに5cmほどもある黒い毛虫が取り付いているのが見えた。
ボクは何が嫌いかって、毛虫とムカデ、ゲジゲジの類を見るとそのおぞましさに身の毛がよだつのである。
大っ嫌いっ! なのだ。
あれだけ粒粒が落ちているのだ、1匹ってことはないだろう。当然、だれだってそう思う。
だからまた恐る恐る頭上に目を凝らすのである。するとこれまた至極当然の結果として「大量の」黒い毛虫を発見するのである。
この段に至るとボクは卒倒するかと思いきや、逆に腹が座りヨォ~シッ! という気分になるんである。
と言ったって所詮はおぞましくて大っ嫌いで見るのも嫌な存在である。
第一、5cmの毛虫がもぞもぞと動く姿はボクには50cmにも見えるのだ。
物置から急いで取ってきたオルトラン入りの殺虫剤を噴きかけてはみるのだが、苦しがって落下してくる奴が万が一にもボクの上に落ちないようにへっぴり腰なのだ。
加えて殺虫剤は手の届く範囲しか撒けないし、枝と枝の間に手を伸ばして撒こうとすればボクの見えない葉裏にいる毛虫に手が触れるのではないかと、それが恐ろしくて手を伸ばすどころではないのだ。
つくづく情けないとは思うが、嫌いなものは嫌いなのである。生理的な問題でもあるのだ。
ところでヤツは何者でどこからやってきてどこに向かおうとしているのか。それが問題だ!
で、ネットで調べてみると……。 実は毛虫がズラーッと並んでいる写真を見るだけで画面を手繰る手がすくむのだが、毛虫が映っていないところを選んで触りつつ調べた結果は「モンクロシャチホコ」らしい。
サクラやウメなどバラ科の植物を好むとあり、ジューンベリーもバラ科だから間違いはなさそうである。
サクラの街路樹では葉が食べつくされてしまうこともあるようで、わが家のジューンベリーも道路側の枝はすっかり丸坊主にされていた。
ただ毒はないので駆除の対象にはなっていないらしい。
ネットに出ていた国立市の言い分によれば、人間には無害であって、むしろ農薬を散布して駆除する方がよっぽど人体への悪影響が考えられるから、と言うことのようである。
それはそれ、ボクは断固駆除!である。
ところで、世の中に物好きはあまた存在するのは知っているが、このモンクロシャチホコが「美味である」なんてネットにアップしている輩もいて、調理方法や味について詳細にレポートしているのを見るとウケ狙いだとはわかっていてもボクは軽蔑のマナコを向けるんである。
キミは大飢饉がやってきても生き抜けるだろうよ。
体長5cmほどのモンクロシャチホコ。スマホを近づけるのもおぞましいのだ
逆光で見にくいのだが、ここには6匹も映っているのだ
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事