平方録

初冬の明月院、閻魔堂、そして不思議な縁

久しぶりに北鎌倉の明月院に足を運ぶ。
アジサイ寺で知られるが、モミジもそこそこに美しい。
鎌倉は今、紅葉のピークを迎えていて、この寺の紅葉もきれいに色づいている。

方丈の裏手に庭園が広がっているが、丸窓が切られてあって、この丸窓が実に絵になるのである。
丸窓を覗ける位置の前には数十人が列を作っていて、写真撮影の順番をじっと待っている。
1人か2人しかゆっくり覗けないくらいにしか戸が開いていないから、こうして順番を待つのが、結局は効率的なのである。
日本人は秩序を保つのが得意である。自分の番が回ってくるまでおとなしく待つことに抵抗感を示さない。苦にしないのである。
押し合いへしあいして挙句にヘトヘトになる近隣の某国の国民とは全く違うのである。賢いというべきか。

かつては丸窓の奥の庭園はきれいに整備されていたらしく、寺に残る南北朝時代の「明月院絵図」には見事な庭園が描かれている。今復元を進めていて、谷戸の奥まで、だいぶ輪郭が甦ってきているようである。菖蒲田も復元されていて、おそらく5月の菖蒲の花の咲くころはアジサイとは違った美しい光景が広がるはずである。

北鎌倉の谷戸の奥に建てられているこの寺は、観光客さえ少なければ静寂な佇まいを堪能できる。
烈日が射抜く夏と違って、高度を下げた太陽から届く光に包まれる初冬の境内は如何にもはかなげである。 
本来の、静かで落ち着いた雰囲気を取り戻すのもこの季節なのである。

数分歩いたところ、建長寺の前にあるのが閻魔堂として知られる円応寺。
小さなお寺だが、運慶作と伝えられる閻魔大王像と冥界の十王像が本堂にずらりと並んでいて迫力十分である。
閻魔大王像はくわっと大きな目を見開き、口も左右に張り裂けそうにひきつって、今にも大音声で一喝されて縮み上がってしまいそうだが、「あの閻魔さま、私たちを励ましているようなお顔」という見方もある。
一つひとつの十王像の表情も豊かで、見飽きることがない。
一風変わった魅力的な寺である。

本堂についたら、大勢の人たちがいて「こんな小さな寺に…」と思ったのだが、一人のお坊さんに目が止まった。
前日、十二所の五大堂明王院で話しかけてくれた若い和尚さんである。
「僧侶と巡る鎌倉十三仏」という名のツアー客を引き連れて案内しているところであった。
お坊さんもこちらに気づいて「ご縁がありますねえ」とニコニコしていたが、さらにもう一度驚くことになる。

数時間後、鎌倉駅から江ノ電に乗ろうとして込みあったホームの列の尻に並んだところ、目の前にまた、あのお坊さんが立っている。
ツアー客を引き連れ極楽寺に向かう途中だという。
「またお会いしましたね。よくお歩きになっていますねぇ」と目を丸くしていた。
こんなこともあるのである。



明月院の丸窓の奥には庭園が広がっている


初冬の柔らかい光に包まれる明月院境内



真っ赤に燃える丸窓の奥の庭園のモミジ


整備中の庭園の佇まい


閻魔堂で知られる円応寺。境内は撮影禁止
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日記」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事