白い花弁の先がピンクに染まり、真中で蓮口になるめしべとおしべが黄色く輝いている。遠目にも目立つ明るくて華やかな花。周囲の濃い緑の葉が花をいっそう引き立てている。見事なものである。
山門をくぐり本堂の裏手に回ると、ここには裏山を借景にして池がある。ピンクや黄色のスイレンの花が盛りを迎えていた。お寺が椅子を置いていてくれるので座ってしばし眺める。旧盆前だし、時間が早いので境内に人影はない。静かである。時折、パシャっと魚が跳ねる音がする。
こういう時を過ごすのは、今の境遇に身を置くようになって初めて実現した。一言で表現すれば「贅沢」。さらに妄想すれば、今この瞬間こそ蓮の葉の上で静かに寝そべり自分ではその姿が見えないだけ、に違いない。夏の盛りの朝のひとときである。
笛田山仏行寺は日蓮宗の寺で仏性院日秀という坊さんが1495年(明応4年)に創建したらしい。足利義高が将軍の時代で、歴史学会が作成した「日本史年表」によると、この年に北条早雲が小田原城を乗っ取っている。また、8月には鎌倉を地震による津波が襲い「溺死者多数」とある。古いことは古いが鎌倉の寺としては古参とは言い難い。わが家からは歩いて5、6分のところにある。寺の裏山にはツツジが植えられ、初夏は見事。2階の窓から見えるので「遠花見」ができる。
この裏山には墓地があり、頂には梶原源太景季の右腕を埋めたといわれる「源太塚」がある。頼朝の信頼が厚かった御家人・梶原景時の嫡男である。景時は義経を追い落とした張本人としても知られ、のちに息子の景季とともに鎌倉を追放され、討ち死にする。義経追い落としと聞くと、判官贔屓の身には複雑である。しかし、歴史に「if」がないのもまたしかり。
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蓮の花
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睡蓮の池