信州で暮らすかつての業界仲間の1人からで、知り合いが箱根の強羅でホテルを経営しているのだが、あれ以来、客足はぱたりと止まってしまい、今や死活問題にまでなっている、という。
あれ以来とは、大涌谷の噴火警戒レベルが先月のゴールデンウイーク終盤の6日に、火口周辺の立ち入りを規制するレベル2に引き上げられた事を指す。
以来ひと月。箱根は外国人観光客を含めて年間2000万人もの人が観光に訪れる首都圏屈指の人気スポットなのだが、客足はピタリと止まってしまっているのだという。
警戒レベルが引き上げられて間もない5月10日に町役場が調べた観光動向調査では、箱根を訪れる観光客の人数は、ほぼ4分の1減の76%にまで落ち込んだらしい。
それに追い打ちをかけるように、口永良部島が噴火して以降はより一層客足が遠のいた感じだという。
口永良部島は幸いなことに人的被害は一切なかったが、全島民がこぞって隣の屋久島に避難する様は、傍目に見てもただ事ではない。
そればかりではなく、人びとの未だ真新しい記憶の片隅に、昨年の木曽の御嶽山の大噴火で大勢の犠牲者を出したすさまじい噴煙が立ち上る残像が鮮明に残っているのである。
大涌谷の警戒レベルが引き上げられた、と連日テレビで真っ白な噴気が勢いよく立ち上るさまを見せつけられれば、誰でも怖気づく。噴火が想定されているわけではないが、決して気持ちの良いものではない。
規制されているのは大涌谷の火口周辺だけで、箱根全体でみれば0・3%の面積。その他の99・7%は何も心配することはないと気象庁も、町長も口をそろえるのだが、人間の心理と言うのは恐ろしいもので、箱根全体が危険だというイメージになってしまっているようである。
おかげで道路はガラガラで渋滞などまったく見られなくなったらしい。
町税収入の10%を占める7億円の入湯税収入に影響するのも必至で、顔見知りの町長の渋面が目に浮かぶが、このまま続くのであれば箱根全山への影響は甚大なものになりそうである。
ひょんなところから飛び込んだSOSには、笑えぬ深刻な内容も綴られていた。
いわく、客足が遠のいてしまった強羅の観光協会が一計を案じて、新聞・テレビ各社に集まってもらって「窮状を訴える記者会見」を開こうと企画したんだそうな。しかし、右から左へと簡単にはいかず、もたついているのを見かねた女性スタッフが観光協会のブログに「大丈夫で~す。泊まりに来てくださ~い」という書き込みをした途端、「何を考えてるんだ。自分たちのことしか考えないのか」「安全はどうした」などなど、罵詈雑言も含めて批判が殺到して“炎上”してしまったんだそうである。
それを傍目で見ていた同じ強羅地区の旅館組合の幹部たちがすっかり怖気づいてしまい、「しばらくじっと様子を見守るしかない。苦しいけれども仕方ない」と、記者会見の計画も立ち消えになってしまう有様だという。
そういえば、地元の新聞もテレビも冷たいもので、箱根がそんな窮状に陥っているなどと言う報道は全く見られない。
気象庁の見解がたまに片隅に小さく載る程度である。
箱根は地元神奈川の大切な顔のひとつである。親身になって心配しても良さそうなものなのに。
現場をちょっとでも歩きさえすれば耳に入ってくるものを、歩きもしないのだから窮状もドタバタ騒ぎも耳に届くわけもない。
加えて最近はとみに想像力も欠如してしまっているようで、歩かないならせめて想像くらいして見ればよいものを、それすら出来なくなっているのだから、何をかいわんや、なのである。
渋滞が無いらしいから、大涌谷を遠望できる芦ノ湖スカイラインでも走り抜けてくるか。
雨にしっとりと濡れるわが家のヤマボウシ
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