字面から受ける清新で浮き立つような語感と、何がしか抱かせる期待感のようなものがこの熟語には詰まっているように感じる。
立春から春分までの間に吹く、その年初めての南寄りの秒速8メートル以上の強い風、と気象庁は定義している。
元々紀伊半島から西の海辺で「ハルイチ」と呼んでいたようだが、安政6年(1859年)2月13日、長崎県壱岐郡郷ノ浦の漁師が出漁中に強風にあおられ漁船が相次いで転覆。死者53人を出したそうだ。
それ以降、この強い南風を「春一」「春一番」と呼ぶようになったと、ものの本は紹介している。
さらに民俗学者の宮本常一が研究のため郷ノ浦を訪れてこの語を採集、ちょうど百年後の1959年に俳句歳時記で紹介したのがきっかけで新聞に載り、広まっていったようである。
待ち焦がれる春の使者、象徴のイメージからはかけ離れた悲劇が隠されていた。
とはいえ、芭蕉や蕪村の句も見てみたかったものである。
昨日の横浜の最高気温は20.7度にまで達した。
夜半に強い風の音で目を覚ました。寝ていて気付くような強さなのだから半端ではないはずである。
孟浩然の「春暁」。春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少
まさに夜来風雨声だったのである。
朝起きてみると風は止んでいたが、南に面した雨戸やガラス窓はひさし近くまでびしょ濡れで、雨が横殴りに叩きつけたことをうかがわせていた。
てっきり春一番が吹いたのだろうと思った。
しかし、東京では吹かなかったようである。相模湾沿いの一部にしか吹かなかったのだろう。気象庁は認定しなかった。
確かに東京で観測される春一番はまだ吹いていない。それだけのことだろう。
吹いたところでは吹いたのである。
よろしい。ここに宣言しようではないか。「鎌倉では2月23日に『春一番』が吹いた!」と。
何か文句あっか ?
この春一番に乗って、けして浮き浮きしたわけではないけれど、税務署まで出かけて確定申告を済ませてきた。
あの面倒なパソコン画面を使った入力作業には時間がかかってしまったが、一人でこなし、数万円の還付があることも確かめて、少しばかり軽やかな気持ちになったのである。
どこかの大臣と違って、善良な日本国民の一日でありました。
善良な国民もそうでない国民もみな等しくその務めを負う
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