おまけに風がないから、日が高く昇るに従って空気中の水蒸気が温められ、富士山などは春霞がかかったように見える。一足飛びに春が来たかのような雰囲気である。
あまりの好天に妻を誘い、大仏切通しを通って長谷へ抜ける。
切通しに差し掛かろうとすると、たくさんの人影があって元気な声が岩壁にこだましている。
歩を進めて行くと男女7、8人の中学生のグループである。
「どこから来たの」と聞くと「足立区の西原」だという。
「銭洗弁財天に行きたいんですけど…」という。
どうやら大仏を見てハイキングコース経由で銭洗いに向かおうとして道に迷ったらしい。
確かに分岐点があるが、大きくて分かりやすい案内板と標識が出ているのに…
ちょっと遠回りになるが、県道経由の道を教えてあげた。
一緒の女の子たちは男の子に向かって文句を言っている。誰も標識を確かめなかったのかい?
付和雷同は危険だよ。悪い大人にもだまされないようにしなくちゃ。
それにつけても道に迷う年頃なんである。
迷うのは特権のようなもんだ。大いに迷いなさい。迷って大きく成りなさい。んじゃな。
光則寺と長谷寺の花を巡ってから坂の下の浜辺に出た。
波もなく風もなく、陽気に誘われたんだろう。中学生が学生服を脱ぎ棄ててパンツ一丁になってはしゃいでいる。
水に入ったんだろう。些か気が早いと思うが気持ちは分かる。
女生徒の中にもスカートをたくしあげて太ももを露わにして水際ではねている子もいる。
浜辺ではワカメ干しが始まっていた。
鎌倉の材木座から坂の下にかけての浜辺の早春の風物詩である。
養殖のワカメのようだが、浜で釜ゆでにして鮮やかな緑色になったものを洗濯バサミに挟んで吊るしている。
鎌倉ではたいがいの家にあって、長持ちするし、重宝している。
地元で採れるものには特別の味わいがあるものである。
間違いなく春の足音が聞こえてきている。足音は確かになってきた。
帰りがけにも道を尋ねられた。
極楽寺の稲村ヶ崎小学校の脇。軽乗用車で来て迷ったという。行く先は「大仏に抜ける細道の途中の家」というだけで、住所も分からないというし、それでは教えようもない。小学校のガードマンが近づいてきたのでバトンタッチする。
年のころは古希を迎えたくらいか。
不案内なところを訪ねるときは住所とか、電話番号とか、携えてくるもんですよ。
もう迷っている年じゃぁないだろうに…
坂の下の浜辺では早くもワカメ干しが始まっている
春霞がたなびいているかのように、遠くは霞んで見える。
長谷寺のフクジュソウ
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