平方録

十三湖のしじみラーメン

丼から立ち上る湯気を嗅ぐ鼻孔、そして汁を一口味わう舌にしじみのエキスが広がる。本当なんだよ。
汁は透き通っている。麺は縮れ気味。本物のしじみも入っている。しかも殻付きだよ。
多くのラーメンが汁の表面に脂の模様を描き出すが、しじみラーメンにはそんな模様は不要のようだ。脂ぎっていないので、味はさわやかでさっぱりしている。
8月2日の昼下がり、我が家の昼食に登場したのは、友人で山形に暮らすS夫妻からいただいた青森土産。青森県十三湖産の大和しじみを使った「青森しじみラーメン」。
かみさんは一口すするなり「お~いしい!」と一声。小生は鼻孔と舌、そして目で感じながら汁まで全部飲みほしました。いや~、久しぶりにおいしいラーメンにありつけました。「ごちそうさまでした」。
ところで十三湖にはまだ行ったことがない。でも魅かれている。いつか訪れてみたい。確か「十三湊」と呼ばれ、14世紀ぐらいの中世には有数の貿易港として栄えたらしい。それはそれで魅力的だが、それより以前、縄文時代にもここに縄文人が住みついていた。多分しじみも食料にしていたのだと思う。自然環境は穏やかなものとはほど遠かったと思われる。特に冬。どんな暮らしをしていたのか。21世紀の今、その縄文人の痕跡は今の人々に引き継がれているのか、はたまたかけらもないのか。
大陸から渡ってきた弥生人に追いやられた縄文人は、日本の歴史から葬り去られている。十三湖のみならず、東北には縄文人に関する何がしか重要な痕跡、といっても形としてではなく、生活様式の中とか、人々の心の持ちようとか、深層から生まれてくる立ち居振る舞いとか、もしかして東北人が自覚していないけれど、何か残されているような気がしてならない。誰かがつまびらかにしてくれるのを待つだけだが…
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