鎌倉や江ノ島界隈でシラス料理を掲げて営業している店への影響は深刻なようで、特に海に近いところでしか食べられない生シラスのメニューの維持には静岡や茨城のシラスを取り寄せてようやく細々と続けているようなのだ。
ま、商売の人はともかく、シラス好きにとっては禁漁期をのぞけばいつでも手に入っていた鮮度抜群の生シラスが手に入らない現実はとても寂しい。
ガラスの小皿に緑色の大葉を敷き、その上に生シラスの透きとおる魚体を山盛りにして、日本酒を口に含みながら食べるシラスの味わいは海沿いの住人の特権のようなもので、誠に美味しく、喜ぶべき食材なのである。
所々で行われている観光地曳網にも普段はよくかかり、喜んでぱくつく客に向かって漁師たちが「オイオイ、そんなにたくさん食べると男は明日の朝寝返りを打てなくなっちゃうぞ」などと言葉を投げかけて、含み笑いをするくらいなのだ。
“海のミルク”とも呼ばれていて、栄養もたっぷりなのである。
解禁日直後はまだ春先で水温が低いため、そもそも漁獲が少ないのだが、例年、5月の連休頃になって水温が上がってくるとたくさん獲れるようになるのが相場だった。
それが5月を過ぎて6月はやや盛り返したものの、7月に入って夏を迎えると再び不良となって秋を迎えているのだから、やはり異常気象の影響は海の中にも及んでいるというべきだろう。
県水産試技術センターの調査ではマイワシやカタクチイワシの成魚は例年並みの漁獲があるそうだから、あながち稚魚がいない、というわけでもないようである。
原因は黒潮の蛇行らしい。9月25日付の関東・東海海況速報図によると、通常だと相模湾に近寄って流れる黒潮は現在八丈島のはるか南の青ヶ島のさらに南側を流れていて、大島近辺の水温は24度と低い。黒潮そのものの温度は27度以上だから、3度も低いのである。
このために稚魚が沿岸に近寄ってこれないらしい。
隣の静岡県もシラスの漁獲が多い地域として知られているが、予定していたシラス祭りが開催できなくなったほどの不漁だそうだ。
海況図を見て見ると、なるほど黒潮は駿河湾のはるか南を流れていて、こちらも湾内の水温は23度から24度のようである。
モノの本によれば、本州に近づく黒潮は広いところで幅100キロ、深さ600メートルにも及ぶことのある巨大な流れなのだ。
この巨大な“温蔵庫”が沿岸の気候に及ぼす影響は小さくない。
真冬でも海岸に出て、晴れてさえいれば何となくポカポカ感じられるのは目の前を27~28度の水の流れがあるからで、都内などとは確実にその温度差を体感できるはずである。
このままの黒潮の蛇行状態が続くとすれば、冬に感じる温度差もたいして期待できないのかもしれない。
シラス漁は12月末から禁漁期に入るが、その前に1、2度は何とかして生シラスで酒を飲みたいものである。
わが家から見た中秋の名月
わが家前に穂を出したススキに白玉と鳴門金時。白玉は妻の手作り。これが美味しかった。
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