平方録

七夕の記憶

午前4時。白みかけた外を見やると、さすがに雨は止んでいるが、庭土もベランダも今まで降り続いていたことを示すかのように、たっぷり濡れていて、雨水が溜っているところが生々しい。
天気予報では降り止んでいる時間があるものの、依然として傘マークは消えていない。
今夜は七夕だが、まさにその時刻に傘マークが踊っているから、天の川デートはお流れになりそうである。

何年前だったか、2005年か2006年の七夕の晩だった。仕事で軽井沢の、さらに奥にある高原ホテルを借り切って泊まっている所に、その悲報は届いた。
知人の奥さんと娘さんが飼い犬の散歩に出掛けたところ急な雷雨に遭い、住宅地の中の公園で雨宿りをしていたところに、あろうことか落雷があって、2人とも一瞬にして亡くなってしまったのである。

命からがら助かった飼い犬は、雷鳴が鳴り響くと「その時」を思い起こすのだろう、今でも身体はぶるぶると震え出し、如何にも恐ろしいよ~、怖いよ~、というような、か細い声で泣くのである。見ているほうがかわいそうになるくらいに怖がるのだ。
人格は高潔で、人のためになることに労を惜しまないで取り組んだ人で、誰にもおもねず、何事にもまったくぶれることのない、尊敬する大先輩だが、なぜあのような悲しみに遭遇してしまうのか、やりきれない思いは今でも消えない。
同じ敷地に住む息子夫婦にできた2人のまだ小さな女の子のお孫さんの遊び相手になって、ようやく平穏が戻ってきたようなのが慰めである。

ちょうど今頃は二十四節気でいうところの「小暑」で、七十二候では、夏の風が熱気を運んでくるころを表現する「温風至る」に当たるのだそうな。
ところが実際は梅雨寒が続いて、温風どころではない。
梅雨明けなどいつのことかと思えるような日々なのである。わけても黒潮の洗う地域に雨は集中しているようである。
今年は南米沖でエルニーニョ現象が起きているそうで、予想される日本への影響は長梅雨だそうだから、何とも恨めしい。
予報が外れてくれることを期待したが、それもままならぬ。
うっとおしい日々が続きそうである。
せめて良い歌や句で日々の悶々を払うしかないか。


 五月雨の空もとどろに時鳥(ほととぎす) 何を憂しとか夜ただ鳴くらむ  紀貫之

 郭公(ほととぎす)雲居のよそに過ぎぬなり 晴れぬ思いのさみだれのころ  後鳥羽院

 みほとけの千手犇(ひし)めく五月闇  能村登四郎


東の空の雲が薄くなって、わずかだが茜が差してきたから久々に自転車でパトロールに出掛けられるかもしれない。いや、朝焼けだったとしたら天気は悪くなる印じゃないか…


以下はわが駄句。
  
 盛り上がり五月雨うねる最上川
 五月雨や転がる酒瓶七つ八つ
 音立てて五月雨叩く出羽の山
 五月雨や出羽の深山の煙る処
 山寺や蝉より盛んにぼやき声
 山寺や夏空抜けゆく列車音



5、6年前に新聞販売店がくれたユリが毎年楽しませてくれる 
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