2014.8.25 毎日新聞「余禄」
一昨年に復元された東京駅をはじめ、妙に懐かしさを誘うのは一体、どうしてなんだろう▲今年2月に死去した建築史家の鈴木博之さんは昨秋の講演で二つの理由を挙げたたという。一つは日本人が縄文土器以来、土を焼く行為をえんえんと続けていること。焼き物も瓦も生活の原風景にあり、レンガにも心休まるというのだ▲もう一つは、日本のレンガ建築には英国にルーツを持つものが少なくなく、近代日本人の英国への思いが、愛着の背後にあるのではないかという。夏目漱石をはじめとし、いち早く産業革命を実現した国に留学した人々を思い出す▲日本各地に赤レンガの建物がある。伝統のある建物は、地元の誇りでもあるのだろう。近代建築を保存する意識が広がり、生活を楽しくするために使う動きもあちこちに見られる▲山口県下関市の旧下関英国領事館が今年7月にリニューアルオープンし、1ヶ月で約13,000人と、予想を大きく上回る入館者を集めている。英国人技師の設計で明治末期の1906年に建てられ、40年に領事業務を終えた。国指定の重要文化財です。美しい赤レンガが本州最西端の港町の歴史を伝える。2階にレストランがあり、夜10時まで開いているのがうれしい。関門海峡をすぐ身近に感じながら、ビールやカクテルも楽しめる▲夜はパブになる活用法は、市民の声を聞いて決めたそうだ。たとえばビールグラス片手にシェークスピアからビートルズまで、英国文化を語り合うのもいい。赤レンガの建物では、思いが時間を超えて広がっていくのではないだろうか。
一昨年に復元された東京駅をはじめ、妙に懐かしさを誘うのは一体、どうしてなんだろう▲今年2月に死去した建築史家の鈴木博之さんは昨秋の講演で二つの理由を挙げたたという。一つは日本人が縄文土器以来、土を焼く行為をえんえんと続けていること。焼き物も瓦も生活の原風景にあり、レンガにも心休まるというのだ▲もう一つは、日本のレンガ建築には英国にルーツを持つものが少なくなく、近代日本人の英国への思いが、愛着の背後にあるのではないかという。夏目漱石をはじめとし、いち早く産業革命を実現した国に留学した人々を思い出す▲日本各地に赤レンガの建物がある。伝統のある建物は、地元の誇りでもあるのだろう。近代建築を保存する意識が広がり、生活を楽しくするために使う動きもあちこちに見られる▲山口県下関市の旧下関英国領事館が今年7月にリニューアルオープンし、1ヶ月で約13,000人と、予想を大きく上回る入館者を集めている。英国人技師の設計で明治末期の1906年に建てられ、40年に領事業務を終えた。国指定の重要文化財です。美しい赤レンガが本州最西端の港町の歴史を伝える。2階にレストランがあり、夜10時まで開いているのがうれしい。関門海峡をすぐ身近に感じながら、ビールやカクテルも楽しめる▲夜はパブになる活用法は、市民の声を聞いて決めたそうだ。たとえばビールグラス片手にシェークスピアからビートルズまで、英国文化を語り合うのもいい。赤レンガの建物では、思いが時間を超えて広がっていくのではないだろうか。