海原 純子 2015年4月19日 毎日新聞
きちんと化粧して身支度したはずなのに、どうもパッとしないなあ、と思うことがほぼ毎日である。以前、美容研究家の方が、20代は化粧して自分に納得できるのがほぼ毎日だが、30代になると減り、40代は更に減り、 50代になると満足できるのは週1回くらい、などとコメントしていたのを読んだことがあるが、それ以上の年齢になるとどうなるのか、と思ったりする。
自分の顔のシワを見て気分のいい女性はいないはずだが、 シワを隠そうと化粧を濃くすると、 何だかこわい感じになるという状況に追い込まれる。 あらたな 選択技は、仕方がないと受け入れるしかないわけだが、これがなかなかむずかしい。
男性は自分の 容姿についてさほど落ち込まないかもしれないが、 女性にとっては年齢に伴う容姿の変化はストレス要因になる。 「あの人老けたわよね」という 言葉に含まれる否定的な響きが嫌だという声を聞くことがしばしばだ。
巷(ちまた)ではアンチエイジングの情報があふれ、雑誌では年をとってもその年齢に見えない女性たちがポーズをとって掲載されている。 こうした現象は日本で特徴的なのかしら、と思い友人のアメリカ人ジャーナリストや知人に聞いてみたみたところ、 美容外科ブームや アンチエイジングへの 関心は高いけれど、 それは 一部の人々で、職業によって異なり、人それぞれという答えが返ってきた。
つまり、若さや美をアイデンティティーとする人はいるが、そうでない人も多いということだろう。ここではたと気がついたが、高齢者の幸福感における日米差である。
2008年発表の内閣府による 「国民生活選好度調査」 によると、 日本では年齢が上昇するにつれて幸福感は下がってくる。67歳が最低でその後幸福感は上がってこない。 つまり若者ほど幸福感は高く、年を取るにつれて幸せと感じられなくなって来るというパターンとなる。
これは諸外国における調査とは全く異なる。 例えば、 アメリカではUカーブを描き、高齢に近づくと次第に幸福感が増してくる。 これは、若い頃持っていた夢をあきらめざるを得ない熟年期に入る頃は幸福感が下がるが、高齢に入ると考えを変えて新たなアイデンティティを見つけ、 自分の人生を活かすことに心を向けるためではないか、とされている。日本の場合、 女性はかわいく若々しく、男性は会社でのポストや社会的地位をアイデンティティーとすることが多く、 それが失われた時、ストレスが生じる。
高齢になり、 それまで持っていたもの、 女性にとっては若さや容姿に対する自信、男性にとっては社内のポストが失われていく時、 それに代わる新たな心の中の目標が見つからないことが、日本で高齢者の幸福度が低い要因に思える。若さを求めて戦うだけでなく、若さにかわる新しい目標が必要なのである。
きちんと化粧して身支度したはずなのに、どうもパッとしないなあ、と思うことがほぼ毎日である。以前、美容研究家の方が、20代は化粧して自分に納得できるのがほぼ毎日だが、30代になると減り、40代は更に減り、 50代になると満足できるのは週1回くらい、などとコメントしていたのを読んだことがあるが、それ以上の年齢になるとどうなるのか、と思ったりする。
自分の顔のシワを見て気分のいい女性はいないはずだが、 シワを隠そうと化粧を濃くすると、 何だかこわい感じになるという状況に追い込まれる。 あらたな 選択技は、仕方がないと受け入れるしかないわけだが、これがなかなかむずかしい。
男性は自分の 容姿についてさほど落ち込まないかもしれないが、 女性にとっては年齢に伴う容姿の変化はストレス要因になる。 「あの人老けたわよね」という 言葉に含まれる否定的な響きが嫌だという声を聞くことがしばしばだ。
巷(ちまた)ではアンチエイジングの情報があふれ、雑誌では年をとってもその年齢に見えない女性たちがポーズをとって掲載されている。 こうした現象は日本で特徴的なのかしら、と思い友人のアメリカ人ジャーナリストや知人に聞いてみたみたところ、 美容外科ブームや アンチエイジングへの 関心は高いけれど、 それは 一部の人々で、職業によって異なり、人それぞれという答えが返ってきた。
つまり、若さや美をアイデンティティーとする人はいるが、そうでない人も多いということだろう。ここではたと気がついたが、高齢者の幸福感における日米差である。
2008年発表の内閣府による 「国民生活選好度調査」 によると、 日本では年齢が上昇するにつれて幸福感は下がってくる。67歳が最低でその後幸福感は上がってこない。 つまり若者ほど幸福感は高く、年を取るにつれて幸せと感じられなくなって来るというパターンとなる。
これは諸外国における調査とは全く異なる。 例えば、 アメリカではUカーブを描き、高齢に近づくと次第に幸福感が増してくる。 これは、若い頃持っていた夢をあきらめざるを得ない熟年期に入る頃は幸福感が下がるが、高齢に入ると考えを変えて新たなアイデンティティを見つけ、 自分の人生を活かすことに心を向けるためではないか、とされている。日本の場合、 女性はかわいく若々しく、男性は会社でのポストや社会的地位をアイデンティティーとすることが多く、 それが失われた時、ストレスが生じる。
高齢になり、 それまで持っていたもの、 女性にとっては若さや容姿に対する自信、男性にとっては社内のポストが失われていく時、 それに代わる新たな心の中の目標が見つからないことが、日本で高齢者の幸福度が低い要因に思える。若さを求めて戦うだけでなく、若さにかわる新しい目標が必要なのである。