ケイスケとの時間が私にとっての安堵になった頃
姉は家を出ることになった
姉は夜の街へ繰り出すそうだ
飲み屋街の中の海鮮屋の息子と交際があるみたいだ
しかし母が姉をひどく叱ったことがあった
姉は大阪に遊びに行った時に
若気の至で左肩にタトゥーを入れた
ワンデイのワンポイントタトゥー
不死鳥が鮮明に肩に描かれていた
女である姉が嫁入り前にタトゥーを入れたことに対して母は激怒し
それが姉を家から追い出す引き金となったようだ
姉はその交際相手の実家に住み込み
ホステスとして生きていくそうだ
普段口数の少ない姉だが、一度アルコールを飲むとガラッと豹変した
笑い上戸のよく喋る女と化すのだ
昔から父に
酒を飲まされて変な男に連れていかれないように
酒を一緒に飲んでいた
しばらくして父が居なくても酒を口にするようになったのも事実だ
姉は初めて出勤するその日
まだ未成年の私に
「飲ませてあげるからたまにはおいでよ
と、
反省半分で私を誘った
夜の街
暗い夜道とは程遠く
赤や青のネオンが光り
客引きのホステスやボーイが道端に立っている
週末なのにどこの店も暇らしい
居酒屋で飲んではスナックやラウンジに続く
同伴で出勤するホステスや
タクシーで時間過ぎてから出勤するホステスや
客とホステスの大きな声での会話がいろんなとこから湧き出し
夜と思えないほどの人の数だ
私は祭りのテキ屋に並ぶ人たちくらいにしか思ってなかったから少しだけ抑揚した
姉の店に着くと
姉はカウンターの中で何やら客と話をしていた
「あ、きた?
「空いてるとこに座っといてよ
「知り合い?
「うちの妹なんよー
「光希ちゃん妹おったんかいな
「そうだに!可愛いでしょ?
「エラいまたタイプのちゃう妹やな
「妹はお母さん似で、うちはお父さん似なんよ
「ほなまたおっきなったらここで働くんかいな?
「それは分からんわね
何とも返事のしようもない会話に私は戸惑い
席に置かれたカクテルを少しずつ口にした
「ジュースみたいだけどお酒だから飲み過ぎなんなよ?
「はーい
わたしは初めて飲むアルコールというものを
口に含んでは味わいながら飲んだ
飲み終えた時には顔が赤らんで
体温もあがり
少しだけ楽しくなってきたが
アルコールの美味しさというものにだけは
共感出来なかった
「…そんなに言うほど美味しくもないな。
「気分が上がるから飲んでるんよ
「そっか
わたしはたいして美味しくもないアルコールを飲み
その場の雰囲気に飲まれ
気づけば横になって寝ていた
明日はケイスケとどこ行こう…
そんなことを考えながら
ぼーっとする頭が変に心地よくて
そのまま
ソファーに寝転がっていた
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