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ナナマル サンバツ (1) (角川コミックス・エース 245-4) |
杉基イクラ | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
杉基イクラ先生の「ナナマル サンバツ」を読みました。
面白かったです。勉強になりました。
本作品は高校のクイズ研究会を舞台にした競技クイズ漫画です。
ガチ系のクイズ番組で何故回答者があんなに早くボタンを押し回答できるか、その緻密な戦略とそれを実現するための膨大な努力が描かれます。
クイズには「ベタ」というカテゴリーがあるそうです。ストレートに知識を問うタイプの、あらゆるクイズ大会で頻出する問題のことです。
「ベタ」問題には百人一首と同じく「決まり字」があります。
例えば「そこにや」まで聞いたらボタンを押し、「そこに山があるからだ」と語った登山家「ジョージ・マロリー」の名前を回答するのが基本なのだとか。
この何千とある「ベタ」をどれだけ暗記できるかが、予選突破の鍵。
時事や芸能など「ベタ」は日々追加されていきますので、名門のクイズ研究会になると新「ベタ」を常時研究し、会報で共有するそうです。
また「~と言えば~ですが、~と言えばなんでしょう」という「ですが」問題もよく聞きます。
これも「ですが、」で押してしまいます。タイムラグで次の「~」の一文字目だけでも聞ければ儲けものですし、聞けなくても方法はあります。
クイズを読み上げる司会者は次の「~」が何か知っています。なので問題を読み上げるとき、間違いのないよう無意識にそこにかかわる部分の発音が強調されるのだそうです。
なので回答者は強調されているセンテンスがないか、司会者の発する一音一音を最初からきっちり聞き取りながら問題予測・答えの絞り込みを行っていきます。
また少しでも早くランプを回すためにボタンを電気接触端子ギリギリまでおく「押し込み」など、有形無形の様々なノウハウが披露駆使されます。
脳をフル回転させ続けるため莫大なエネルギーを消費し、大会終了時に倒れこむ選手たち。競技クイズってスポーツなんですね。
青春をかけて全力で取り組むことの凄さと美しさを激しく描き切る良作です。