今日のランチはヒレカツです。
カラリ衣が柔らか豚ヒレ肉の旨味をギュギュっと凝縮した極上の美味。
今日はロースにするかヒレにするか、心ゆくまで悩むのもトンカツ屋さんでの楽しみです。
さて今では希少な高級部位とされる豚ヒレ肉ですが、昔は捨てられていました。
豚のヒレ部分では固い筋と大量の脂ががっちり絡み合っており、そのままでは煮ても焼いても美味しくならないのです。
店先に出しても使い道がないので誰も買いません。で、泣く泣く捨てるしかないと。
「これもったいないよ、何とかならない?」
肉屋さんから相談を受けた上野蓬莱屋の主人が試行錯誤を重ね、ヒレ部分から脂と筋を取り除いて赤身部分だけを取り出すことに成功します。
ほんの少量のこの赤身、トンカツにして揚げてみると驚くほどの柔らかさと美味しさを発揮しました。
こうして大正初頭、上野蓬莱屋のメニューに「ヒレカツ」が登場、大評判となり今に至ります。
「捨てるなんてもったいねえ、どれ俺の技術で旨い料理に仕立ててやらあ」、ヒレカツを食べると上野の職人の心意気にちょっと胸が熱くなります。