10月26日、私の“愛馬”がデビュー戦で勝ちました。名前はモンドシャルナ。モンド(世界)と私の名前のハルナと、ネコのフランス語「シャ」をかけました(ネコは私の愛称のひとつが、にゃんにゃんだから)。競馬番組の企画で、私が名付け親になったんです。お母さんはディープインパクトと同じで、つまり血統がよくて、デビュー戦を勝利するほど。そういう私も10月30日に自身初センターの新曲「ハート・エレキ」が発売されましたが、こちらは意外でした。
秋元康先生からのメールは突然でした。「10月のシングルは小嶋をセンターにしようと思います。がんばってね」。それを見て「えっ! ここに来てセンター」とすごく驚きました。私はAKB48の1期生。デビューして8年になります。麻里ちゃん(篠田麻里子)やとも(板野友美)が卒業して、若手への世代交代が加速すると思っていましたから。
「なぜ、私?」と思いつつ、向かったレコーディングで曲を聞いて、またびっくり。タイトルは「ハート・エレキ」。グループサウンズ的な曲でした。私のキャラからすると、セクシー系や女性らしい曲を想像していたので、格好いいタイプの曲は想定外でした。最初は「なぜ、この曲のセンターが私なんだろう」と不思議に思っていましたが、テレビで見て、自分なりに考えてみて、何となくしっくりきました。AKB48を支えてきたメンバーの卒業が続いて、昔からのファンの方たちには寂しい思いもあるだろうし、世代交代の前に(大島)優子やたかみな(高橋みなみ)、ゆきりん(柏木由紀)らで、大人のAKB48のイメージを出すことには意味があるのかもしれない。だから大人っぽい雰囲気の私がセンターに選ばれたのかも、と。
センターに立ったことは、自分を見つめ直す機会になりました。私はマイペースなタイプです。AKB48のオーディション合格後に待ち受けていた厳しいレッスン。本当につらかったですが、やめなかったのは、やめることにも勇気や体力がいるから。だから、とりあえず、みんなと一緒に前に進もう、と(笑い)。
センターを目指す、という強い意識はありませんでした。存在感を持ちつつも自由でいられる立ち位置が自分には合っていると思っていましたし、後輩たちをぐいぐい引っ張るタイプでもありませんから。
自分はチームのために何をしてきたんだろう、と自問しましたが、すぐには思い浮かびませんでした。そんなとき一緒に取材を受けた(大島)優子が、「そこにいるだけで、雰囲気を楽しくしてくれる。なりたくてもなれない立ち位置だと思うよ」という意味のことを言ってくれたんです。すごくうれしくて、救われた気持ちになりました。
確かに、私がセンターでいると、両隣にいる(大島)優子やたかみなが、笑っていて、「いつも以上に現場の雰囲気がなごやかだ」と言ってくれています。悩んでいるメンバーと話していて、「もう、どうでもよくなっちゃった」「悩んでいることがばかばかしくなった」と言われたこともあります。何かいいアドバイスをしたわけでもないのですけど。
私自身、くよくよ悩むことはほとんどないし、あってもすぐに忘れてしまいます。AKB48での活動では、たくさんのことを乗り越えてきましたが、乗り越えると、また次の山がやってくるので、2カ月もすると、前のことは忘れてしまいます(笑い)。今夏は全国5カ所のドームツアーがあり、最後までは、やりきれないだろうと思うくらい大変でしたが、その苦労も遠い過去のようです。また、AKB48での8年間が濃密すぎたので、それ以前の悩みはなおさら忘れてしまいました。そんなタイプだから、みんなをも安心させてしまうのかもしれません。
一方で、自分を変えたいという思いもあります。25歳。今までは、「かわいい」ことが好きで、自分自身もかわいくありたいと努めてきました。後輩たちの中には、私に憧れていると言ってくれるメンバーもいます。注目される立場なので、ファッションや立ち居振る舞いには気をつけながら、教えられることは教えてきたつもりです。
だけど、これからは格好いい大人の女性を目指したいと思っています。周囲に気がつかえて、強い信念をもっているような。でも、今の自分とはまったくかけ離れているので、これからがスタートです。
私は普段はほんわかしているようですが、やるときはやるタイプです。撮影でカメラを向けられたり、ステージに立ったりした瞬間にスイッチが入って一瞬で変わります。レギュラー出演しているテレビ番組「PON」で共演しているお笑いタレントのビビる大木さんや岡田圭右さんからは「AKBでパフォーマンスをしているときのこじはるは別人のようにキラキラしている」とおっしゃっていただきました(普段はどうなのかな?)。オンとオフ。省エネかもしれないけど、少しずつ、一歩ずつ進んでいくつもりです(笑い)。「適当」という言葉が好きです。適度に人に合わせたり、物事には臨機応変に対処したり、柔軟な感じがして、自分に合った言葉かな、と思います。
■番記者から
こじはると初めて会ったのは2009年秋、ニューヨーク公演を取材したときのこと。コンサート終了後、たまたま数人のメンバーと記念写真を撮影することになった。そのときの一人がこじはる。「こじはるです●(●はハート)」と笑顔であいさつ。思わず釣られそうになった。
香港での握手会にも、たまたま同行した。日本国内の握手会と同様に、長蛇の列が築かれたが、女性の姿も少なくなかった。さすがはAKB48のおしゃれリーダー。海外でも名前が知られていた。
子どもの頃から、「かわいい」ものが好きだったそう。最近はゆるキャラの「ふなっしー」がお気に入り。「目がかわいい」のだとか。9月のAKB48のじゃんけん大会では、ふなっしーとともに登場し、会場をわかせた。「パフォーマンス能力が高く、サービス精神もあふれています。言葉の切り返しも上手。尊敬に値します。私自身、イベントでは全力でファンの方と楽しもうと思っているので、共演できて、本当に楽しかったです」。AKB48では、おしゃれ担当で通っている。小さい頃からお化粧をしてみたり、マニキュアを塗ってみたり。当時の写真がたくさん残っているそうだ。AKB48に入って、うれしかったのは、かわいい衣装を仕事でたくさん着られたこと。現在はファッション誌でも活躍している。デビューから8年。25歳になった。「AKB48は私にとって天職。すごく濃密な8年を過ごしてきましたが、永久にAKB48にいられるとは考えられないので、とにかく今は日々を楽しみたいですね」。取材では「オンとオフ」の切り替えがあると話していたが、確かに、現場で観察していても、リハーサルと本番では見違えるほどの変化を見せる。
これからは「格好いい大人の女性」を目指すという。だけど、普段のおっとりしたキャラは、たぶん変わらないだろうし、そのままでいて欲しい。そこが、こじはるのいいところだから。
次回はAKB48の入山杏奈さんです。