革マル派
■「他の組合員と会話禁止」伝達阻害
衆院国土交通委員会がレール異常などトラブルが続くJR北海道の野島誠社長(56)を参考人招致する方向で調整に入ったことが6日、分かった。JR北をめぐっては労働組合間の対立で現場での情報伝達が阻害されているとの指摘がある。一部補修現場では検査結果が共有されておらず、同委員会は組合問題もトラブルの背景にあるとみて野島社長から説明を求める。
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「他労組と飲みに行くことや結婚式に呼ぶことを禁じる風通しの悪い部署がある」「他の組合員との会話を禁じ、業務伝達も難しい」。情報伝達が阻害される背景として、複数の社員は、最大派で労使協調路線を取り、社内に影響力を持つJR北海道労組の存在を挙げる。
≪対立≫
JR北には、組合員資格者の80%強が加盟する、このJR総連系のJR北海道労組(約5600人)と、約8%のJR連合系のJR北労組(約550人)、約2%の国労北海道本部(約130人)の計3つの主要労組がある。
上部団体のJR総連とJR連合が激しく対立してきた経緯などがあり、北海道でも互いを敵視する構図にあるとされる。JR総連は、政府答弁書や警察庁警備局長の国会答弁などで度々、過激派「革マル派」の浸透が指摘されている。
国労北海道本部は「会社は最大派労組ばかりに目を向けている」、JR北労組は「情報共有不足は、最大派労組が他労組との関係を断っていることがある」と主張している。
一方、国交省の特別監査では、保線管理室の調査で少なくとも大沼など3カ所でレールの検査担当者が結果を現場責任者に伝えていなかったことが分かっており、国交省は、JR北の社内の体制に問題があるとみて改善を指示した。
JR他社も組合問題を抱えるが、JR北でトラブルが顕在化する背景について、同社関係者は「赤字体質で安全面に多額の費用を投入できないハード面に加え、労組間の対立といったソフト面の問題が複雑に絡んでいる」と指摘する。
≪抵抗≫
JR北は約5年前に運転士らへの職場にアルコール検知器を導入したが、昨年7月の義務化まで自主検査扱いに。「対面点呼で十分に安全は図られ任意としていた」(広報部)とするが、関係者は「最大派労組の抵抗で義務化が遅れた」とする。今年7月の運転士覚醒剤使用事件でも同省北海道運輸局が全運転士への薬物検査を打診したが、JR北は「人権上の問題」と拒否。同省幹部は「最大派労組の猛反発を心配した可能性がある」と推察する。
衆院国交委員会は、野島社長招致を早ければ11日の理事懇談会で決め、こうした組合問題についても触れる方針。一方、野島社長は今月4日、都内で記者団に「労組とはうまくいっていないと考えてはいない」と労使関係が良好との認識を示した。ただ関係者は「安全体制構築に最大派労組が目の上のたんこぶになることもある」と明かす。
JR北海道労組は、産経新聞の取材に「答える義務はない」と応じなかった。