毎日新聞 6月28日(金)11時27分配信
国産牛のBSE(牛海綿状脳症)の全頭検査が7月1日から全国一斉に廃止されることが28日、決まった。食肉処理場を持つ75自治体のうち、唯一、態度を表明していなかった千葉県が同日、検査終了を厚生労働省に伝えた。生後48カ月超の牛だけが検査対象となり、処理される約8割の牛は検査なしで出荷される。
厚労省は6月上旬、検査対象を現行の「30カ月超」から「48カ月超」に引き上げるよう省令改正した。これを受けて、検査をしている75自治体のうち、千葉県を除く全自治体が全頭検査を中止する方針を示していた。
全頭検査は2001年10月に始まった。05年から生後20カ月以下、今年4月からは30カ月以下が検査不要となったが、自治体には「一部の自治体が続けた場合、検査をしない自治体の牛肉は消費者の印象が悪くなる」との懸念が根強く、全頭検査を自主的に続けていた。
国産牛は安全安心か BSEリスク「無視できる」
毎日新聞 2013年06月11日 東京朝刊
OIEの定めるBSEリスクの3段階の主な要件(2013年6月11日付朝刊)
牛の病気の一つとして警戒されてきたBSE(牛海綿状脳症)。先月下旬に国際機関「国際獣疫事務局」(OIE、本部パリ)が、日本や米国など6カ国をBSEのリスクで最も安全な「無視できる国」に新たに認定した。日本は3段階の中位から最上位への格上げで、BSEが未発生の豪州などと同等に。OIEの「お墨付き」は、国産牛肉の安全性にどう影響するのか。
●全頭検査廃止へ
格上げ認定が影響しそうなのは食肉処理場を持つ75自治体が自主的に続けているBSEの「全頭検査」だ。
厚生労働省は今月3日、7月1日から検査対象の国産牛を、現行の月齢「30カ月超」から「48カ月超」に縮小するよう省令改正した。これに伴い対象の牛は全体の約4割から約2割に減る。厚労省から全頭検査廃止の要請を受けた75自治体の中で、岩手、岐阜、長崎、鹿児島県などがOIEの格上げを廃止の条件や参考情報に挙げていたこともあり、同省は「格上げは廃止への大きな推進力だ」と話す。
75自治体の7月以降の方針について、厚労省は「あと2、3の自治体が正式な回答を保留しているが、他は廃止する方向だ」と全頭検査の一斉廃止はほぼ確実の情勢だ。
では全頭検査廃止のメリットはあるのか。BSE問題に詳しい唐木英明・倉敷芸術科学大学長(獣医師)によると、食肉処理場の大きな任務は病気の家畜の排除▽伝染病の防止▽病原菌が肉に付着して出荷されるのを防ぐ食品の安全性確保--などだ。しかし、2001年に国内でBSEが見つかって以来、全国の処理場にいる2000人超の獣医師は検査に追われ、牛の腸にいて食中毒の原因となる病原性大腸菌の排除など重要な対策が手薄だったという。
病原性大腸菌による食中毒はここ数年、年間約20~50件発生し、昨年は8人が死亡。唐木さんは「全頭検査が廃止されれば獣医師がやっと本来の業務に復帰できる。畜産品の安全性確保に向けて大きな一歩だ」と食中毒防止のメリットを指摘する。
●危険部位、従来通り
格上げ認定は国産牛肉の国内流通にただちに大きく影響しないが、国産牛肉を他国に輸出できる条件は格段によくなった。今後、国産牛の輸出に力を入れる農林水産省は「日本の消費者にとっても国産牛肉への安心感は以前より高くなったはず」と格上げをきっかけに国産牛のイメージアップに努める。
BSE:日本、最も安全 国際機関格上げ、全頭検査廃止後押し
毎日新聞 2013年05月29日 東京夕刊
農林水産省は29日、国際的な動物衛生基準などを決める国際機関「国際獣疫事務局」(OIE、本部パリ、178カ国・地域加盟)が、日本をBSE(牛海綿状脳症)のリスクに関して最も安全な「無視できるリスクの国」に格上げしたと発表した。国産牛肉の輸出拡大に弾みがつくほか、「OIEの格上げ認定」を全頭検査廃止の条件とする自治体が複数あるため全頭検査の一斉廃止を後押ししそうだ。
パリで開催中のOIE総会で28日に決定された。日本は2001年9月に国産牛初のBSE感染が発見されて以来、原因となる肉骨粉の飼料への使用禁止▽危険部位の除去▽食肉処理場での全頭検査--を実施。国内では計36頭の感染牛が発見されたが、02年1月生まれの牛を最後に感染確認はない。
OIEは07年からBSEリスクの小さい順に、無視できるリスクの国(12年現在=19カ国)▽管理されたリスクの国(同=米国、カナダなど30カ国)▽不明の国--と3分類してきた。日本は09年、「管理されたリスクの国」になっていた。
その後、OIEが「無視できる国」の要件とする、(1)過去11年以内に自国内で生まれた牛で発生がない(2)飼料規制を8年以上実施--などの条件を満たし、農水省は昨年9月に格上げを申請していた。
OIEに長く勤務した小澤義博名誉顧問は「日本の牛肉をどの国へも輸出できる条件が整うことになる。ただ、主に8歳以上の高齢牛で自然に発生する『非定型』BSEは今後も出てくるため、肉骨粉を飼料や肥料に認めるのは時期尚早だ」と話す
BSE規制緩和 安心生む努力が肝要だ
毎日新聞 2013年02月19日 02時31分
政府が牛海綿状脳症(BSE)対策で実施している輸入規制を緩和したことで、月齢の高い米国産牛肉が、国内で流通し始めた。
科学的には「安全」だとされる。それでも消費者の間には不安感も根強い。政府には、規制緩和の根拠をていねいに説明するとともに、米国に一段の安全確保策を促すなど「安心」を生むための努力を求めたい。
米国産は今月から、牛の月齢で「20カ月以下」としている輸入条件を「30カ月以下」に拡大した。ほかにもカナダ産とフランス産は「30カ月以下」、子牛だけの輸出を望んでいるオランダからは「12カ月以下」の輸入を認める。
規制緩和の背景には、世界的なBSE発症の激減がある。ピークの1992年には世界で約3万7000頭の発症が確認されたが、感染源とみられる肉骨粉を飼料に使わなくなったことで減り続け、昨年は12頭にとどまった。
こうした客観情勢を踏まえて、食品安全委員会は昨秋、輸入条件を緩和しても「人への健康影響は無視できる」と答申していた。
科学的な知見に基づく緩和であり、心配はないように思える。それにもかかわらず、消費者の不安が解消されないのは、安全性を確保できるという根拠が十分に説明されていないからだ。
米国への政治的配慮を優先させたとの疑念も拭いきれていない。米国産牛肉の輸入量は現在、BSEの発症がない豪州産の3分の1程度にとどまっている。米国から輸入条件の緩和を強く求められる中、緩和の実施が安倍晋三首相訪米のタイミングと重なったことも、不信を招く一因だろう。それだけに、安全性について説得力のある科学的根拠を示し、ていねいに説明する必要がある。
また、理論的には安全だとしても、肉牛の生産管理が不十分では、その前提が崩れる。豪州では電子タグを使った生産履歴の管理を義務化するなど、安全と信頼の確保に力を入れている。米国にもそうした制度に倣った生産管理や検査体制の向上を求めていくべきだろう。
国産の肉牛についても政府は、食品安全委の答申に基づいて、4月からBSEに関する検査の義務付け対象を現行の「21カ月以上」から「30カ月超」に縮小する。
もっとも現在は、対象外の若い牛も自治体の負担で全頭が検査されている。国の基準が緩和されても横並びで続く可能性がある。
この検査は安全確保のためには不要だとされ、税金の無駄遣いとの批判も強い。安心のためのコストと考え、続けるのかどうか。見直しも含めて議論する必要があるだろう。
牛海綿状脳症
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%9B%E6%B5%B7%E7%B6%BF%E7%8A%B6%E8%84%B3%E7%97%87
BSE問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/BSE%E5%95%8F%E9%A1%8C
牛海綿状脳症(BSE)について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bse/index.html