厚生労働省は10月17日、製薬メーカーなどの治験(臨床試験)業務の支援を手がけるメディファーマ(東京都港区)が、データ改ざんなど最大123件の省令違反を起こしていたと公表した。
「測っていない血圧の数字を記録した」「治験薬が入った冷蔵庫のコンセントが抜けていたことを報告しなかった」「治験の参加基準を満たすため、呼吸機能検査で息の吐き出し方を指導していた」――。
詳細は調査中だが、厚労省はこのような違反事例があったとしている。「不正の可能性が疑われる件数が尋常ではない。前例のない非常に悪質なケースで、日本の治験の信頼性が揺るがされた」と、厚労省医薬品審査管理課の担当者は憤る。
一連の不正からは、新薬の承認取得を急ぐ製薬メーカーと医療機関の間で板挟みとなる、SMOの難しい立ち位置もうかがえる。
薬は特許品のため、主成分となる物質の特許を取得してからいかに早く治験を行い、世に出せるかによって、大きく価値が変わってくる。「治験が1カ月遅れるだけで、数千万~数億円単位の損失となる」(業界関係者)との見方もあるほどで、治験を実施する現場に対する製薬メーカーからのプレッシャーは大きい。
メディファーマが行っていた違反行為の中には、医師が受講すべき治験の説明動画を、メディファーマ社員が代理で視聴していたケースもあった。メディファーマ広報は「代理受講は独自の判断で、過剰なサポートだった」とするが、多忙な医師への“忖度”が働いた可能性も否定できないだろう。
こうした不正行為は薬の信頼を損ねるだけでなく、治験に対する忌避感をさらに高めることにもつながりかねない。治験が滞れば、日本から新たな薬が生まれる可能性を狭めることにもなる。
メディファーマ個社の問題と片付けず、不正を防ぐためのルール見直しなど、行政主導での対応が求められる。
https://toyokeizai.net/articles/-/710798
バイオエクセルが急落 治験責任医師の捏造が発覚
https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202306291052
臨床試験・治験は誰のためのものなのか? 患者の語りから考える
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/t009/201708/552431.html
当院にて発生した論文不正と臨床研究についてのご報告
https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/topics/detail.php?id=425
ディオバン事件-研究者と企業の倫理
https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/member/kiso/h12.pdf