右端の方は、手話のボランティアです。今職人の平均年齢は62~64歳位で、今後を考えると大変厳しい状況にあります。CMでブレイクした雪花絞りは、7年くらい前に着目しました。.当時有松から仕入れていましたが、年々減産が続き、このままではいい物が仕入れられなくなる、ということで直接のモノ作りを考えている時に出会い、見たとき「これっ!こんなものできるんだ」と感激ものでした。板締めで、どの頂点から、どのくらい浸し染めるかで模様が違う面白さがあり、伝統の技に若い私たちの感覚を活かしたデザインで、可愛い柄ができました。生地にもこだわっています。毎日洗っても張りを失わない、染めの鮮やかさ、2~5分ていど、ほんのわずかな縮み、など様々に扱いやすい、着やすいきものを目指して作っています。絞りにはロットというのがありません。全て手作りですから色や柄を言ってくれれば、1点から作ります。坊染、抜染、そして絞りの組合せですから、融通無碍性なんですね。絞りは、オーダーメイドに適したきものです。羽織、特に羽裏が好きなので、男物にチカラを入れています。自分が好きな物、情熱を込めたものは、やはり伝わりますね。是非この機会に、こんな絞りのきものないのか、作れないのか、などどういうものをつくればいいのか、着る人の意見をお聞かせ下さい。
左の写真の左側の女性は、着る人委員会を代表して進行に参加頂いた、立川直子さん(着付け教室すみれ堂主宰)です。この夏ちょうど一格アップした夏のきものを探していて目に飛び込んできたのが黄色の雪花絞り。すっかりお気に入りのアイテムになりましたが気になるのはお手入れ。そんなとき偶然藤井社長にお会いし、「ネットに入れて洗濯機で洗って頂いて何にも問題ありません」と教えて頂き、安心して洗うことができるので、着る機会が増えたそうです。藤井絞りは、絞りのメーカーですが、実際に作るのはそれぞれの職人達で、藤井絞りはプロデューサー、オーケストラの指揮者みたいなもの。どんなデザインがいいか下絵屋さんと相談し、デザイン、色柄を決め、適した絞り職人さんに出し、同じように染めやさんにだし、自分のお店で検品、整理して、納品する、というのが仕事です。絞りは生地を大変いじめますので、オリジナルで織り出しています。また様々に縮みや色落ちなどは試験を重ね、扱いやすい、お手入れしやすい生地に工夫しています絞りは技法がたくさんありますが、写真は帽子絞り。芯(昔は新聞紙を巻いて、絞りの大きさに合わせて作ったそうです)に布を包み込み、木綿糸で絞りを施した物で、ちょうど帽子をかぶせた感じなので帽子絞りと言います。総絞りの振袖では20万粒以上絞り、1年はかかるそうです。1年間の職人さんを専念させるわけですから、おのずと高価なもになりますね。目の前で、両手で生地の耳をもってぴんと張ると、面白いように絞っていた糸が飛びます。随分と生地をいじめるわけですが、絹はしっかりしているんですね。会場もビックリ。右側のロープ状のものは、竜巻絞り。ヒダを付けて畳み込んだ反物をこのロープに巻いてゆき、染めます。ヒダが細かくなればなるほどロープが太くなってゆきます。偶然にも藤井社長の長着、立川さんのおきものがこの竜巻絞りでできたきものです。
1部は作る人交流。ゲストは京都・藤井絞(株)の藤井社長。サントリーの金麦のCMで壇れいが着ている浴衣が、藤井絞の浴衣。藤井社長によると雪花絞りは7年前から開発したものですが、やはりCMの影響は大きかったようで、この2~3年大ブレイク。絞りと言っても、もともと京都は鹿の子絞りに代表される絹地に精緻な絞りを施す豪奢な高級品、というか江戸時代は贅沢品といわれる高級品を作る絞り産地。そのため江戸時代は、奢侈禁止令で、何回も庶民が着用することを禁じられました。藤井絞は、この伝統の絞りを継承。一方、話題の雪花絞りは木綿に絞りを施すもので、庶民の技。昔は全国各地にそれぞれ特色のある絞りが、例えば豊後絞りとか、あったそうですが、江戸中期、地域の産業振興を企画した尾張藩により、有松、竹田絞りは東海道の名産品、土産物として大ヒットし、今日に至っています。絞りの1つの特色は「1絞り技法1職人」といわれるように職人1人が1つの絞り技法を習得しているため、その職人がいなくなるとその絞りの技術も途絶えてしまうそうです。日本は世界でも最高の絞り大国で、300、400といわれる絞り技法があるそうですが、いまは100にも満たないかも。そこで藤井絞は、絹物だけではなく、木綿も含め、絞りの技術を伝承、発展させようと産地を越えて、絞りに取り組んでいます。藤井社長が手に持っているのは「雪花絞り」を生み出す板締めのミニサンプル。三角形に板締めした、どの頂点をどれくらい浸し染めるかによって模様が変わってきます。2つ同じモノができない、どれも1点ものというのは、この加減がその日その時、その職人によって違うことから生まれます。
月刊アレコレ編集人の挨拶で、いよいよスタート。月刊アレコレは、毎月「着る人目線」で誌面を編集していますが、着る人を取材をしていると呉服店や作り手とのギャップを感じます。よく聞くのが、着たいきものがない、こんな時どうしている、同じようなモノがどうしてお店によって値段が違うの、お手入れが分からない、呉服屋さんの敷居が高い、などなどです。で誌面だけでなく、ダイレクトに着る人の声を発信し、売る人、作る人に着る人の声を届けようと企画したのがこの「着る人委員会」です。はじめは5人、10人も集まればと思っていましたが、150人を超え、こちらの態勢が整わないので委員になることをお待ち頂いている方もいるほどです。たいしたご褒美、プレミアムもないのに真剣に参加頂き、量の多いアンケートにも丁寧にお答え頂き、きもの環境が少しでも良くなるようお手伝いしたいという思いに感謝です。アンケートには、着る人の本音、実感が細々と書き込まれています。着る人同士の交換会やこういうきものが欲しい、という思いを作る人に伝え、作って欲しい。作る人や呉服屋さんに普段聞けない話を聞きたい、などなどです。ちょうどチーム∞アレコレでも商品企画を進めたばかりでしたので、このプロジェクトに着る人の意見を反映させようと、急遽プロジェクトに参画頂いている藤井絞りさん、西村織物さん、三勝さんにご相談し、ご協力頂き、月刊アレコレが普段お世話になっている呉服屋さんにもご協力頂き、スピーディに着る人委員会の要望をイベントに実現し、本日のイベントになりました。5時間の長丁場ですが、よろしくお願いします。
今回のイベントのスタッフは19人。会場の日本橋倶楽部があるコレド室町のオフィスフロアーが日曜日で全館休館の中、特別にイベントに貸してくれたので商業スペースとの区切りから、エントランス、エレベーターとセキュリティを解除するスタッフが必要で、着る人委員会の皆様にお手伝い頂きました。北海道から参加頂いた方Kさんにもお手伝い頂き、大変恐縮でした。でも、参加された皆さんが、我がことのように考え、イベントを盛り上げて頂いたコトが、成功の一番大きな原動力でした。