自宅にあった昔の真空管を使ったラジオは、現在も使用可能である。それは、横46cm、縦23cm、幅20cmとかなり大きい。約50年前、私が小学生の頃、父が購入したものである。その頃の家屋は、アメリカ人にウサギ小屋と言われたように非常に狭い。我が家も、4,5畳の部屋にホームコタツを中心に置き、家族5人が暖をとりながらラジオを聞いていた時代である。私も、花菱アチャコのドラマをかすかに記憶している。ラジオを聞くことが、夜の唯一の娯楽であった。
そのラジオ前面には、音量つまみ、選局つまみ、音質つまみの3種類がついている。しかし、それぞれの部品が違う。ひょっとすると、壊れた箇所を街の電気屋さんで修理してもらったのではないだろうか。それだけラジオは、貴重なものだったかもしれない。
このラジオは、スイッチを入れてもすぐには音がでない。10秒ぐらい経ってからやっとザ~ザ~と鳴り始める。電気が、いくつもの真空管をとおり、流れていく様子が光として見える。あたかも生き物のようだ。ちょっとぼんやりしたところが、今の私に似ていて愛着を覚える。