Slinky Loop Aerial
重さ400gのHFアンテナ、
スリンキーループ・アンテナの製作
60年以上前から販売されていたおもちゃ、トムボーイとこれまた60年以上前に売られ始めたフラフープとの組み合わせでHFアンテナができます。しかも重さ400gちょっとで3.5MHzから450MHzまで送信可能になります。
主な材料の一つは、その昔、皆さんの中でも遊んだ経験がおありの方もあると思います、スリンキーあるいはトムボーイという名前で販売されていたおもちゃです。スリンキーは1945年に特許を取得し、翌年から米国で販売されていました。日本では色のついていないものがトムボーイという名称で三光発条という会社で製造されて、販売されていました。 今では米国で意を輸入したものも含め、カラフルなものも販売されていますが、カラフルなものにはプラスチック製のものも販売されており、これらはアンテナには使用できないので気を付けてください。
その他、今回使用する主な部材はまた古くからあるフラフープというおもちゃです。フラフープは登録商標でフープという名称が一般名詞として使われているそうです。原型は古代ギリシャからあるそうで、現代のものは1958年から同じく米国で初めて販売されていたようです。
また、以前コンパクトアンテナハンドブックという本がありましたが、私はこの本に紹介されていたトムボーイを使ったダイポールアンテナが非常に強く印象にも残っていました。
https://www.nonstopsystems.com/radio/frank_radio_antenna.htm#top-of-page
今回試作したアンテナは、このトムボーイを使い、フラフープと組み合わせて作るループ型のアンテナです。 このアンテナは、最近ウェッブサーフィンしているときにTOM HAYLOCK, M0ZSA(QRZ.COMで見たところSilent keyと表示されていました)が書いたトムボーイを使ったHFアンテナ(彼はSlinky Hula aerialと呼んでいた)の紹介があり、以前読んだトムボーイを使ったダイポールを思い出しながら製作してみようと考えた次第です。
https://www.nonstopsystems.com/radio/pdf-ant/article-antenna-slinky-RDCM-11-2010.pdf
この記事を基に私も追試してみようと思い試作を始めました。使用した主な材料は
こんな材料で作った小型で軽量なアンテナでHFが出せるとはとても不思議です。
製作
製作はまずLアングルの加工から始めました。
いちいちナットで絞めるのも大変なので3mm厚の部材にそれぞれM3のタップでねじを切りました。
手順は、はじめに50x50のアングルの中央にMコネクタを付けました。位置は上辺に来るようにセンターで上端から約15mmの高さで左右の中心位置に14mm径の穴をあけ、コネクタの位置を決める。その後コネクタの4か所の固定穴位置をガイドにして2.5mmの下穴をあけ、その後M3のタップを立てた。
取り付けたMコネの横でぴったりに合わせて不等辺アングルを添わせた。重なりは約10mmになるのでその中央に2.5mmの穴を貫通させ、Lアングルに同様にタップをたて、不等辺アングルは3mmに穴を広げるとよい。しっかりと固定するようには2か所程度のねじ止めで十分です。下側のネジはその後フラフープに当たるので短く切断しました。
組み立ての概略は次の図のようになります。
次にフラフープの加工を始めます。 まず外径65cmのフラフープ(原文には2042mmの円周長とあった)のパイプのセンターにマークをし、この中心の両側の40mm離れた位置にマークする(マークの間隔は約80mmとなる)。この位置から最初のマークは50mm、次から60mm間隔で15か所マークをする。反対側も同様にマークする。 これらのマークの位置に3mmの穴を円周に直角になるように開けていきます。
スリンキーはアマゾンで検索したらすぐに見つかった。
このスリンキーのリングは終端部がカシメしてあるのでニッパで開放して使った。 スリンキーは、32回巻き分を切り取り、を33か所開けた穴に一巻きづつ通していきます。コイルの終端部には圧着端子をカシメ、後にハンダを流して接触抵抗を下げておきます。 コイルの素材は圧着する前にヤスリ掛けしておけばハンダ付けすることは可能でした。
パイプの取り付けはこのようになった。 簡易の雨よけにビニール袋をかけた。
フラフープの固定
フラフープの固定はスリンキーのリングの穴に通す前に50x50のアングルと20x20のアングルとで取り付け角度を決めなければなりません。 私はアングルの組み立て、バリコン取り付け、スリンキーのリング通しなどを先にしてしまったために再度スリンキーを外して角度調整を余儀なくされてしまい、220pFの足を折ってしまうことになってしまいました。
ここで、W1/4のネジは50x50のアングルの中央にあけてカメラの三脚に取り付けるためのものです。 また、M3ネジの縦の2つは三脚の取り付け部に当たるので皿ビスを使って当たらないようにした。 アングル自体が3mm厚もあるので皿ビスの頭を隠すテーパー穴をあけても十分に固定出来ました。 上からの抑えは私のジャンク箱にあった20x20のアングルの一部をカットして加工しました。 フラフープは50x50のアングルだけを床に寝かせて固定位置を決めるとよいと思います。
フラフープを支えるためのジグを作りました。Lアングルに穴をあけてM3のねじを2か所切っただけです。 中央の穴は3mmの穴で、正面の50mmアングルのM-コネクタ下にあけたM3ネジと長ネジで繋いで固定するようにしました。
また、配線図は
オリジナルからの改良点は、
- 大容量のバリコンが入手できなかったので手元にあった80pFのタイト製エアバリコンをメインに使用した。
- 5MHz帯のチューニングには容量不足だったので1kV耐圧の220pFのセラミックコンデンサを取り付け、トグルスイッチでON/OFFするようにした。
- チューニングの微調整のために20pFのタイト製エアバリコンと、その後同じく20pFのトリマーバリコンを並列に取り付けた。
- RF給電部とともにGND持ち上げポイントを作ってバンドごとの最低場所を探した。
スリンキー32回巻き分で作成したコイル部分のインダクタンス計測値は
となりました。周波数が上がると徐々にインダクタンスの減少が見られました。
20pFのバリコンを追加
微調整しやすくするために20pFのバリコンを追加した。
操作する側は、
最終的には3.5MHzから430MHzまで同調させることが可能であることがわかった。
20pFバリコンを並列に追加し、220pFの固定コンデンサの付け根が折れたので新しいコンデンサに付け替えて室内での調整を行ってまとめた。
6mではGND引き出しはGNDポイントからではSWRを下げきることができなかったが引き出しを4.6Tとし、接続先を30.8Tの位置にすることでSWR1.1以下まで下げることができた。
トリマーの追加
さらに、各バリコンの調整位置を最大値手前で余裕をもって合わせられるように最大20pFの小型のトリマーバリコンを取り付けた後またデータの取り直しを行って最終としました。
給電位置はコンデンサのライブ側からのターン数で示した。オリジナル文献ではグランド側からの位置で書いてあったが5Tあたりで探すと書いてあったが、今回の試作アンテナでは5Tつまり逆からの27Tでは、7MHz帯域ではSWR2.5が最低であった。
給電位置を変更することで3.5MHzから21MHzという広い範囲で使用可能であることがわかった。
基本的に屋外では晴れの日にしか使う予定はないが急な雨に備えてビニール袋で簡単な覆いを作って持ち歩くことにしました。
早速室内に立てたままでIC736に繋ぎFT8を試みたところ10月18日10:41、8J3TLR/3のロングライド高島の局にとってもらいました。私の出力は5W、受信:-08dBに対し私のレポートは-13dBでした。 これが私のSlinky Loop Aerial での1st Eva交信となりました。
大きなアンテナがなくてもHFが楽しめるのは素晴らしいことです。
その他の改良ポイント
再組み立て時に追加の220pコンデンサの足が折れたので220pFの新しいコンデンサに取り替え、分解、組み立て時にもだいじょうぶになるようにスリンキーの出口をアルミのフレーム側面に固定してコンデンサに力が加わることがないようにした。
最終的にはぎりぎりの設定で追い込みことができなくなりそうなところがあったので小型のトリマーコンデンサを付けて同調を取りやすくしました。これにより3.5MHzで両コンデンサを最大でぎりぎり位置でやっと同調できたのを解消することができました。
操作側はこのようになりました。緑のワニ口クリップはGNDポイントからの取り出しです。これで更にSWR を低いところまで追い込むことができるようになりました。
全重量は417gでしたのでカメラ用の三脚にも十分乗せることが可能です。
緑のワニ口クリップ付きの線はGNDの取り出し線で、接続を安定させるために基板用のスペーサーを使ってワニ口でくわえやすくしました。
最後に、TOM HAYLOCK, M0ZSAが彼のQRZ.COMのページにはSlinky Hula Aerialと紹介していたがフラフープが登録商標であり、英語圏での一般名としてはフープが一般的だとのことなので私はこのアンテナをスリンキーフープ・アンテナとして紹介したい。
最後までお読みいただきありがとうございました、。
以上 2019 Dec.17
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