<ここまでの話>
「<第1話> から <第18話>までのリンク」
「<第19話>10バンチコロニー・・」
「<第20-1話>暇つぶし?(1)」
「<第20-2話>暇つぶし?(2)」
「<第21話>作戦名は?」
「<第22話>サンダーボール作戦!」
------------------------------------------------------------------------------
旧ザクだとは、思えないような鋭い動きで挙動を変化させ間合いを詰めてきた・・
オレンジ色に輝くヒートホークでチコ伍長のボール3号機に襲い掛かる
(やばい!)
「チコぉ! 左だ! 左に回避だぁ!!」
・・・・・
と・・私の声よりも先に、チコ伍長のボール3号機が視界から消えた・・
私に見せた例の挙動だ! 旧ザクのパイロットも驚いているのだろう・・
動きが一瞬止まった!
モビルアーマーでもあるボールの挙動はモビルスーツの挙動とは違うのだ!
「さすが、チコちゃん!・・ よし!援護に回れっ!」
「・・・ ラジャ!♪」
目標を見失った旧ザクに向けて、3点射撃を放つ!
1発が、旧ザクの右足に命中し、脚部が吹き飛んだ! (良し!)
それを恨みに思ったか、今度は私の2号機に襲い掛かって来る!
片方の足が無い状態でのAMBAC(Active Mass Balance Auto Control)制御も遅くはない、
チコ伍長がすかさず援護射撃を撃ちこむ!
旧ザクが回避・・
その回避先を見越して、180ミリを撃ちこむ!
しかし、それも回避される・・
こちらの弾切れになるのが早いか、それとも、旧ザクのスラスター推進剤や
アポジモータのロケット燃料が先に無くなるか・・ 膠着状態が続く・・
突然ボールのコックピット内に警告音が鳴り響いた!
モニターの右上に赤い警告ランプが点滅する!
(しまった! こっちのバーニアか!)
警告はバーニア用の固形燃料が残り5%である事を告げていた!
推進用のロケット燃料は積み込んだのだが、
ボールの高機動を実現する、バーニア用の固形燃料が底をつきそうなのだ!
バーニアでの回避が出来なくなると、ボールなど単なる標的に化してしまう!
少しあった余裕が、完全に吹き飛んだ・・ チコは?・・ チコ伍長機の燃料残は?
全身から一気に汗が噴きだし、時間の経過が異常に長く感じ出す・・(ヤバイ!)
そんな不安を切り開くかのように、まばゆい一筋のビームが横切った!!
見慣れた光の筋、ビームガンだ!
(間に合ったか!・・)
ミィ少尉のジムコマンド214号機がスラスターを全開にし、一気に間合いを詰めて来る!
「・・・ 隊長!チコちゃん! お・ま・た・せ♪! 後は任せてね!」
旧ザクは躊躇する事無く、狙いをジムコマンドに移す・・
ショルダーアタックでジムコマンドに応戦をかけるが、ジムコマンドは
シールドでぶちかましを受け流し、足で旧ザクを蹴り上げた!
旧ザクの動きが一瞬停止した・・
「・・・ 隊長! ガトル2機は逃げちゃいました・・
ベリーツーとスリーは、既に次のステップに移行しています!
つっかかって来た1機はリン少尉が落としましたが・・」
「助かったぁ・・ ミィちゃん・・ 遅かったやん・・
バーニアがカラッポで、ちょっとやばかったぜ・・
でな・・ 手負いの旧ザクだからと、舐めてかかるなよ・・
ベテランだと言う事だ!」
「・・・ 了解! 隊長!」
「チコ伍長! まだ、終ってないぞ! ミィ少尉の援護に回ってくれ!
少し、距離を取れよ、ハラペコだろ?」
「・・・ キャサリ~ン♪ 了解です! バーニアなんてとっくに切れちゃってますよ
ボール乗りは、ロケットだけでもある程度動けないと駄目なんですよ大尉!
ミィ少尉へ、チコ援護に入ります!」
「・・・ チコちゃん、お願いね♪ さすがボール乗りね、左舷から回り込んでね♪
じゃ・・ チャンバラするから、見ててね ♪」
「・・・ ラジャ! 少尉!」
(そうか・・ 私はボール乗り不合格なのか・・
さすがだチコ伍長!・・ さて・・ あとは時間稼ぎか・・・)
私は二人の会話を聞いて、口元が緩んでいる事に気が付いた・・ 戦闘中なのに・・
でも、自然とこぼれる笑みを止める事ができなかった・・
旧ザクは一旦体制を取り直し、再度ミィ少尉に襲い掛かかった・・、
ミィ少尉はビームサーベルを抜き、おいでおいでと挑発している・・
(ミィ少尉・・ 何か吹っ切れたのか? それとも性格が変わったのか?)
旧ザクのヒートホークにジムコマンドのビームサーベルを合わせる、
オレンジ色とピンク色の火花がクロスしスパークする・・
片足を失っても動きに大きな影響が無いようには感じたが、やはり、MS同士が戦うと
動きの悪さは見て取れる・・ 完全に旧ザクには勝ち目は無い・・
更に考えると、こちらは新型のジムコマンドなのだ! モビルスーツの性能の差も大きい・・
それらを埋めるパイロットの力量・・ 失わない闘志・・
何度も言うが、さすがジオンのベテランパイロットだ・・ 手ごわい・・
思わず、声を出してしまう・・
「ミィ! 舐めてかかるな! じっくりと見極めて、時間を稼げ!!」
「・・・ 了解! でも・・ そろそろですよね・・隊長・・」
その時であった・・ 強烈に明るいオレンジ色のビームの太い束が、
戦闘エリアの上空をかすめた!
と同時に、オールレンジで通信が入る!
「・・・ ジオンの勇敢なるパイロットに告ぐ・・ あなたを包囲したわ・・
無駄な戦闘はもう止めて、投降しなさい!!」
オレンジ色のビームの束は、グリフィンから発射されたビーム砲だ
グリフィンの巨体がゆっくりと目の前に現れる・・
そして、ジオンの旧ザクパイロットが視認出来るように
グリフィンのMSデッキから、新たに1機のジムコマンドが発進した・・
オーリン曹長だ・・
すかさず、追い討ちの通信が入る・・
「・・・ こちらベリーツーヒロっす・・ 10バンチコロニージオン基地、制圧完了!
ユカちゃんが派手にバズーカをぶっ放しちゃって・・
俺が到着する前に、全部終っちゃってるの・・ 出る幕なしっす♪
なんか、ユカちゃん凄いって、クマちゃんがびっくらこいてたよん♪
以上! ミッションコンプリートっす!」
「・・・ ベリーツーお疲れ様! 了解したわ!
ジオンのパイロットさん・・ 聞こえたかしら?
あなた方の10バンチコロニー基地は、投降したわよ・・
帰る所は無くなっちゃいましたわね・・」
別動隊のユカ少尉とクマ軍曹は、作戦開始と同時に10バンチコロニーの裏から
コロニーに侵入し、基地の背後から攻撃をかけたのだ・・
コロニー内は重力下である・・ 宇宙空間専用機のジムコマンドでは不可能であり
重力下でも稼動可能な汎用機のジムだからこそ、実行できた作戦なのである・・・
しかし、ユカ少尉がヒロ中尉達の到着前に制圧しちゃったらしい・・
戦闘員が居なくなった基地であり、ジム2機に攻め込まれるだけでなく、
表方向から近づいてくる、ヒロ中尉達のジムコマンド2機も彼らは確認できただろう・・
抵抗する術が無く、投降するだろうとは想定出来た事ではあるが・・
あまりにも、あっけない・・
ユカ少尉・・ 一体どんな手を使ったんだ?
ミィ少尉と同様に、ユカ少尉も一皮むけたのかもしれない・・
そういえば昔から言われている・・「10回の訓練より、1回の実戦」と・・
この短期間の間に、隊員達がドンドン成長している事を嬉しく感じていた。
その時、突然通信が開いた・・
「・・・ そうか・・ 基地が投降したのか・・ あれは・・ 罠だったのか・・」
ジオンのパイロットの声だ・・ 私はその声に反応し返答してしまった・・
「ああ・・ そうさ・・ 文句があるか?」
「・・・ ん・・ その声は?・・」
「ああ・・ ボールの『エロがっぱ』だが・・
よく考えろよ! 自分の部下に手を出す隊長なんて・・
宇宙中捜しても、そんな奴いる訳が無いだろう!」
「・・・ そうか・・ 隊長さんかぁ・・
そりゃそうだよなぁ・・
私の戦いは・・ここで終ったか・・
ここで、死なせてはくれんのかな? 連邦の将校さんよ・・」
「・・・ 駄目ね・・ 勝手な事は、私が許しませんわ!
私は、地球連邦軍第21独立部隊グリフィン艦長マメハ大佐です・・
ハッチを開けて、投降しなさい! これは命令よ!」
「・・・ 解った・・ 基地の部下達の命は保証してくれるんだよな? 大佐殿?
ここが年貢の納め時か・・
了解した、投降する・・」
通信が切れると同時に、旧ザクのハッチが開き、旧ザクのパイロットが手を上げて
外に出て来た・・
グリフィンの艦中で、大きな歓声が沸きあがる!!
「・・・ 艦長です! サンダーボール作戦、終了よ!!
やったわね、みんな素敵よ ♪」
・・・・・
表からは、4機のジムコマンドとグリフィン、コロニー内からは2機のジム・・
それらの銃口が、コロニーの宇宙港に向けられる中、グリフィンから白兵武装した
クルー達がランチで宇宙港に向かう・・
緊張する場面だ・・、投降すると白旗を掲げているが、何人居るのかなど、詳細な
情報がない・・ ゲリラでも組まれると厄介だ・・
私とチコ伍長はボールのマニュピレーターで旧ザクを鹵獲し、グリフィンの
カーゴデッキに搬送した。
カーゴデッキに入ると、私は拳銃を構えボールを飛び出し
旧ザクのパイロットに向かう・・
カーゴデッキに数名の狙撃班が集結した事を確認し、カードデッキの扉を閉じ
エアーを注入する・・ ヘルメットを取り、ジオンのパイロットにもヘルメットを
取るように指示した・・
ヘルメットを取ったジオンのパイロットは、初老の男であった・・
「私は地球連邦軍グリフィンMS隊、ワサビィ大尉だ!
貴官の官姓名名乗れ!」
「私は・・ ジオン公国軍第403偵察隊、隊長のグレン少佐である。
南極条約に則り、隊員達、全員の安全を保証される物と考える
貴官の責任者と会談したい!
確か・・ マメハ大佐と名乗られた方がそうか?・・」
「質問は止めて頂きたい・・ 少佐殿には、将校としての待遇をお約束する。
申し訳ないが、手と足の一部を拘束し、目隠しをさせていただくが、
宜しいか?」
「ああ・・ 了解した・・」
「当番兵! 所持品を全て確認し、拘束を頼む・・
拘束後、空いている部屋にお連れし、交代で見張りに付いてくれ・・」
「イエス・サー!」
「グレン少佐殿、後で伺います、部下達の指示に従い部屋にご移動ください」
「ああ・・ 所で大尉・・1つだけ・・ 良いかな・・」
「何でしょうか?」
「我々の基地だが・・ ドンパチしたのか?」
「いいえ・・ できる限りの無血作戦です・・
若干の負傷者は出た可能性はありますが・・ 無駄な殺生は嫌いでね♪・・」
「ふふ・・ そうか・・ では、ガトルを逃がしたのも計画なんだな・・ そうか・・
で・・ 今は無粋な目隠しのため、見えないのだが・・
横に居た子がキャサリンちゃんか? 中々可愛い子だ・・」
「ああ・・ 頼りになる、私の部下さ ♪ 可愛いだろ?」
「私の最後の戦いは、良い相手だったようだな・・ ありがとう・・大尉・・」
そう言い残し、グレン少佐は兵に連れられ隔離部屋に向かった
その背中に向かい私は敬礼をし、声を掛けていた・・
「少佐殿も、素晴らしい腕前でした・・ 心から感服しております・・」と・・
・・・・・
「さて・・ コントロールデッキに行こうか?♪」
「ハイ! 大尉♪」
「でもな・・ ジオン訛りって言うのか・・
私は『ギレン少佐』って聞こえ、一瞬あせったぞ・・」
「あっ・・ 私もギレンって聞こえましたが・・
大尉がグレンって言われましたので・・ 聞き間違いに気付いたのですが・・」
「まぁな・・ コロニー育ちだからな・・ それでもややこしい・・ グレンとギレン・・」
「一文字違いで大違いですね・・」
「ああ・・ そうだな・・
で・・ デッキに入ったら、きっと揉み苦茶にされるぞ♪ 新たなヒーロ誕生ってな♪」
「そんなぁ・・ 私は逃げてただけですから・・」
「いや・・全員が聞いている、キャサリンは主演女優賞ものだ♪」
そんなバカ話をしながら、チコ伍長と共にコントロールデッキに入ったのだが・・
その場の空気は凍り付いていた・・
マスミン特務大尉のヒステリックな声がデッキにこだまする!
「何を言っている! 貴様じゃ話にならん! ワッケイン司令に繋いでくれ!」
異様な雰囲気だ・・
「艦長・・ ただ今帰りましたが・・ 何があったのですか?・・」
「お疲れ様、大尉・・そして伍長もよくやったわね♪
でね・・ 捕虜の件でルナツーに引き取ってもらうよう、話をしているのだけど・・
星一号作戦に入っているので、捕虜の受け取りが出来ない・・って言うの・・」
「そんな!・・ 我々だけじゃ、捕虜たちの監視や、食事の世話など・・
どう考えても不可能ですよ!・・」
「それは、私達が勝手な作戦を実施したから・・と、取り合ってくれないのね・・
やるなら、完全に破壊しちゃえば良いのに・・が彼らの主張よ・・
まぁ・・ 理由は理解もできるけど・・
実施したのは私だから、責任は私にあるわ・・ 気にはしなくて結構よ♪」
「そうは言いましても艦長・・ どうにも出来ないですよ・・」
「とにかく、ルナツーとの交渉はマスミン参謀に任せるわ・・
そうそう・・ ジオンの捕虜は少佐ですわね・・ 佐官かぁ・・
ちょっと重いわね・・
話をしたいから、一緒に付き合ってくださる?」
「はい・・ それはご一緒します、あとビジー軍曹も同席させればと・・」
「そうね・・ 専門的な話が聞けるかもしれないわね・・
軍曹にも同席をお願いしましょう」
「じゃ・・ オペレータ・・ ビジー軍曹を呼び出して
ジオンの捕虜を監禁している部屋の前で待機するよう伝えてくれ!」
「了解です 大尉!」
怒りが収まらないマスミン特務大尉が、こちらにやってくる・・
開口一番・・
「貴様だ! 貴様がこんな作戦を思いつくから・・
大変な事になってしまうではないか!!
ほんとに、次から次へと、新しい問題を引き起こす!
今回だって、敵のモビルスーツが出てきたら、一目散に逃げるのでは
なかったのか? ええっ! 勝手に戦闘など始めて!
ほんとに勝手な事ばかり!!」
「そう怒らずに・・ しわが増えますよ・・」
「うるさい! うるさい! うるさい!!」
「はぁ・・ すまんです・・ で・・何か妙案でも?」
「あるわけないだろ! ほんとにもう!!」
「ワッケイン司令とは?」
「連絡待ちだ・・ もう・・ ほんとに・・司令だけが頼りだわ・・」
「時期が悪かったみたいですね・・ 星一号作戦が発令された・・って
確かにおっしゃってましたし・・
しかし、そこまでは気が回らなかったしなぁ・・」
「まぁ・・
誰に何処で作戦の事を聞いたのかは別にして、痴話げんかはその辺で・・
ここはマスミン参謀にお任せして、捕虜に会いに行くわよ・・
マスミン参謀、何かあったら、連絡してくださいね?
副長! しばらく頼むわね・・」
艦長と私は、ジオンのグレン少佐を監禁している部屋に向かった・・
「しかし・・ 艦長・・ 痴話げんかって一体・・」
「痴話げんかでなかったら・・ 夫婦漫才かしら♪」
「そ・・ そんなぁ・・」
「<第24話>(SS-1)別働隊!」に続く・・
------------------------------------------------------------------------------
↓↓押してくれたら嬉しいな↓↓
「<第1話> から <第18話>までのリンク」
「<第19話>10バンチコロニー・・」
「<第20-1話>暇つぶし?(1)」
「<第20-2話>暇つぶし?(2)」
「<第21話>作戦名は?」
「<第22話>サンダーボール作戦!」
------------------------------------------------------------------------------
旧ザクだとは、思えないような鋭い動きで挙動を変化させ間合いを詰めてきた・・
オレンジ色に輝くヒートホークでチコ伍長のボール3号機に襲い掛かる
(やばい!)
「チコぉ! 左だ! 左に回避だぁ!!」
・・・・・
と・・私の声よりも先に、チコ伍長のボール3号機が視界から消えた・・
私に見せた例の挙動だ! 旧ザクのパイロットも驚いているのだろう・・
動きが一瞬止まった!
モビルアーマーでもあるボールの挙動はモビルスーツの挙動とは違うのだ!
「さすが、チコちゃん!・・ よし!援護に回れっ!」
「・・・ ラジャ!♪」
目標を見失った旧ザクに向けて、3点射撃を放つ!
1発が、旧ザクの右足に命中し、脚部が吹き飛んだ! (良し!)
それを恨みに思ったか、今度は私の2号機に襲い掛かって来る!
片方の足が無い状態でのAMBAC(Active Mass Balance Auto Control)制御も遅くはない、
チコ伍長がすかさず援護射撃を撃ちこむ!
旧ザクが回避・・
その回避先を見越して、180ミリを撃ちこむ!
しかし、それも回避される・・
こちらの弾切れになるのが早いか、それとも、旧ザクのスラスター推進剤や
アポジモータのロケット燃料が先に無くなるか・・ 膠着状態が続く・・
突然ボールのコックピット内に警告音が鳴り響いた!
モニターの右上に赤い警告ランプが点滅する!
(しまった! こっちのバーニアか!)
警告はバーニア用の固形燃料が残り5%である事を告げていた!
推進用のロケット燃料は積み込んだのだが、
ボールの高機動を実現する、バーニア用の固形燃料が底をつきそうなのだ!
バーニアでの回避が出来なくなると、ボールなど単なる標的に化してしまう!
少しあった余裕が、完全に吹き飛んだ・・ チコは?・・ チコ伍長機の燃料残は?
全身から一気に汗が噴きだし、時間の経過が異常に長く感じ出す・・(ヤバイ!)
そんな不安を切り開くかのように、まばゆい一筋のビームが横切った!!
見慣れた光の筋、ビームガンだ!
(間に合ったか!・・)
ミィ少尉のジムコマンド214号機がスラスターを全開にし、一気に間合いを詰めて来る!
「・・・ 隊長!チコちゃん! お・ま・た・せ♪! 後は任せてね!」
旧ザクは躊躇する事無く、狙いをジムコマンドに移す・・
ショルダーアタックでジムコマンドに応戦をかけるが、ジムコマンドは
シールドでぶちかましを受け流し、足で旧ザクを蹴り上げた!
旧ザクの動きが一瞬停止した・・
「・・・ 隊長! ガトル2機は逃げちゃいました・・
ベリーツーとスリーは、既に次のステップに移行しています!
つっかかって来た1機はリン少尉が落としましたが・・」
「助かったぁ・・ ミィちゃん・・ 遅かったやん・・
バーニアがカラッポで、ちょっとやばかったぜ・・
でな・・ 手負いの旧ザクだからと、舐めてかかるなよ・・
ベテランだと言う事だ!」
「・・・ 了解! 隊長!」
「チコ伍長! まだ、終ってないぞ! ミィ少尉の援護に回ってくれ!
少し、距離を取れよ、ハラペコだろ?」
「・・・ キャサリ~ン♪ 了解です! バーニアなんてとっくに切れちゃってますよ
ボール乗りは、ロケットだけでもある程度動けないと駄目なんですよ大尉!
ミィ少尉へ、チコ援護に入ります!」
「・・・ チコちゃん、お願いね♪ さすがボール乗りね、左舷から回り込んでね♪
じゃ・・ チャンバラするから、見ててね ♪」
「・・・ ラジャ! 少尉!」
(そうか・・ 私はボール乗り不合格なのか・・
さすがだチコ伍長!・・ さて・・ あとは時間稼ぎか・・・)
私は二人の会話を聞いて、口元が緩んでいる事に気が付いた・・ 戦闘中なのに・・
でも、自然とこぼれる笑みを止める事ができなかった・・
旧ザクは一旦体制を取り直し、再度ミィ少尉に襲い掛かかった・・、
ミィ少尉はビームサーベルを抜き、おいでおいでと挑発している・・
(ミィ少尉・・ 何か吹っ切れたのか? それとも性格が変わったのか?)
旧ザクのヒートホークにジムコマンドのビームサーベルを合わせる、
オレンジ色とピンク色の火花がクロスしスパークする・・
片足を失っても動きに大きな影響が無いようには感じたが、やはり、MS同士が戦うと
動きの悪さは見て取れる・・ 完全に旧ザクには勝ち目は無い・・
更に考えると、こちらは新型のジムコマンドなのだ! モビルスーツの性能の差も大きい・・
それらを埋めるパイロットの力量・・ 失わない闘志・・
何度も言うが、さすがジオンのベテランパイロットだ・・ 手ごわい・・
思わず、声を出してしまう・・
「ミィ! 舐めてかかるな! じっくりと見極めて、時間を稼げ!!」
「・・・ 了解! でも・・ そろそろですよね・・隊長・・」
その時であった・・ 強烈に明るいオレンジ色のビームの太い束が、
戦闘エリアの上空をかすめた!
と同時に、オールレンジで通信が入る!
「・・・ ジオンの勇敢なるパイロットに告ぐ・・ あなたを包囲したわ・・
無駄な戦闘はもう止めて、投降しなさい!!」
オレンジ色のビームの束は、グリフィンから発射されたビーム砲だ
グリフィンの巨体がゆっくりと目の前に現れる・・
そして、ジオンの旧ザクパイロットが視認出来るように
グリフィンのMSデッキから、新たに1機のジムコマンドが発進した・・
オーリン曹長だ・・
すかさず、追い討ちの通信が入る・・
「・・・ こちらベリーツーヒロっす・・ 10バンチコロニージオン基地、制圧完了!
ユカちゃんが派手にバズーカをぶっ放しちゃって・・
俺が到着する前に、全部終っちゃってるの・・ 出る幕なしっす♪
なんか、ユカちゃん凄いって、クマちゃんがびっくらこいてたよん♪
以上! ミッションコンプリートっす!」
「・・・ ベリーツーお疲れ様! 了解したわ!
ジオンのパイロットさん・・ 聞こえたかしら?
あなた方の10バンチコロニー基地は、投降したわよ・・
帰る所は無くなっちゃいましたわね・・」
別動隊のユカ少尉とクマ軍曹は、作戦開始と同時に10バンチコロニーの裏から
コロニーに侵入し、基地の背後から攻撃をかけたのだ・・
コロニー内は重力下である・・ 宇宙空間専用機のジムコマンドでは不可能であり
重力下でも稼動可能な汎用機のジムだからこそ、実行できた作戦なのである・・・
しかし、ユカ少尉がヒロ中尉達の到着前に制圧しちゃったらしい・・
戦闘員が居なくなった基地であり、ジム2機に攻め込まれるだけでなく、
表方向から近づいてくる、ヒロ中尉達のジムコマンド2機も彼らは確認できただろう・・
抵抗する術が無く、投降するだろうとは想定出来た事ではあるが・・
あまりにも、あっけない・・
ユカ少尉・・ 一体どんな手を使ったんだ?
ミィ少尉と同様に、ユカ少尉も一皮むけたのかもしれない・・
そういえば昔から言われている・・「10回の訓練より、1回の実戦」と・・
この短期間の間に、隊員達がドンドン成長している事を嬉しく感じていた。
その時、突然通信が開いた・・
「・・・ そうか・・ 基地が投降したのか・・ あれは・・ 罠だったのか・・」
ジオンのパイロットの声だ・・ 私はその声に反応し返答してしまった・・
「ああ・・ そうさ・・ 文句があるか?」
「・・・ ん・・ その声は?・・」
「ああ・・ ボールの『エロがっぱ』だが・・
よく考えろよ! 自分の部下に手を出す隊長なんて・・
宇宙中捜しても、そんな奴いる訳が無いだろう!」
「・・・ そうか・・ 隊長さんかぁ・・
そりゃそうだよなぁ・・
私の戦いは・・ここで終ったか・・
ここで、死なせてはくれんのかな? 連邦の将校さんよ・・」
「・・・ 駄目ね・・ 勝手な事は、私が許しませんわ!
私は、地球連邦軍第21独立部隊グリフィン艦長マメハ大佐です・・
ハッチを開けて、投降しなさい! これは命令よ!」
「・・・ 解った・・ 基地の部下達の命は保証してくれるんだよな? 大佐殿?
ここが年貢の納め時か・・
了解した、投降する・・」
通信が切れると同時に、旧ザクのハッチが開き、旧ザクのパイロットが手を上げて
外に出て来た・・
グリフィンの艦中で、大きな歓声が沸きあがる!!
「・・・ 艦長です! サンダーボール作戦、終了よ!!
やったわね、みんな素敵よ ♪」
・・・・・
表からは、4機のジムコマンドとグリフィン、コロニー内からは2機のジム・・
それらの銃口が、コロニーの宇宙港に向けられる中、グリフィンから白兵武装した
クルー達がランチで宇宙港に向かう・・
緊張する場面だ・・、投降すると白旗を掲げているが、何人居るのかなど、詳細な
情報がない・・ ゲリラでも組まれると厄介だ・・
私とチコ伍長はボールのマニュピレーターで旧ザクを鹵獲し、グリフィンの
カーゴデッキに搬送した。
カーゴデッキに入ると、私は拳銃を構えボールを飛び出し
旧ザクのパイロットに向かう・・
カーゴデッキに数名の狙撃班が集結した事を確認し、カードデッキの扉を閉じ
エアーを注入する・・ ヘルメットを取り、ジオンのパイロットにもヘルメットを
取るように指示した・・
ヘルメットを取ったジオンのパイロットは、初老の男であった・・
「私は地球連邦軍グリフィンMS隊、ワサビィ大尉だ!
貴官の官姓名名乗れ!」
「私は・・ ジオン公国軍第403偵察隊、隊長のグレン少佐である。
南極条約に則り、隊員達、全員の安全を保証される物と考える
貴官の責任者と会談したい!
確か・・ マメハ大佐と名乗られた方がそうか?・・」
「質問は止めて頂きたい・・ 少佐殿には、将校としての待遇をお約束する。
申し訳ないが、手と足の一部を拘束し、目隠しをさせていただくが、
宜しいか?」
「ああ・・ 了解した・・」
「当番兵! 所持品を全て確認し、拘束を頼む・・
拘束後、空いている部屋にお連れし、交代で見張りに付いてくれ・・」
「イエス・サー!」
「グレン少佐殿、後で伺います、部下達の指示に従い部屋にご移動ください」
「ああ・・ 所で大尉・・1つだけ・・ 良いかな・・」
「何でしょうか?」
「我々の基地だが・・ ドンパチしたのか?」
「いいえ・・ できる限りの無血作戦です・・
若干の負傷者は出た可能性はありますが・・ 無駄な殺生は嫌いでね♪・・」
「ふふ・・ そうか・・ では、ガトルを逃がしたのも計画なんだな・・ そうか・・
で・・ 今は無粋な目隠しのため、見えないのだが・・
横に居た子がキャサリンちゃんか? 中々可愛い子だ・・」
「ああ・・ 頼りになる、私の部下さ ♪ 可愛いだろ?」
「私の最後の戦いは、良い相手だったようだな・・ ありがとう・・大尉・・」
そう言い残し、グレン少佐は兵に連れられ隔離部屋に向かった
その背中に向かい私は敬礼をし、声を掛けていた・・
「少佐殿も、素晴らしい腕前でした・・ 心から感服しております・・」と・・
・・・・・
「さて・・ コントロールデッキに行こうか?♪」
「ハイ! 大尉♪」
「でもな・・ ジオン訛りって言うのか・・
私は『ギレン少佐』って聞こえ、一瞬あせったぞ・・」
「あっ・・ 私もギレンって聞こえましたが・・
大尉がグレンって言われましたので・・ 聞き間違いに気付いたのですが・・」
「まぁな・・ コロニー育ちだからな・・ それでもややこしい・・ グレンとギレン・・」
「一文字違いで大違いですね・・」
「ああ・・ そうだな・・
で・・ デッキに入ったら、きっと揉み苦茶にされるぞ♪ 新たなヒーロ誕生ってな♪」
「そんなぁ・・ 私は逃げてただけですから・・」
「いや・・全員が聞いている、キャサリンは主演女優賞ものだ♪」
そんなバカ話をしながら、チコ伍長と共にコントロールデッキに入ったのだが・・
その場の空気は凍り付いていた・・
マスミン特務大尉のヒステリックな声がデッキにこだまする!
「何を言っている! 貴様じゃ話にならん! ワッケイン司令に繋いでくれ!」
異様な雰囲気だ・・
「艦長・・ ただ今帰りましたが・・ 何があったのですか?・・」
「お疲れ様、大尉・・そして伍長もよくやったわね♪
でね・・ 捕虜の件でルナツーに引き取ってもらうよう、話をしているのだけど・・
星一号作戦に入っているので、捕虜の受け取りが出来ない・・って言うの・・」
「そんな!・・ 我々だけじゃ、捕虜たちの監視や、食事の世話など・・
どう考えても不可能ですよ!・・」
「それは、私達が勝手な作戦を実施したから・・と、取り合ってくれないのね・・
やるなら、完全に破壊しちゃえば良いのに・・が彼らの主張よ・・
まぁ・・ 理由は理解もできるけど・・
実施したのは私だから、責任は私にあるわ・・ 気にはしなくて結構よ♪」
「そうは言いましても艦長・・ どうにも出来ないですよ・・」
「とにかく、ルナツーとの交渉はマスミン参謀に任せるわ・・
そうそう・・ ジオンの捕虜は少佐ですわね・・ 佐官かぁ・・
ちょっと重いわね・・
話をしたいから、一緒に付き合ってくださる?」
「はい・・ それはご一緒します、あとビジー軍曹も同席させればと・・」
「そうね・・ 専門的な話が聞けるかもしれないわね・・
軍曹にも同席をお願いしましょう」
「じゃ・・ オペレータ・・ ビジー軍曹を呼び出して
ジオンの捕虜を監禁している部屋の前で待機するよう伝えてくれ!」
「了解です 大尉!」
怒りが収まらないマスミン特務大尉が、こちらにやってくる・・
開口一番・・
「貴様だ! 貴様がこんな作戦を思いつくから・・
大変な事になってしまうではないか!!
ほんとに、次から次へと、新しい問題を引き起こす!
今回だって、敵のモビルスーツが出てきたら、一目散に逃げるのでは
なかったのか? ええっ! 勝手に戦闘など始めて!
ほんとに勝手な事ばかり!!」
「そう怒らずに・・ しわが増えますよ・・」
「うるさい! うるさい! うるさい!!」
「はぁ・・ すまんです・・ で・・何か妙案でも?」
「あるわけないだろ! ほんとにもう!!」
「ワッケイン司令とは?」
「連絡待ちだ・・ もう・・ ほんとに・・司令だけが頼りだわ・・」
「時期が悪かったみたいですね・・ 星一号作戦が発令された・・って
確かにおっしゃってましたし・・
しかし、そこまでは気が回らなかったしなぁ・・」
「まぁ・・
誰に何処で作戦の事を聞いたのかは別にして、痴話げんかはその辺で・・
ここはマスミン参謀にお任せして、捕虜に会いに行くわよ・・
マスミン参謀、何かあったら、連絡してくださいね?
副長! しばらく頼むわね・・」
艦長と私は、ジオンのグレン少佐を監禁している部屋に向かった・・
「しかし・・ 艦長・・ 痴話げんかって一体・・」
「痴話げんかでなかったら・・ 夫婦漫才かしら♪」
「そ・・ そんなぁ・・」
「<第24話>(SS-1)別働隊!」に続く・・
------------------------------------------------------------------------------
↓↓押してくれたら嬉しいな↓↓