概要説明
電気自動車の普及に関して一中古EVユーザーの視点で書いてみました。ストーリーは以下のようなものです。
・日本の自動車産業は中国米国欧州の海外市場に経営を依存しているが、米国テスラ、中国のBYD、韓国のHyundaiがEV市場の大半を占めながら、急速にEVのシェアが立ち上がっており、これら海外市場向けの日本のEV開発の立ち遅れは深刻な問題である。
価格面というより、生産のための資源の確保、バッテリーの温度管理や充電速度などの基本性能、そしてソフトウェア面で大きく引き離されており、戦意喪失状態で日本市場にまで価格競争力の高い輸入EVが入り始めている。
・日本では新車販売中のEVのシェアは3〜4%で低迷している。これに比べ最近数ヶ月では中国市場はシェア30%、欧州市場は20%(充電インフラの整っているノルウェーは90%)、タイなどの新興国市場ですら10%越えとなり日本のメーカーは蒼くなっている。Premium Stage電気自動車と再生可能エネルギーやEVネイティブ【日本一わかりやすい電気自動車チャンネル】 のYoutubeチャンネルより。
・日本の自動車産業が衰退することで、いよいよ日本円の円安傾向は長期的に確定してしまい、最終的には、中国韓国や東南アジアの新興国に対して石油、ガスを「買い負ける」ことで、国内の化石燃料が欠乏することによる温暖化対策の進展、などというハードランディングシナリオも想定する必要が出てくる。
・古典的なピークオイル危機問題だけでなくIEAが指摘する「ピークオイルデマンド」後の社会にも備える必要がある。
・この生産量ピーク越えについて、日本社会における危機感が足りない問題は、充電インフラ整備の立ち遅れを通じて、日本の自動車産業の衰退を引き起こしかねない問題であるため、日本国内でのEV普及政策は重要である。
・しかし、愛媛県内においても、充電インフラの拡充とは言えない状況が続いていることが、大容量の相対的に高価なEVしか売れない市場ともなり、さらに普及の遅れにつながる悪循環を起こすことになっている。
例えば、ここ10年ほどは佐田岬半島では2ヵ所の道の駅にしか急速充電器はなかったが、一箇所は昨年撤去され新たにおなじ一口で工事中、もう一箇所はショートしている、とエラーメッセージが出ているままで、およそ国道としての機能を喪失している。
産業政策として、一箇所で複数口の充電設備への入れ替えなどを進めるべき。
――ここから――
★印部分がコメント案(ページ数は本文のもの)
愛媛県地球温暖化対策実行計画(改定素案)の概要
P.1 1 計画の基本的事項
P.1〜 1-1 地球温暖化の現状と国内外の動向
★国際交渉の動向、産業界の動向に大きく影響する、「ピークオイルデマンド」とその影響を記述しすべき。
「世界の石油ガス石炭需要は2030年までにピークを打つとIEAは予測している。」と欧米のニュース各紙は、国際エネルギー機関IEAがWEO2023を公開して、そこで化石燃料の需要ピークが2030年までに来ることを報道しています。
ロイター:世界の石油ガス石炭需要は2030年までにピークを打つとIEA
https://www.reuters.com/business/energy/world-oil-gas-coal-demand-peak-by-2030-iea-says-2023-10-24/
一方OPECや石油メジャーは、この予測により石油への投資が鈍ることで、スループットの限界を通じて石油の短期的な価格高騰(擬似的ピークオイル危機)を引き起こすとIEAの予測を強く批判している。(石油産業側としては、「ピークオイルデマンド」(需要側要因に伴う生産量のピーク越えとその後の恒久的な減少)自体を警戒している。)
以下、ピークオイルデマンドについてまとめました。
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◆石油需要主導のピークは来るだろうか?
近年、ピークオイルデマンドという概念が大きな関心を集めている。
ピークオイルデマンドの背景にある考え方は、生産側の、ストックの限界に基づくピークオイルが起こる前に、石油需要の転換(トランジション)によって、世界の石油生産量が最大レベルに達し、その後減少に転じるというものである。
この減少(ピーク越え)は、世界経済、エネルギー安全保障、環境に重大な影響を及ぼす可能性がある。しかし、石油需要主導のピークは起こるのだろうか?
◆ピークオイル論とは何か?
(生産の限界に基づく従来の)ピークオイルとは、世界の石油生産量が最大に達し、その後生産量が減少に転じる仮想的な時点を指す。石油の生産量は釣鐘型のカーブを描き、最初は生産量が増加し、その後ピークに達し、そして減少に転じるという観察に基づいている。(前の投稿より)
ピークオイル論のユーレカ!とは「危機は枯渇の最期の一滴を使い切る時ではなく、ピークを越える瞬間に起こるのだ」、ということ。
今は第三次オイルショックである、すなわちピークオイル危機であるという論争が決着したのは、2008年のリーマンショック直前の一瞬のことだった。日本ではほとんど議論が政治課題には昇らなかったが、認識上のピークオイル危機は起きて過ぎ去ったこと。それに続いて金融/経済の崩壊に伴い、需要が崩壊し一時的な緩和となった。
さらに同時期から増加した、米国内におけるシェールオイル採掘の技術革新に伴う大規模な「シェール(オイル/ガス)革命」によって、以降10年以上の生産拡大が続き、米国は1970年から続いていた生産量低下から一転、世界最大の石油生産国となった。前トランプ政権の一国主義的な主張の根本原因はココ(米国が産油国として自給できるという概念)にある。
在来原油のピークは2005年〜08年であるとされているが、米国のシェールオイルやカナダのタールサンド、メキシコ湾の深海油田などの非在来原油の開発がそれに取って代わった、と言われるようになった。
◆ピークオイルデマンド論とは何か?
ピークオイル論に代わってその頃から始まった議論が、ピークオイルデマンドがピークオイルよりも先に来るのではないか、という概念である。
気候危機の深刻化に伴い、石油需要をEVで代替する、化石燃料発電を再生可能エネルギーで代替する、需要側の削減措置を政策導入(エネルギーについての脱成長路線)して減らすことが進めば、温暖化対策にはなるものの、化石燃料資本が行き詰まるとする産業界側の危機感を表したのがピークオイルデマンド論である。
ピークを過ぎた産業への投資は激減し、逃げ出すインフラは時間が経つに従い不便さを増し、言わば社会的なティッピング・ポイントを過ぎて産業界自体が激変する…という危機論である。
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…2030年までにピークオイルデマンドが起こるとすれば、その時点で従来のガソリン自動車販売は終了し、日本の自動車産業が衰退することで、いよいよ日本円の円安傾向は長期的に確定してしまい、最終的には、中国韓国や東南アジアの新興国に対して石油、ガスを「買い負ける」ことで、国内の化石燃料が欠乏することによる温暖化対策の進展、などというハードランディングシナリオも想定する必要が出てくる。
P.13〜42 4 温室効果ガス等の削減目標(区域施策編)
4-2 削減目標等の達成に向けた対策・施策
○本計画の基本方針を踏まえ、削減目標等の達成に向け、以下の対策・施策を推進します。
(3)環境負荷の小さい交通の促進
○ガソリン車から電動車への転換 ○公共交通機関や自転車等の利用拡大 ○交通渋滞の緩和・交通の円滑化
○物流、輸配送の効率化
★潜在的には温暖化対策とピークオイル危機対応はウインウインとなるので、このピークオイル危機対応の観点からも温暖化対策を進めるべきである、ということを記述すべき。1-1の★のような国際情勢を起こりうるものとしてストーリーを作ることで、削減目標等の受容性が高まると考える。
★効果的な気候変動対策の原則として巷間挙げられているうちの、
- 可能な限り全て電化 →★EV
- 再エネを過剰建設 →★自宅の再エネで充電 自宅のPV→EV、そしてV2H化
- 大規模送電網と市場創設 →★経路充電(高速道路SAPAなど)での急速充電ネットワーク&VPP(バーチャル発電所)
- 揚水や蓄電池等の建設 →★EVの電池開発に付随して家庭用電力系統用蓄電池普及も拡大させる
…と温暖化対策と多く関係するのがEVであるといえる。これらの区域政策を進めることが温暖化対策としても重要となる。
よって、特にEV推進のため、一箇所で複数口の充電設備への入れ替えなどを進めるべき。
5 県の事務事業における削減目標(事務事業編)
P.46 5-1 削減目標
○県自らも、一事業者として率先し、これまで実施してきた省エネの推進に加え、ハード面での対策を大幅に強化及び再生可能エネルギーの活用を拡大することで、県の事務事業に伴う温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比50%削減を掲げます。
★行政機関としては、業務継続こそが至上命題であるので、ピークオイル(デマンド)シナリオ、つまり第三次石油ショック的な価格高騰ないし輸入量減少といった危機時に対応するBCPを策定するべきである。■
さて、
参考までに、昔々(2010年)のIEAの在来原油ピークオイル時の後の評価グラフを転載しておきます。http://sgw2.seesaa.net/article/127917477.html より?。
どんどんリアルタイムで探査や開発をしないと手に入らないのが新規の石油である、既存の油田は絶えず減耗を続けていて産出量は減り続けている、ということをみんな分かっていないというのが大きな問題なんでしょうね。
カーボンブリーフ
”分析:世界のCO2排出は2023年にも(需要端)ピークを打つ、とIEAのデータは物語る。”!