ファルコナー議長は、議論を喚起するために、各国にとってあえて「高いボール」投げたとする内容。
その議論はわが国にももちろん大きな影響がでる。
わが国の政府は、どちらかといえば、WTOファンダメンタル。これにどう対応するかが鍵だろう。
ところで、2月23日に行われた外務省主催の「WTOとEPAセミナー」は参考になる。
以下5月2日読売新聞
世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)のファルコナー農業交渉議長が4月30日に示した新しい議長案は、日本だけでなく、アメリカや欧州連合(EU)にとっても厳しい内容だった。議長は米国のTPA(通商一括交渉権)が期限切れとなる6月末までに大枠合意案を示し、7月末までの合意を目指す考えだが、各国・地域の反発も予想され、予断を許さない状況が続きそうだ。(ワシントン 矢田俊彦、ドーハ 中村宏之)
「交渉進展のため、農業補助金を削減する決意がある」。ファルコナー議長が新議長案でアメリカに農業補助金の削減を求めた直後、ブッシュ大統領は記者会見で、交渉妥結への意欲を示した。ただし、「他国が関税削減でアメリカ同様(の譲歩)に応じる」ことが前提だ。
米農業補助金は、EUなど多くの加盟国が年間150億ドル以下に減らすよう求めてきたが、米国は220億ドルと主張して対立が続いている。新議長案は190億~100億ドル台前半への削減を打ち出したが、米国内の情勢は厳しい。
超党派の有力議員58人は4月中旬、大統領に書簡を送り、「農業交渉の方向性に深い懸念を表明する」とけん制した。米政権はTPA更新の承認を得るため米議会への配慮が欠かせず、妥協しにくいのが実情だ。
新議長案は、EUにとっても悩ましい。EUは牛肉やバターなど高関税品の関税を税率100%前後まで段階的に引き下げてきた。新議長案は、これらの品目の関税削減率について、EUが主張する「60%」と、米国の主張する「85%」の間で決めるよう提案し、EUに追加譲歩を迫った。
新議長案をのめば、EU域内の農業が痛手を被るのは必至だ。EUは議長国の大国ドイツが交代する6月末までに交渉妥結の道筋をつけようとしてきたが、難しい選択を迫られる。
ファルコナー議長は、難航する主要な交渉項目について、あえて「高いボール」を加盟各国・地域に投げて議論を喚起し、交渉を加速させることを狙った。
しかし、発展途上国の農産物を自由化の対象外とする「特別品目」の範囲も従来よりも狭めるなど、「どの加盟国・地域にとっても厳しい内容を含む」(日本の農水省幹部)ものだけに、かえって反発を招き交渉が停滞する可能性もある。5月7日にジュネーブで開かれる非公式農業交渉が注目される。
重要品目1%なら、コメすら守れず
新議長案は日本の農業関係者にも衝撃を与えている。農産物自由化の対象から除外する「重要品目」を「(全品目の)1~5%」(13~66品目)とする提案が現実になれば、高関税品目が多い日本は「内外価格差が逆転している農産物が無秩序な輸出攻勢にさらされる」(農水省)からだ。全国農業協同組合中央会(JA全中)も「内容を精査しないと分からない」としながらも、戸惑いを隠せない。
日本は、コメだけでも一般の精米、玄米、せんべいなどの原料になる米粉、コメを原料にした調製食料品など17品目ある。仮に、「重要品目」が1%にとどまればコメ関連の項目すら守りきることはできない。
このほか、乳製品もバター、脱脂粉乳など47品目、砂糖56品目、小麦20品目など高関税品目の数は100品目を超え、乳製品や砂糖、でんぷんなど、離島や山間地などの雇用、収入を支える最重要品目も多い。
関税に上限を設定する「上限関税」について、新議長案は言及しなかったが、これまでの議論では、「重要品目」を上限関税の対象にすべきだという意見と、対象から除外すべきだという意見がある。「重要品目」にも適用する形で上限関税が導入されれば、コメ(精米)の778%など高関税が多い日本はさらに打撃となる。「上限関税」を巡る議論の行方が予断を許さず、農水省は今後の交渉で巻き返しを図る方針だ。(梅津一太)
(2007年5月2日 読売新聞)
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