今日の一貫

菅デフレ宣言は日銀対策?

菅直人副首相の「ゆるやかなデフレ宣言」の思惑が、朝日に詳しい。
要は日銀対策のようだ。
20兆円規模の量的緩和か?

(経済政策を問う)デフレ日本、どう打開 菅副総理に聞く
2009/11/23 朝日新聞 朝刊 3ページ 3261文字

 日本経済の足元が揺らいでいる。景気の二番底が懸念され、マニフェスト(政権公約)予算の編成も難航が予想される。「コンクリートから人へ」を掲げる鳩山政権は再び経済を成長軌道に乗せられるのか。3年5カ月ぶりに「デフレ」を宣言した菅直人副総理兼国家戦略相兼経済財政相=写真=に聞いた。(織田一、橋本幸雄)

 ◆「宣言」なぜ今 「危機感、日銀に伝えた」

 ――20日にデフレを宣言しましたが、先月の月例経済報告にはデフレの「デ」の字もありません。唐突ですね。

 「危機感を持っていることを伝える必要があると思った。前回の01年3月のデフレ宣言以降、デフレ基調は続いたままだという国民へのメッセージとともに、金融当局、つまり日本銀行に対してのメッセージでもある」

 ――財政は大赤字なので、金融政策で助けてくれ、と。

 「日銀も、物価が下がり名目成長率がマイナスという事態は認識している。先日、(金融危機後に導入した緊急措置の一部の年内打ち切りを決めるなど超金融緩和策の)出口(終了)に近づいたようなことをアナウンスしたが、出口戦略を考えるのはまだ早いという姿勢を保ってもらえればいいな、と思っている。具体的にこれをしろ、あれをしろ、と言うつもりはない」

 ――デフレなど景気対策のための補正予算では「カネを使わずに知恵を使う」と。

 「例えば、住宅を改装する時に太陽光パネルなど環境対策などを取り入れたら、改装費用の何%かの補助金を出すなど、住宅のエコ化だ。改装であれば中小の事業者も参入でき、内需刺激策になる。1千億円を投じたら1兆円の効果が出るような分野を探すよう各省庁に求めている」

 ――亀井静香金融相は「雲をつかむような方針」と批判し、大型補正を求めています。

 「雲をつかむような話なのか、そうでないのか、大議論をやればいい。ただ、従来型の公共事業がうまくいかなかったというのは共通認識。高度成長期には公共事業も成長の原動力となるインフラ整備に使われたが、80年代には公共事業で地方にお金を流すことが目的になり、投資効果は目標ではなくなった。そこに土建国家という政治構造が生まれたのだから」

 ――しかし短期的には公共事業がないと地方にお金が流れない。

 「現場を見ながら最善を尽くすしかない。(公共事業を)100%否定はしないが、同じお金を使うなら意味のあるものに使ったほうがいい。いまから従来型に戻しますと言うと、わーっと戻ってしまう」

 ◆マニフェスト 「見直さず具体化する」

 ――国民に「政権交代」を実感させたのが、無駄を排除する「事業仕分け」でした。

 「すさまじいことが起きていると思う。我々はしがらみが少ないが、政治家だから人間関係を大事にするし、誰かに(予算確保を)頼まれたとか考えてしまう。しかし公開の場での仕分けでは、誰も『○○に頼まれた』とは言えない。そういう形が取られたことは画期的なことだ」

 ――今後は予算の執行状況の透明化も期待されます。

 「事業はどの業者が落札し、どこにどういうものを作ったのか。情報をすべてインターネットで公開し、誰でも執行状況を検証できるようにしたい。財務省も前向きだ」

 ――マニフェストの見直しに着手しました。

 「見直しではない。マニフェストを実行するというのは民主党としての約束で、それを具体化するための作業をしている。マニフェストの中でも高速道路の無料化と農業の戸別所得補償制度は、初年度については実験的に始めることになっている。それを第1段階としてはどこまでやるのか」

 ――しかし税収が減る中で、マニフェスト達成のために初年度に必要な7・1兆円を確保できないのでは。

 「7・1兆円というのは所要額。同じ効果を少ない金額でできるなら大いに結構なことだ。7・1兆円かかるのか、財源が新たに生まれるのか、それを今取りまとめ始めている段階だ」

 ――ガソリン税などの暫定税率の廃止と同時に環境税を導入するとの見方もあります。

 「すでに政府税制調査会に環境省から環境税が提案されている。どうするにしろ、一種の結論を出さないといけない。とりあえずはこっちをやって、こっちはゆっくりかけてやる、というのか。いろんな議論があっていい。暫定税率は下げますよ、しかし、新たに環境税としてガソリンにリッター20円はかけさせてもらう、という話を同時にやるかもしれない」

 ◆中長期的戦略 「介護・環境分野中心に」

 ――政府の債務残高は国内総生産(GDP)の1・8倍に達しています。長期金利が急上昇しないか心配ではありませんか。

 「普通の計算式ではだれも答えが出せない状況だ。単純計算ではこのままでは財政赤字が拡散する(歯止めがきかなくなる)。10年後にうまく着地できたら、ノーベル経済学賞をもらわないといけない。難しいなかでやりうる可能性があるとしたら、財政に依存しない景気浮揚だ」

 ――鳩山政権の中長期的な成長戦略が依然として見えません。

 「まずは、日本経済がこの20年間なぜ成長しなかったのかを分析することが必要だ。先ほど、80年代に公共事業の意味が変わったことを指摘したが、小泉・竹中路線では格差が拡大し、マーケット至上主義も失敗した。だから、第3の道を考えないといけない。雇用が需要を生み出し、財政に頼らなくても経済成長できる分野があるはずだ」

 「介護分野では高齢者の需要は多い。環境分野でも、太陽光発電で生じた電気を電力会社が全量買い取る制度にすれば、太陽光パネルの販売増につながる。こうした分野を成長させるための制度変更や財政出動をする」

 ――鳩山政権は「内需主導の成長」を強調しますが、外需(輸出)には力を入れないのですか。

 「景気が上向いてきたのは、アジアとアメリカの経済が持ち直し、輸出が回復してきたからだということは認識している。日本はやはり輸出立国だ。ただ、安定した内需がないと、輸出が大幅に減った時の影響が大きい」

 「外需を内需に結びつけることが重要だ。幹線道路網をつくろうとしているインドのように、経済成長している新興国はインフラ整備を必要としている。相手国に政府として経済援助をしたうえで、事業は日本の企業が受注する。そうすれば収益として国内に戻ってくる。そういう内需拡大もある。単に製品を輸出するだけではなく、日本が最も得意とするインフラ整備、まちづくりで外国を手伝うこともできるのではないか。今後策定する成長戦略にはこうした分野も入る可能性がある」

 ■鳩山政権、これまでの経済財政政策

 8月11日 衆院選マニフェスト(政権公約)を確定。子ども手当の支給やガソリン税の暫定税率廃止などを盛り込んだ。公約実現に必要と見込まれる金額は、10年度は7.1兆円、完全実施の13年度は16.8兆円

 9月16日 鳩山政権が発足。就任直後の前原誠司国土交通相が総事業費4600億円の八ツ場ダム(群馬県)の建設中止を表明

 10月16日 前政権が策定した14.7兆円の09年度1次補正予算を「ムダが多い」として2.9兆円分削減。一方、マニフェストの政策を盛り込んだ10年度予算の概算要求は95兆円超と過去最大規模に

   23日 5%超の失業率に対応するため緊急雇用対策を策定。介護や農林分野の人材育成の強化などを盛り込む

 11月 2日 鳩山由紀夫首相が衆院予算委員会で、10年度予算での新規国債発行額について「44兆円を超えることはしないように結論を出したい」と答弁

   11日 「事業仕分け」を開始。17日までの第1弾では、事業廃止や見直し、基金返納などで約1兆円が削減対象に

   17日 景気対策のための09年度2次補正予算の策定に着手。1次補正の削減分のうち2.7兆円を財源とし、エコポイントの継続や住宅版エコポイントを検討

   18日 菅直人副総理を中心にマニフェストに基づく新規施策の圧縮に着手

   20日 月例経済報告で「デフレ」を宣言

 【図】

 消費者物価指数と日経平均株価の推移
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