農協、なぜ、TPPに反対しているのか?
農協にとっては、景気が良くなって兼業所得が増える方が良いのではないのだろうか?
TPPの効果が、地域経済にどの様に波及するかに関しては、まだ詰めなければならない論点もあるが、
しかし、TPP,景気回復、産業振興には役立つというのが一般論。
農協、この機を逃す手はない。
なぜなら、農協の経済基盤は、農村に居住するサラリーマン「農家」にあるから。
事実、農協は、これらサラリーマン「農家」の兼業所得や土地代金によって成長してきた。
それが今、デフレ経済の中で、農協事業も縮小を余儀なくされている。
そこにもしかしたら兼業所得が増加するかもしれないTPPが降ってわいた。
農協、諸手を挙げて賛成するかと思いきや、大反対運動を展開している。
単純に聞きたい。
なぜ反対するのか?
農協は一般には農業団体と思われている。
だから反対するのが当然と思われているのだろうが、実態は決してそうではない。
農村に居住するサラリーマンや兼業農家を自らの経済基盤としているということは、
農業以外の所得、兼業所得を得ている人々に依っていると言うこと。
とすれば、農協は真っ先に賛成しても良いと考えるのが筋だろう。
むしろ、TPPで困るのは、わが国農業を担う、40万弱の農業経営者。
この農業経営者の、「数を増やし、質を高めよ」、、と私は主張しているが、
TPPは、この人達へのダメージが大きい。
だが、この人達の4割は、TPP賛成、
大多数が、反対ではない。
なぜか?
彼らはいままでの農政で冷遇されてきた。
今の農政に将来展望があるとは思っていない。
彼らにとって大切なのは自らのお客であり、市場。
その市場、国際的に広がっていくのだから、怖さもあるが可能性もある。
彼らには農政に頼らなくてもやっていけるといった自負心もある。
大切なのはお客や生産性やビジネスモデルだと知っている、
市場を狭めようとする農協や農政の考えにはついて行けない。
この頃、水田農家に会うと皆口にするのは米輸出。
昨日会った農家は、120トン輸出。
横浜の物流業者を通している。
皆輸出に目が向いている。
これも隔世の感あり。
昨年、米輸出を、、といったとき(日本農業は成長産業に変えられる)、、それは無理でしょう、、が農業関係者と称する人々の反論だった。
TPP対策は、これら40万の農家を対象に、徹底した財政負担型の保護を行い、支援すればそれだけで良い。保護政策は結果(規模を拡大したとか、販売額を増加させたとか、、)に対して講じればいい。また強い農業構築の道筋も示すべきだろう。経営者政策を徹底させること。
つまり、本当に農業に依拠しているプロの農業経営者はあんまり反対せずに、
さほど農業に依拠しているとはいえない、農業団体=農協が反対の急先鋒になっている構造だ。
その話を農協に戻すと、だから、TPPで大多数の農協組合員には何の痛みもないはず、、
農協「TPPで農業が壊滅的に」と主張しているが、そうなら事は簡単だ。
壊滅的にならないように、経営者政策を認め、経営者育成政策の邪魔をしなければそれで良いだけだろう。
これまでは「日本農業を壊滅」に向かわせてきた「兼業零細農家育成策」を転換させ、
「経営者育成策」の邪魔をしなければいい。
これまで農地法改正や、食管法改正、企業の農業参入、株式会社の農業生産法人化等々、経営政策への反対は枚挙にいとまがない。
こうしたネガティブアクションをやめ、これまでどおり、「みんなで兼業所得を増やそう」といえばいいだけではないのか?
政治も農協も、兼業零細農家が日本の農業を支えていると言ってはばからない。
その構造が、1億2000万の国民の食料供給を担ってきたと豪語している。
しかしそれは米をのぞいて事実と違う。
多くは、数字で言えば、8割程度は、40万弱の農協離れした農業経営者が担っている。
米も、これらの人が担えるのにそれを邪魔している。
そのことが日本農業を如何に「壊滅的」にさせてきたか。
つまり、これまでの農協は、兼業農家を自らの経済基盤とすることによって、米を中心とした構造改革を潰し、自らの経済基盤である、兼業農家の居場所を作ってきた本家、本元。
それがこれまでの政官業トライアングルの農政の構図。
ここで、農協、本当にダメージを受ける、プロの農業者のふりをしてはいけない、。
農協の反対理由は、自らの組織維持のためとしか考えられない、、.
いまでも110万戸の農家は農産物を農協ルートで流していて、
農業経営者の自己販売は、32万戸にすぎない。
米がもっとも農協の取り扱いが大きい。
が、利用戸数は多いが、農協シェアーは下がりつつある。
32万戸の農業経営者による取扱量は、もはや、農協の3分の1以上、半分に近づきつつある。
だが、農協はこの農産物取り扱い手数料で成り立っている。
手数料収入は、米価と扱い数量のかけ算で決まる。
全農にとってこの収入は大きい。
結局、TPPに反対し、農業経営者育成を邪魔するのは、この利権を離したくないからではないのだろうか?
概算金を下げたのも、農家には戸別所得補償が入るから、買いたたいても良い、と判断したから、と農家の間では言われている。
つまり買い叩きだ。
農家を犠牲にしても、全農の収支が大事と言うことか。
組合員農家のことを考えれば、農協はTPPに賛成し組合員の兼業所得を増やし、
他方、日本の農業を担う農業経営者に対しては、政府が補償を手厚くすることを政治課題とすべきと私は考えるのだが、どうなのだろうか?
このままでは農協、「TPP反対でなりふりかまわぬ組織維持」、「TPP反対で組合員を苦境に陥れる農協」、
などとといわれてもしょうがない。
ここは組合員のため、戦前の産業組合や、戦後の農協など、健全な農協に戻ってほしいもの。
ちなみに、農協という組織、組合員数900万戸。
集票力およそ10万票。
専業農家は、高齢者専業も含めわずか5%の45万戸。
農業を自らの生業としている主業農家は36万戸しかいない。
他はサラリーマン「農家」。
つまり、農協、兼業農家をベースとした組織。
その兼業農家の農家への関わりは殆ど無い。
900万の組合員の内、農産物の販売をしていない組合員は82%。
つまり農協は自らを農業者団体といってるが、はたしてどうか?とした根拠。
しかも18%の農産物販売農家ですら、その8割(78%)は農業所得が7-8%しか無い。
つまり、農協組合員とはサラリーマンであり、一部サラリーマン農家からなる団体。
彼らは、農産物を自由化しても所得への影響はほとんどない。
影響があるのは、本当に農業をしている、40万戸弱の農家
従って、プロの農業者(=農業経営者)の殆どは農協離れ、独自の農業展開をしている。
だから、農業経営者を育成せよと私は声高に言っているのだが、、どんなもんだろうか。
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