「わたしの願い」 森琴音
わたしはしゃべれない歩けない
口がうまくうごかない
手も足も自分の思ったとおりうごいてくれない
一番つらいのはしゃべれないこと
言いたいことは自分の中にたくさんある
でもうまく伝えることができない
先生やお母さんに文字盤を指でさしながら
ちょっとずつ文ができあがっていく感じ
自分の言いたかったことがやっと言葉になっていく
神様が1日だけ魔法をかけて
しゃべれるようにしてくれたら…
家族といっぱいおしゃべりしたい
学校から帰る車をおりてお母さんに
「ただいま!」って言う
「わたし、しゃべれるよ!」って言う
お母さんびっくりして腰をぬかすだろうな
お父さんとお兄ちゃんに電話して
「琴音だよ!早く、帰ってきて♪」って言う
2人ともとんで帰ってくるかな
家族みんながそろったらみんなでゲームをしながらおしゃべりしたい
お母さんだけはゲームがへたやから負けるやろうな
「まあ、まあ、元気出して」ってわたしが言う
魔法がとける前に
家族みんなに
「おやすみ」って言う
それでじゅうぶん
一昨年の産経新聞の夕刊の「夕焼けエッセー」に掲載された大阪府寝屋川市の森琴音さん(当時12歳)の「私の願い」。琴音さんは3歳の時の交通事故が原因で肢体不自由になり、言葉を失なったそうです。
このエッセーを去年知って、ずっと保存して、いつも忘れないようにしてます。
でも、いつも涙がこぼれずに読めたためしがない・・・。
普通に家族と会話が出来ること。
喧嘩出来ることも、それはほんとはすごく幸せなことなんだよ、と琴音さんは気付かせてくれます。