文学座若手有志によるユニット「Happy Hunting Ground」公演。小竹向原のサイスタジオで、男女2人の会話劇が3本連続上演された。
①『赦せない行為』 森本薫作 細貝弘二 添田園子
②『蝶のやうな私の郷愁』 松田正隆作 加納朋之 征矢かおる
③『パ・ド・ドゥ』 飯島早苗作 古川悦史 佐古真弓
演出家をおかずに舞台を作ることがこのユニットの特徴なのだが、正直に言うと、舞台をみていて「おお、まさに演出家不在だ」と思えるところがないのである。一昨年の夏、土田英生作品の連続上演をみたときも同じ印象をもった。どの舞台も俳優の台詞がしっかり入っているし演技も巧みで、きちんと稽古をしてよくよく練り上げられていると感じた。舞台作りの現場を知らないので想像するしかないのだが、例えば劇団青い鳥や遊◎機械全自動シアターのような集団創作スタイルなのか、メンバーの誰ががイニシアチブを取って演出家的な役割を果たしているのだろうか?比較のために敢えて極端な例を挙げると、蜷川幸雄演出の舞台のように絶対的なものが君臨しているような雰囲気はなく、伸び伸びとしたイキのいい舞台であった。
②は日常的なアパートの一室が舞台だが、次第に幻想的な空気が感じられてくる不思議な作品だった。この夫婦はどんな土地で暮らしているのか、いつの時代なのか。ご飯を食べたり台風で停電したり、ベタな日常が描かれているのに、夢のような儚さが漂う。この作品は来月燐光群の坂手洋二と占部房子が共演、鈴木裕美演出の上演があるので、改めて考えたいと思う。
③は警察の接見室で容疑者(佐古真弓)と弁護士(古川悦史)が丁々発止のやりとりを展開する。あて書きではないかと思うくらい役柄が俳優にぴったりはまっていて、3本のなかで最も盛り上がった舞台であろう。ただ俳優の演技がいいだけに、接見室で初対面と思われた両者が実は別れた夫婦だったということがあまりに唐突に示されるなど、戯曲の問題点が目立つことが残念であった。
観劇から数日たって、いちばん地味な①『赦せない行為』がずっと気になっている。姉(添田園子)が弟(細貝弘二)の部屋で机の引き出しを引っ掻き回して何か探している。そこに弟が戻ってきて、きょうだいがずっと喧嘩をしているような芝居なのだが、彼らが交わす会話は「あの人」「あの子」等といった言葉が多く、その人物が彼らとどういう関わりなのか、なぜ姉がこんなに怒っているのかなど、(少なくとも自分には)はっきりわからないまま終わってしまうのである。2人には近親相姦の匂いもする。戯曲が読みたいなと思ったが、読んでもほんとうのところはわからない話なのかもしれない。
昼夜通しで3本観劇したが疲れはまったく感じず、すっきりした気分でスタジオをあとにした。来たときは夏の日盛り、帰りは肌寒ささえ感じる夜更けであった。静かな住宅街の一角で出会った、夏の夜の夢のような3つの男女の物語。
①『赦せない行為』 森本薫作 細貝弘二 添田園子
②『蝶のやうな私の郷愁』 松田正隆作 加納朋之 征矢かおる
③『パ・ド・ドゥ』 飯島早苗作 古川悦史 佐古真弓
演出家をおかずに舞台を作ることがこのユニットの特徴なのだが、正直に言うと、舞台をみていて「おお、まさに演出家不在だ」と思えるところがないのである。一昨年の夏、土田英生作品の連続上演をみたときも同じ印象をもった。どの舞台も俳優の台詞がしっかり入っているし演技も巧みで、きちんと稽古をしてよくよく練り上げられていると感じた。舞台作りの現場を知らないので想像するしかないのだが、例えば劇団青い鳥や遊◎機械全自動シアターのような集団創作スタイルなのか、メンバーの誰ががイニシアチブを取って演出家的な役割を果たしているのだろうか?比較のために敢えて極端な例を挙げると、蜷川幸雄演出の舞台のように絶対的なものが君臨しているような雰囲気はなく、伸び伸びとしたイキのいい舞台であった。
②は日常的なアパートの一室が舞台だが、次第に幻想的な空気が感じられてくる不思議な作品だった。この夫婦はどんな土地で暮らしているのか、いつの時代なのか。ご飯を食べたり台風で停電したり、ベタな日常が描かれているのに、夢のような儚さが漂う。この作品は来月燐光群の坂手洋二と占部房子が共演、鈴木裕美演出の上演があるので、改めて考えたいと思う。
③は警察の接見室で容疑者(佐古真弓)と弁護士(古川悦史)が丁々発止のやりとりを展開する。あて書きではないかと思うくらい役柄が俳優にぴったりはまっていて、3本のなかで最も盛り上がった舞台であろう。ただ俳優の演技がいいだけに、接見室で初対面と思われた両者が実は別れた夫婦だったということがあまりに唐突に示されるなど、戯曲の問題点が目立つことが残念であった。
観劇から数日たって、いちばん地味な①『赦せない行為』がずっと気になっている。姉(添田園子)が弟(細貝弘二)の部屋で机の引き出しを引っ掻き回して何か探している。そこに弟が戻ってきて、きょうだいがずっと喧嘩をしているような芝居なのだが、彼らが交わす会話は「あの人」「あの子」等といった言葉が多く、その人物が彼らとどういう関わりなのか、なぜ姉がこんなに怒っているのかなど、(少なくとも自分には)はっきりわからないまま終わってしまうのである。2人には近親相姦の匂いもする。戯曲が読みたいなと思ったが、読んでもほんとうのところはわからない話なのかもしれない。
昼夜通しで3本観劇したが疲れはまったく感じず、すっきりした気分でスタジオをあとにした。来たときは夏の日盛り、帰りは肌寒ささえ感じる夜更けであった。静かな住宅街の一角で出会った、夏の夜の夢のような3つの男女の物語。
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