一歩先の経済展望

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円安進行でも輸出数量減だった7月貿易収支、自民党に危機感はあるのか

2024-08-21 13:04:59 | 経済

 財務省が21日に発表した7月貿易収支は6218億円の赤字だった。ドル/円が前年同月比12.3%円安の159.77円だったにもかかわらず、2カ月ぶりの貿易赤字になったのは日本の産業が「稼ぐ力」を弱めているためだ。そのことを端的に示すのが輸出数量の減少傾向であり、今年に入って2月から7月まで6カ月連続で輸出数量が前年比マイナスに転落している。

 9月12日に告示される自民党総裁選への立候補者は、円安でも輸出が増えない現状をどのように認識し、日本の稼ぐ力をどのように復活させるべきか具体策を示してほしい。弱体化する日本企業の国際競争力に言及する候補者がいないなら、自民党総裁選はただの「空騒ぎ」に終始してしまうだろう。

 

 <12%円安で輸出数量は5%減、明白な日本経済の構造的問題点>

 7月の貿易収支における輸出数量は、前年比マイナス5.2%だった。12%超の円安にもかかわらず輸出数量が伸びないのは、日本企業が市場シェアの拡大という積極策に打って出ず、利益の確保を優先しているためとみられる。

 典型的なのは自動車で、7月の輸出額は前年比プラス6.2%だったが、輸出数量は同マイナス6.9%だった。数量が伸びなければ増産のための設備投資は行われず、雇用も増えないという循環に陥ってしまう。

 国内の人口減少傾向が止まらない中で、日本経済の成長率を回復させるには輸出増による国富の獲得が欠かせない。しかし、現実には円安でも輸出数量が減少するということが続き、日本経済の縮小均衡への動きが止まってない。

 

 <製造業の国内回帰、総裁選立候補者に具体策はあるのか>

 この傾向を打破するには、政府が製造業に対して生産拠点の国内回帰を強く働きかけることが第1のステップであると考える。ところが、自民党総裁選に立候補を表明もしくは近く表明すると思われる有力政治家から国内製造業の立て直しに向けた「政策対応」が全く出てきていないのはなぜなのか。

 自民党内に日本企業の輸出競争力低下に対する危機感がなく、円安メリットを生かす「政策的な知恵」が欠如しているからではないかと筆者は考える。稼ぐ力の再興を成し遂げることなく、潜在成長率を高めていくことはできない。

 どうして円安なのに輸出数量が減少を続けるのか──。この問いに明確な回答を示し、国民の目を集めるような経済政策を提示する候補者が登場することを期待してやまない。

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