一歩先の経済展望

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10月全国CPIはオントラック、12月利上げ判断左右する円安や内外の市場動向

2024-11-22 13:09:00 | 経済

 22日に発表された10月全国消費者物価指数(CPI)は、コアCPI(除く生鮮食品)が前年比プラス2.3%と堅調な結果だった。日銀が注視しているサービスは9月の同1.3%から同1.5%へと伸び率が着実に高まっており、日銀の見通し通りの展開(オントラック)だったと言えるだろう。

 次回の12月金融政策決定会合で利上げを決断するかどうかは、それまでにドル/円でどの程度の円安が進展しているか、内外市場の変動がどのようになっているのかなどを総合判断することになると予想する。

 

 <コメ価格が60.3%上昇、コアコアCPIは3カ月連続で伸び率拡大>

 10月全国CPIの中で目立っていたのは、コメ価格の急上昇ぶりだった。うるち米(除くコシヒカリ)は前年比プラス60.3%と大幅に上昇し、コメを含む穀類は同プラス13.5%と高い伸びを示した。

 生鮮食品とエネルギー価格を除いた総合(コアコアCPI)は、同プラス2.3%となり、7月の同プラス1.9%から3カ月連続で伸び率を高めた。

 

 <サービスは着実に伸び率高まる>

 10月31日の会見で、日銀の植田和男総裁は10月東京都区部CPIに言及し「ある程度サービス価格への転嫁の動きが広がっているということは確認できたが、これが全国でみてもそうか、あるいは今後も一段と広がっていくかというところについては、丁寧にみていきたい」と述べていた。

 10月全国CPIのサービスが9月の同プラス1.3%から同プラス1.5%に伸び率が拡大していたことで、賃上げがサービス価格に着実に反映されていると日銀は判断している可能性が高い。

 

 <円安進展なら、輸入物価起点に物価に上昇圧力>

 このように見てくると、足元までの物価動向は「オントラック」と日銀が見ていることは間違いないだろう。それが次の利上げに結びつくかどうかは、為替動向とそれ以外の内外情勢ではないかと筆者は考える。

 円安が一段と進行するなら、輸入物価の上昇を起点に生鮮食品を除く食料の価格が騰勢を強め、CPI全体の上昇率を加速させる要因になる。

 10月の輸入物価は円ベースで前年比マイナス2.2%だったが、前月比はプラス3.0%と3カ月ぶりに上昇した。10月のドル/円の平均値は145.87円(財務省調べ)だったが、足元では154-155円近辺で推移。さらに円安が進むようなら7月に利上げを決めた時と同様に、円安が物価押し上げのリスクとして意識される展開になる可能性がある。

 

 <足元の短期市場、12月利上げを64%織り込み>

 また、12月の米連邦公開市場委員会(FOМC)における利下げの可能性について、市場の織り込みは15ベーシスポイント(bp)となっており、ひところに比べて織り込み幅が縮小している。さらに縮小するようになれば、ドル/円はドル高・円安方向に圧力を受けやすくなり、これが日銀の政策判断にも影響するだろう。

 足元で日銀の12月利上げは16bpと64%の織り込み幅となっている。円安の進展などでこの織り込みがさらに進むなら、そのことも日銀の政策判断の視野に入ってくるのではないか。

 22日の会見で、植田総裁は次回会合までに「非常に多くのデータや情報が利用可能となるだろう」と述べていた。

 上記で指摘した点を含め、日銀が総合判断した結果、利上げを決断するのか現状維持を決めるのか、内外情勢の変化が大きな影響を与えそうだ。

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