次期米財務長官にトランプ氏から指名されたスコット・ベッセント氏はドル高容認なのか──。こうした見方が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版に掲載された同氏のインタビュー記事で台頭している。今週は26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(11月6-7日分)、27日に10月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、ドル上昇の余地があると市場関係者から見られてきたが、ベッセント氏のドル高容認とも受け取れる発言を受けて、ドル高・円安が進みやすくなると筆者は予想する。
<ドル、準備通貨としての世界での地位を保つ>
25日午後にWSJ電子版に掲載されたインタビューによると、ベッセント氏は通貨政策に関し「ドルの準備通貨としての世界での地位を保つ」と述べたという。
ベッセント氏は今年10月、米共和党の大統領候補として戦っていたトランプ氏の経済顧問として、英紙フィナンシャルタイムズのインタビューにも答えていた。そこでベッセント氏は、トランプ氏が大統領に就任した場合に「トランプ氏が意図的にドルを意図的にドルを切り下げることは期待しておらず、ドルを準備通貨として支持する」と語った。
<よい経済政策とれば、自然にドルは強くなる>
また、同氏は「準備通貨は市場に応じて上下する可能性がある。良い経済政策をとれば、自然にドルが強くなると私は信じている」と語った。ただ、この考えがトランプ氏の考え方を代弁しているものではないと付け加えた。
この2つのインタビューをみると、ベッセント氏はドルに関し、世界の準備通貨としての地位に着目し、闇雲にドル安政策を推進する考えがないと筆者は推定する。
よい経済政策の下ではドルが強くなるとの見方は、ドル高容認とも受け取れる。WSJとのインタビューでは、減税実施や関税政策などトランプ氏が優先的に取り組み政策の重要性について言及しており、その点はトランプ氏の要請に素直に対応するとみられる。
<ソロス氏のファンドでポンド売りの実績>
ベッセント氏は米サウスカロライナ州出身で、イエール大学を卒業後、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンでに入社した。1990年代にジョージ・ソロス氏のヘッジファンドに在籍し、英国のポンド防衛策を打ち破りポンド売りで巨額の利益を挙げて一躍、著名人に躍り出た。BBCによると、2013年に円安のポジションでも利益を挙げたという。2015年に投資ファンド「キー・スクエア・キャピタル・マネジメント」を設立した。
<注目されるFOMC議事要旨、タカ派発言はあるのか>
11月7-8日のFOMC議事要旨が26日に発表され、この先の利下げペースをめぐりFOMC内でどのような議論が展開されのか注目されている。25ベーシスポイント(bp)の利下げを決めた後の会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、12月FOMCで利下げの一時停止はあるのかとの質問に「現時点で、そのような決定はまったくしていない」と述べていた。もし、利下げの一時停止や2025年の利下げペースをめぐってタカ派的な見解が数多く出ていたことが明らかになれば、ドル高・円安の材料として市場は捉えるだろう。
27日のPCE価格指数でも市場は前年比プラス2.3%、コアは同2.8%と強めに予想しているが、それをさらに上回る結果になれば、ドル買い・円売り材料として意識されると予想する。
このように今週は、ドル高・円安に行きやすい材料がもともと多かったが、ベッセント氏の為替をめぐる発言によって、ドル買い・円売りを助長するムードが高まりやすくなったのではないか。
新政権の発足は来年1月20日だが、ベッセント氏への注目度は一段と高まりそうだ。