一歩先の経済展望

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12月CPIで実質賃金マイナス・消費下押しか 注目される日銀の物価基調判断

2025-01-24 10:50:17 | 経済

 総務省が24日に発表した2024年12月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年同月比プラス3.0%と2023年8月の同3.1%以来、1年4カ月ぶりの3%台の伸びとなった。また、実質賃金を弾き出す際に使用される「持ち家の帰属家賃を除く総合」は前月の同3.4%から同4.2%へと大幅に上昇。11月に4カ月ぶりに前年同月比プラスに転じた実質賃金は、12月に再びマイナスに転じる可能性が高くなり、エネルギー価格の上昇が継続するなら、25年1月以降もマイナスが続いて個人消費を下押しする力が大きくなるリスクが増大した。

 一方、12月のCPI総合が前年同月比プラス3.6%と伸び率が加速している一方、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIが同2.4%と11月から伸び率が横ばいだったことを踏まえ、24日午後の会見で日銀の植田和男総裁が物価の基調に上振れの兆しがあるのか、それとも基調に大きな変化はないのかという点でどのような発言をするのかにも関心が集まりそうだ。というのも1月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げた後の利上げパスに関し、基調的な物価上昇率に上振れの可能性があるのかどうかが1つの判断材料になるからだ。

 

 <持ち家の帰属家賃を除く総合が4.2%にジャンプ>

 筆者の目から見ると、CPIの「持ち家の帰属家賃を除く総合」が前年同月プラス4.2%に跳ね上がったのは、賃上げ効果による個人消費の盛り上がりに期待していた政府にとっては「痛い」結果になったのではないか。

 厚生労働省が24日に発表した2024年11月の毎月勤労統計調査の確報値で、1人当たりの実質賃金が速報値の前年同月比マイナス0.3%から同プラス0.5%に上方修正となった。プラスに転じたのは4カ月ぶり。同省によると、主に賞与(ボーナス)が占める「特別に支払われた給与」の大幅増が影響した。

 政府としては、好調な企業業績を背景としたボーナスの大幅増を背景に実質賃金がプラスに転化し、個人消費が盛り上がる展開を期待していたに違いない、と筆者は考える。

 

 <賃上げから消費への波及期待、実質賃金マイナスで打撃>

 だが、1月の「持ち家の帰属家賃を除く総合」が前年同月プラス4.2%に急伸したことで、12月の実質賃金が再びマイナスに転落する可能性が高まった。12月の上昇の背景には、エネルギーや食料の値上げ効果がかなりを占めており、この傾向は25年1月以降も続くとみられ、「持ち家の帰属家賃を除く総合」が高止まりして実質賃金を押し下げる効果がしばらく働くとみるのが合理的だろう。

 そうすると、24年の大幅な賃上げ効果がなかな消費拡大に直結しないという現象が、25年の春ごろまで継続するというシナリオが現実味を帯びてきたとみることもできるのではないか。

 国内総生産(GDP)の5割強を占める個人消費に、大企業を中心とした大幅な賃上げにもかかわらず拡大の大きなうねりが見えないまま推移すれば、6月の東京都議選、7月とみられる参院選を前に与野党を問わず、消費を一段と刺激する目的で財政拡張的な政策提言が相次ぐということも十分にあるだろう、と筆者は予想する。

 

 <注目される植田総裁会見、基調的な物価上昇率に上振れの兆しはあるか>

 一方、1月会合での利上げに踏み切るとみられている日銀が、次の利上げをどの段階で検討し始めるのか、というのがマーケットの最大の関心事となっている。

 この点に関連して注目されるのが、12月全国CPIで伸び率が大きくなった総合とコアCPIをみて、日銀が基調的な物価上昇率に加速感が出てきた、とみているかどうかだ。もし、植田総裁が24日午後の会見で、基調的な物価上昇率が少しずつではあるが加速する可能性があると言えば、次の利上げまでの間隔が結果的に市場の多数派が予想するよりも短縮される可能性が出てくる。

 他方、基調的な物価上昇率に変化はない、と断言すれば、次の利上げまでのインターバルは市場の予測通りに長くなる可能性が高まるのではないか。

 

 <植田総裁会見と為替の動き>

 最後に24日午後の植田総裁の会見に関連して付言すれば、「ハト派の利上げ」のスタンスを明確にした場合、円安圧力が大きなる展開もありえるのではないか。植田総裁の会見とドル/円の動向も大きな関心の的になるだろう。


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