一歩先の経済展望

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パウエル議長講演、注目される4つのポイント ドル/円と日米株価に波及も 

2024-08-22 12:09:05 | 経済

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が23日、米カンザスシティ地区連銀主催の国際経済シンポジウム・ジャクソンホール会議で講演する。市場の注目点は、9月の米連邦公開市場委員会(FOМC)での利下げやその幅、年内の利下げ幅などについて、どのように示唆するのかということに集中している。マーケットは年内にFRBが100ベーシスポイント(bp)の利下げを実施すると織り込んでおり、パウエル議長の発言次第でドル/円が大きく振れたり、株価が大幅に変動する可能性もある。

 もし、市場の利下げ期待に「冷水」をかけるように慎重な利下げを姿勢を示した場合、ドル/円が円安方向に動く一方、米株が下落するリスクを指摘する声も出ており、日本株にとっては複雑な反応ルートをたどることもありそうだ。

 

 <9月利下げを予告したFOМC議事要旨>

 今年のジャクソンホール会議では「金融政策の有効性と波及経路の再評価」が主要なテーマとなっており、23日にパウエル議長が基調講演を行う。

 市場参加者の見方を総合すると、1)9月利下げを予告するのか、2)9月利下げを実施した場合の幅、3)年内に100bp利下げするという市場の見方に対する考え方、4)来年以降も見据えた利下げパスの行方──などについて、何らかのヒントを与えるような発言をするのかどうかが大きな関心事になっている。

 FRBが21日に公表した7月30─31日のFOMC議事要旨では、経済指標がほぼ予想通りになるという前提で、当局者の「大多数」が、9月会合で「金融政策を緩和することが適切となる公算が大きい」という見解を示していた、と指摘。1)の9月利下げに関して先行して「予告」しており、パウエル議長もその認識を追認する可能性が高いとみられている。

 ただ、2)-4)については、幅広いケースが予想されている。市場は9月、11月、12月の年内3回のFOМCで合計100bpの利下げをすでに織り込んでいる。

 これに対して、まず、パウエル議長が「今後の経済データ次第」と発言し、何らの示唆も与えない可能性がまず考えられる。そのケースでは、ドル/円も米株も大きな変動はなく、市場はこのイベントを「織り込んだ」という反応を示すだろう。

 

 <失業率上昇、注目されるパウエル議長の評価>

 次に2)については、50bpの利下げの可能性を否定するのではないかと筆者は予想する。市場の織り込みも9月は25bpが主流で、その場合の反応は限定的と考える。

 3)については、年内3回のFOМCのどこかで50bpの利下げの可能性があることをにおわせる可能性について検討してみたい。その根拠として、7月雇用統計における失業率の上昇を挙げた場合、市場は米金利低下、ドル安・円高、米株高で反応する展開がありえる。

 FRBの2024年の失業率見通しは4.0%であり、7月の4.3%はすでにその見通しを上回っている。パウエル議長が失業率の非連続的な上昇の可能性が高まっていると指摘した場合、市場は年内のどこかで50bpの利下げがあると受け取るのではないか。

 このケースで円高の幅が大きく、スピードも速い場合は米株が上昇したとしても、日本株は下落する可能性がありそうだ。

 

 <米利下げパスの行方>

 ただ、筆者は経済データ次第との発言で対応するだろうとみている。もし、年内の100bpの利下げという想定が「過大」とパウエル議長が指摘した場合、ドル/円はドル高・円安に動き、米株は下落するだろう。日本株は円安を支えに、米株下落よりは小幅の下落でとどまる公算が大きいと考える。だが、大幅に円安となった場合は、日本株が上昇する余地もありそうだ。

 4)の利下げパスに関する言及や示唆は、今回の講演では回避されるとみている。だが、何らかの言及があった時は、その内容に応じて市場が大きく変動する展開もゼロではないと予想する。

 

 <日本株への影響、ドル/円の変化幅とスピードが左右>

 上記で指摘したように、パウエル議長の発言で米市場が変動した場合、日本株への波及はドル/円の変動幅とスピード、米株の変動幅を組み合わせた結果になるのではないか。

 少し、俯瞰した見方をすれば、8月上旬に発生した米景気失速懸念を起点にした非常に強いリスクオフ心理に基づく、日米株価の大幅下落と急速なドル安・円高という展開が再現される可能性は低く、米経済のソフトランディングを前提にしたマーケットの反応が起きると予想する。

 ジャクソンホール会議を経て市場変動率(ボラティリティ)が低下していく傾向が確認できれば、日銀の金融政策判断にも、より幅広い選択肢を考慮する余裕がいずれ出てくるのではないかと考えている。


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