「鐘楼」<o:p></o:p>
陽が短い。今年も残すところあと一月半で、これからが大忙しであるのは、達谷窟の御神域に御歳神様の来るのが早いからである。まず、23日の結界の神事の後、師走朔日には三つの鳥居に真新しい注連縄が張られ、2日は毘沙門様の御年越で目出度く歳は改まり、17日は観音様、そして20日は新しい辯天堂で辯天様の御年越となる。28日は御不動様の御年越でいよいよ大晦日となるが、その主役といえば除夜の鐘であろう。<o:p></o:p>
達谷西光寺の鐘楼は慶長20年の建立で、江戸時代までは伊達藩により御修復が行われてきた。梵鐘は重さ120貫。仙台鐘と呼ばれる立ちの高い作りだったから、伊達の殿様の御寄進だったのであろう。<o:p></o:p>
この鐘が供出となったため、戦後長い間鐘のない鐘突堂であったが、昭和58年に新たに山形で鋳られた150貫の梵鐘を吊ることとなった。このとき、屋根を銅板に葺き替え、鐘楼は面目を一新した。ただ、柱が細いので重量を増しても安全か心配で、鋳物師に相談したところ、大丈夫との太鼓判を貰った。そこで念のため梁を補強して鐘を吊ったのだが、突く度に建物が少しではあるが軋み、楔が徐々に緩んでいくである。これは、鐘が重い所為であろうか。それとも、鐘楼が古い所為であろうか。<o:p></o:p>
とまれ鐘を吊ってから早30年。木造建築は四半世紀毎に小修理を必要とするし、大きな地震が何度もあったのだから、そろそろ耐震補強をと考え、達谷西光寺番匠識の佐藤時男棟梁に相談したところ、古い貴重な鐘楼だから姿はそのままに、梵鐘を吊る梁を支える4本の柱を補強すれば、地震に強い構造になるだろう。さらに鐘楼が頑丈になれば、内部に鐘を吊るという機構により、地震の揺れを減衰させたり増幅を防いだりできる、いわゆる制震構造にすることが可能という。<o:p></o:p>
これは、面白いではないか。ここまでいいこと尽くめなら、毘沙門様も御許しになるだろう。是くして、来たる平成26年は、鐘楼の御修復をする年に決めた。来年、暖かくなったら段取りをして、秋口から工事を始め、完成は師走半ばの予定である。平成26年の大晦日には、御修復なった鐘楼で除夜の鐘が突かれるに違いない。来年のことを言うと鬼が笑うそうだが、毘沙門様はきっと御歓びになるだろう。<o:p></o:p>