「リュウノヒゲ」 平成26年3月16日~31日までの法話

2014-03-16 12:07:03 | 法話

 

Img_3286 「リュウノヒゲ」

 

 春といえば、花である。雪が消えた境内ではオーレンが花盛りだが、よく見ると光沢のある紫色の綺麗な実が、至る所に散らばっていることに気付く。雪解けの、思わぬところに落ちているから、何か小動物が運んできたのであろうか。じつはこの実は、リュウノヒゲのものである。

 

別名をジャノヒゲ。シャガと並んで、雪の下でも枯れることはない。夏の暑い時期に薄紫の可憐な花を咲かせ、冬には美しい実を付ける。細く長い濃緑の葉は、将に龍の髭のようである。それが長い時を経て密生すると、塊状になる。当地で猫玉とも呼ばれる所以は、猫が横になれるほど大きく育つからなのである。Img_3288

 

じつはリュウノヒゲは、達谷西光寺では神宿る目出度い草とされ、境内のいたるところに繁茂しているのである。前述のオーレンやシャガと同様、薬草であるから、大切にされてきたのであろう。漢方では麦門冬と呼ばれ、太い紡錘形の根を乾燥させ、咳止めや強壮剤に用いる。また、この根は湯掻くと食べられるそうだ。

 

リュウノヒゲの一番大きな株は、庫裡の東にある。差渡し3尺(1m)、高さは2尺(60㎝)ほどで、大晦日の悪魔払いに用いた御幣束は、この大株の根元に立てられるのである。Img_3293

 

ちなみに、正月二日の鬼儺會の御幣束は、毘沙門堂正面の石垣に立てられていれるが、かつては毘沙門堂西側のリュウノヒゲの大株の元に立てられたらしい。もともと、鬼儺會の払役は西隣の脇院、鏡覚院が行っていたし、大勢の信者が堂内で松明を投げ合った後、一升餅を争ったというから、御幣束を今の位置に立てれば、たちまち踏み潰されてしまうだろう。Img_3296

 

その西側の大株は既になく、小さな株に替っているが、これを大きく育てようと思う。ただし、御幣束を立てる場所をどうするかは、後世に委ねたい。季節は春であるが、時折雪が舞う中、青い実を掌で玩びながら、あれこれ考えてみるのも楽しい今日この頃である。 Img_3306 Img_3303