「生垣」 6/16~6/30
さざんかさざんか咲いた道。と、童謡「たき火」を聞くたびに、東京では山茶花(さざんか)の生垣が作られて、寒い季節に花が咲いているのであろうかと、子供心にいつも不思議に感じられたものである。山茶花ではないが、物古りた常盤木(ときわぎ)の生垣は、瑞々しくて実によいし、春は花が咲き風情があるから毘沙門様の御神域を区切るのに相応しかろうと、藪椿を植栽して十年ほどになる。
椿の生垣といえば、3m(十尺)程もある銀閣寺垣が天下名高いが、昨今の生垣は植木屋によれば五尺ほどの高さに作るという。五尺もあれば目隠しになるが、背丈が高すぎて素人には手入れはできず、本職、即ち植木屋の手を借りることになるから、物入りになる。もともと、生垣は垣根越しという言葉があるように、腰の高さの三尺、もしくは胸の高さの四尺ほどだったのである。
とまれ、手入れが欠かせないので、高く伸びた境内の生垣の選定が梅雨時の今、行われているのである。刈り込まれた椿の垣根越しに御神域を覗くと、蝦蟆ヶ池の中島には礎石のみ残るのだが、六月十六日地鎮祭が執り行われる。
翌十七日からは土木工事か始まり、刈り込まれた生垣の成長と相俟って、辯天堂の御修復工事か順調に進捗すれば、師走には辯天様の御移徒、即ち御引越が行われる。
春には椿の花が咲き、初夏の生垣の刈り込みの季節を迎えるころには、目出度く落慶法要が執り行われるであろう。