心の絆
リザー・アッバース『宮廷の恋人たち』(イラン1630年)
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幸せなひととき、
宮殿に共に座るあなたと私。
姿はふたつ、影もふたつ、
けれど魂はひとつだけ、
あなたと私。
あなたと私、庭を歩けば、
木立の色も鳥の声も永遠を奏でる。
天空の星がこっそりと見つめてくるから、
月を鏡に視線をかわす、
あなたと私。
あなたと私、陶酔に混ぜ合わされて、
切り離しようもなくひとつの、あなたと私。
あるのはただ喜びだけ、
あなたと私、
二度とふたつに離れない、邪魔をするものは何もない。
きらきらした羽で飾られた天の鳥たち、
嫉妬で彼らの胸は焼け焦げんばかり。
こんな場所で、こんな姿で、
笑い声の光をまき散らす
あなたと私。
そして何よりも驚くべき奇跡はこれ、あなたと私、
あなたと私が同じ世界の片隅に、共に座っていること。
この瞬間、共に座る
あなたと私、
あなたはイラクに、
私はホラーサーンに。
『四行詩集』38.
恋の在り処
私の胸に恋だけを
置き去りにして、
恋人はどこにいるのだろう、
私はここにいるのに。
一体いつまで待てば
「私」は「私達」になれるのだろう。
きっといつまで待っても
「私達」にはなれないのだろう。
私が「私」を捨てない限りは、
私があなたを「あなた」と呼ぶ限りは。
私はあなたに恋をした。
恋があなたそのものだった。
私はあなたと結ばれた、
その結び目があなただった。
これがあなたの仕掛けた罠、
「私」と「あなた」の境界は消え去り、いつか「私とあなた」も消え去って、
恋だけが夜の空に瞬き続ける。
『精神的マスナヴィー』1-1776
わたしはあなた
恋をしている男が恋人の家のドアをノックしました。
「だれ?」
内側から恋人が言いました。
「わたしです。」と男が答えました。
「帰ってください。この家にはあなたとわたしの二人は入らないのです。」
拒絶された男は砂漠に行きました。そして恋人の言葉について思いめぐらしながら、何か月も続けて黙想しました。
・・ついに彼は戻ってきました。そして再びドアをノックしました。
「だれ?」
「わたしはあなたですよ。」
ドアは直ちに開きました。
『スーフィーの寓話』第42話